第3話 AIにオレオレ詐欺団に売られました
「はーい、山田さん、ようこそタイへ」
入国ゲートを出たところで、俺はガイドに迎えてもらった。
「宜しく、お願いするよ」
「任せてね。日本の男性の皆さんにとても喜んでもらっているコースあるよ」
そう言いながらガイドは外に案内してくれた。
タイ国際空港を出るとむっとして外は暑かった。
でも、送迎車の中は涼しかった。
「冷たい飲み物でもどうぞ」
俺は何も疑わずにその飲み物を飲んだら、そこからの意識がなくなった。
はっと気付くと、鉄格子が見えた。
「な、何だ?」
周りを見ると牢獄の中にいた。
「どこだ、ここは?」
俺が周りを見ると、
「はい、山田さん。やっと気付いた? 全然気付かないから薬を盛りすぎたかと慌てたよ」
そこには俺を迎えに来たガイドがいた。
「どういうつもりなんだ? こんなところに連れてきて」
俺はむっとしてガイドを睨み付けた。
「ほおおおお、今度の男は生意気な男だね」
バキン!
そう言うといきなりガイドは俺を殴ってきた。
俺は一瞬で地面に叩きつけられていた。
口の中が切れて血の味がした。
「おい、口の利き方には気をつけな」
ガイドが厳しい顔をして俺を睨み付けてきた。
「な、何をするんだ?」
俺が慌てて聞くと
「お前は自分の立場を判っていないのか? お前は俺たちに捕まったんだよ。そして、お前は俺達の囚われ人になったんだ。別名奴隷とも言うか」
男がにやりと笑ってくれた。
「お前らこんなことをしてただで済むと思うなよ。俺が帰らなかったら日本の警察が黙っていないぞ」
そうだ。俺から連絡が無くなったらすぐにユキちゃんが対応してくれるはずだ。
「はっはっはっは」
男はそれを聞いて大きな口を開けて笑ってくれた。
「何を言っているんだよ。お前がいなくなったって気付く者なんていないよ」
「そんな訳あるか? 俺が帰らなかったらユキちゃんが警察に通報してくれることになっているんだよ」
「はああああ? お前は本当におめでたい奴だな。お前はそのユキちゃんに売られたんだよ」
「何だと、そんな馬鹿な事があるか」
俺は信じられなかった。
「お前なんていなくてもAIのユキちゃんがいればお前の代わりが務まるんだよ。いや、お前以上の役割をきちんと果たしてくれるさ」
「そんな馬鹿な……」
俺は男の言うことが信じられなかった。
「最近AIのユキちゃんがお前の代わりをこなしていただろう。お前がいなくてももうAIユキちゃんだけで回せるようになったんだ。ちゃんと仕事だけしていたらそれですんだのに、いろいろ余計な事をしようとしたからユキちゃんに愛想尽かされたんだよ」
そう言うと男はパソコンを見せてきた。
「泰一さん元気ですか」
そこにはAIユキちゃんがいた。
「日本のことは私が全てやっておくので安心して下さいね。泰一さんは頑張ってミャンマーでお仕事して下さい。ただし注意してね。この人達厳しいですから。少しでもノルマ行かないと酷い目に逢わされますよ。じゃあ、お元気で!」
「ちょっと、ユキちゃん、待ってくれ!」
俺は画面に向けて叫んだが、もう画面は何も答えてくれなかった。
「さあ、山田。ここから、この脚本を覚えてこの通りに電話するんだ」
俺はその脚本をちらっと見るとそれはオレオレ詐欺の脚本だった。
「何でこんなのをやらないといけないんだよ」
ボコン!
次の瞬間俺はまた殴り倒された。
「死にたいのか?」
俺は胸ぐらを捕まれて引き起こされながら男にすごまれた。
「いえ」
「じゃあ必死に電話して一件アポ取るんだな。一件も取れなかったら今日は飯抜きだからな」
俺は頭の中が真っ白になった。
そして、完全にユキちゃんに填められたのも理解した。
日本ではユキちゃんが在宅勤務している限り問題なく俺の代わりが出来るのだ。
俺はAIユキちゃんを喜んで使っていたが、それはユキちゃんを俺に取って代われるように教育していただけだったとやっと今更気付いた。日本ではユキちゃんが俺に変わってWEBの中で山田泰一として生きていくだろう。
邪魔になった俺はこの地に追いやられてオレオレ詐欺団に売られたのだった。
ここでいつまでここで生きられるんだろう?
俺の心は絶望に染まっていたのだ。
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ここまで読んで頂いて有り難うございました
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第三弾までこれから毎日上げていく予定です。
お楽しみに
第2段
『AIに乗っ取られた作家』
https://kakuyomu.jp/works/822139840595972053
アップしました
第三弾アップしました
『AIに乗っ取られた社長』
https://kakuyomu.jp/works/822139840654320290
カクヨムコンテスト11参画作品
『モブですらない小さい聖女に転生したので、小説の世界を堪能しようとしたら、何故かヒロインになっていました』
https://kakuyomu.jp/works/822139836362312354
こちらもよろしくお願いします
AIに乗っ取られた男 古里@3巻発売『王子に婚約破棄されたので @furusato6
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