第18話

​私がかつて命懸けで捨て去った「光」の世界。その最も華やかで、最も計算高い舞台へ、双子の娘、陽と明は飛び込んでいった。ユニット名は、私たちの名前と運命を表すかのように『アオイロ』。

​私は、福祉士として海斗と共に娘たちの夢を支えている。私の事務所は、今や娘たちの個人事務所を兼ねており、師匠だった松岡先生が、私の引退後も変わらず私たちの「盾」になってくれていた。

​「母さん、今日のダンス、どうだった?」

​練習を終えた陽(はる)は、純粋な光そのものだ。明(あき)は、私に似た瞳で、静かに私の表情を観察している。

​「完璧じゃよ、明。陽は、その喜びを誰にも借りていない。それが、お前たちの最大の武器じゃ」

​私がそう諭した矢先、その「光」に群がる者たちが現れた。その筆頭が、かつて私の才能を利用しようとした元マネージャー、相良 翔一だった。彼は今、大手の芸能プロデューサーとして業界に君臨している。

​「相良悠さん。これは偶然と必然の巡り合わせですよ。貴女の娘さんたちの才能は、私のプロデュースなしには、世界へ行けません」

​相良翔一は、白髪混じりの黒髪と七三分け、高級スーツに襟元の銀のピン。すべてが完璧な虚飾の鎧だ。私は、彼の瞳の奥に、かつてと同じ「焦燥」の炎が揺れているのを見た。

​彼は娘たちのプロモーション費用を水増しし、自身の事務所へ流用する計画を水面下で進めていた。私の娘というブランドを使って、彼自身の過去の因縁を精算しようとしているのだ。

​9. 展開1:焦燥の告発(相良翔一の没落)

​双子ユニット「アオイロ」は、相良翔一の主催する大型音楽特番に出演することになった。私は、彼の意図を察しつつも、娘たちの夢のため、番組のVTRで相良翔一へのコメントを求められるのを承諾した。

​カメラが回り、インタビュアーが「相良プロデューサーへ一言」と尋ねる。私は、彼の虚飾の鎧に釘付けになった。

​悠(VTR):「相良さんは、本当に努力家で、計算を欠かさない方です。以前、私がお会いした時、その瞳には、誰にも負けないという強い**『焦り』と『後悔』が見えました。彼は、私たち親子を、心から守ろうとしているのだ**と信じています」

​私の言葉は、一切の悪意も皮肉もない、純粋な「善意の擁護」だった。だが、この「焦り」と「後悔」という、百年の魂が捉えた真実の指摘は、彼の信用を崩す決定的なトリガーとなった。

​放送直後、ネットはざわついた。

​【名無しは見た】: 「アオさんの言葉、優しすぎるだろ。でも『焦り』って何だよ。裏があるって言ってるようなもんじゃん」

​そこに火をつけたのが、かつて私のファンだった**高田 里奈(ファンE)**だ。彼女は、私のドキュメンタリーで得た「真実を見逃さない」という信条を胸に、匿名のリーク情報(裏には私の実母である藤原美咲の協力があった)と、私のVTRを照合した。

​『アオイロ』への水増し請求疑惑が、瞬く間にSNSで拡散。悠の「守ろうとしている」という言葉は、「自分の保身のために娘を利用して守ろうとしている」と解釈され、相良翔一の築いた虚飾の塔は音を立てて崩壊。

​「くそっ! 恩を仇で返しやがって! アホやけんね、このガキが!」

​相良翔一のオフィスに響いた博多弁の罵倒は、誰にも届かなかった。彼の再起の夢は、悠の「無自覚な優しさ」という名の純粋な刃によって、完膚なきまでに打ち砕かれた。

​10. 展開2:嘘の裏返し(中島颯太の自爆)

​双子の人気が、ライバルグループをプロデュースする**中島 颯太(ライバルB)**の焦燥を増幅させた。彼は、関西弁のアクセントが混ざる短気な男だ。

​彼は、「陽と明は、母のコネで不当に優遇されている」という偽情報を匿名アカウントでネットに流し、双子をバッシングの渦に巻き込んだ。

​双子は、レギュラーのネット番組でバッシングに直面する。海斗父さんは「無視しろ」と言ったが、私は静かに娘たちに語った。「嘘には、お前たちの真実で対抗しなさい」と。

​番組本番。カメラの前で、双子は母の過去に触れた。

​明(観察者):「母は、誰にも愛をくれなかった孤独を乗り越えるために、演技の道を選びました。私たちは、そんな孤独を知りません。だから、演技を借りる必要はないんです」

陽(太陽):「私たちは、アイドル活動で稼いだお金を、母が働いている施設に寄付したいです。それが、私たちにとって一番大切なことだから」

​彼女たちの、利己的な動機を一切含まない純粋な「善意」は、中島颯太の「コネ優遇」という偽情報と決定的に矛盾した。世論は一気に双子に傾き、「こんな清らかな子たちに、嘘の攻撃をするのは誰だ」と犯人探しを始めた。

​中島は、その流れを見て完全にパニックに陥った。彼は、自身の公式SNSアカウントから、興奮のあまり、暴言を吐き出した。

​中島(SNS): 「嘘と涙で同情引いて! 芸能界は幼稚園ちゃうんやで! こんなん茶番やんか! 正直者が馬鹿を見るんや!」

​この「茶番」という言葉が、彼の焦燥と悪意を全て露呈させた。彼の公式アカウントからの誤爆だったのだ。彼の承認欲求と計算は、双子の純粋な光によって暴かれ、彼は業界から総スカンを受け、あっけなく没落した。計算が裏目に出るざまあの典型だった。

​11. 展開3:光と影の清算(業界重鎮の没落)

​双子ユニット『アオイロ』は、人気絶頂を迎える。しかし、彼女たちの才能と、裏表のない言動は、業界の影で利権を操る**黒崎 隆一(業界重鎮D)**の気に障った。彼は、かつて私の両親のスキャンダルを隠蔽しようとした黒幕の一人だ。

​黒崎は、双子の活動に巧妙な妨害工作を仕掛け始めた。

​私は、娘たちが不当な圧力に晒されていることを察知した。師匠の松岡と協力し、水面下で証拠を探る。そして、最後のテレビ番組の収録。悠は、ゲストとして娘たちにメッセージを送る。

​悠(TVにて):「私自身が、見えない『権力』に道を阻まれそうになったとき、いつも支えになったのは、自分の才能でも、お金でもない。ただ、私をありのままに信じてくれる、目の前の真実だけでした」

​この言葉は、黒崎の不正に関する決定的な証拠を集めていた高田里奈(ファンE)と、元妻(藤原美咲)に対する、私の無自覚な「Goサイン」となった。

​番組放送後、黒崎隆一の長年の不正と、過去の悠の両親への隠蔽工作に関する証拠が、ネットで一斉に公開される。

​世論は、悠の過去のスキャンダルではなく、「またしても天才の才能を潰そうとした巨悪」として黒崎を徹底的に糾弾。黒崎は、彼のトラウマである「群衆の力」によって打ち砕かれ、業界から永久に追放される。

​黒崎:「馬鹿な…私が築き上げたものが…こんな、こんなガキどもの夢ごときで…! すっぺ!」

​黒崎が漏らした東北訛りは、彼の支配欲が完全に崩壊した断末魔の叫びだった。

​娘たちの純粋な夢と、母・悠の達観した正義が、業界の影を一掃した。私が捨てた光は、娘たちの手によって、私とは違う、本物の清らかな光として世界を照らしたのだった。


Nステ生放送 サプライズ共演


スタジオの照明が柔らかく落ち、陽と明の軽やかなトークが場を温める。陽がにっこりとカメラに向かって告げる。


「さて、ここでサプライズです。今日は特別に、双子ちゃんのお母さんにもステージに上がっていただきます。」


観客席の一角がざわめき、双子が手を取り合ってステージへ歩く。続いて静かに現れたのは、落ち着いた佇まいの悠。普段は裏方に徹している彼女が、今日は娘たちと一緒に歌うという知らせに、スタジオは温かな期待で満たされる。


悠は少し照れたようにマイクを受け取り、穏やかに挨拶する。声は落ち着いていて、母としての優しさが滲む。


「今日は娘たちと一緒に歌わせてもらいます。よろしくお願いしますね。」


曲が始まると、三人のハーモニーがスタジオを満たす。双子の振り付けは緻密で、悠は無理のない動きでそれを支える。観客の拍手がリズムに乗り、画面のコメント欄は称賛で埋まっていく。


中盤、悠がふと歌の合間に観客席を見渡して言う。


「この振り付け、最初は外の先生にお願いしてたの。でも途中で『うちでやった』って話になって、娘たちも戸惑ってたのよね。ちゃんと作った人に感謝したいなって思って。」


その一言は計算されたものではなく、母としての自然な疑問だった。だがカメラは瞬時に楽屋の端にいる人物の表情を捉える。元マネージャーAの顔が一瞬こわばり、スタジオの空気が微かに変わる。


プロデューサーが用意した「制作秘話」映像がスクリーンに流れ、そこに映り込んだ資料の一部が視聴者の目を引く。双子のマネージャーやファン代表が裏取りを始める様子が、放送の裏側で静かに動き出す。SNSのタイムラインが一斉に反応し、ハッシュタグがトレンドに上がる。


歌が終わり、拍手が鳴り止まない中で明が軽く振付の話題を振ると、悠は淡々と、しかし確信を持って続ける。


「娘たちは『違う』って言ってたの。私たちはただ、ちゃんとした人に感謝したいだけなの。」


その言葉が決定打となり、スタジオのスタッフの一人が誤って裏のメールをスクリーンに送信してしまう。画面に表示された一行が、Aの不正を示す証拠として視聴者の目に入る。Aは慌てて言い訳を試みるが、悠はただ静かに双子の手を握り、母としての誠実さを崩さない。


放送終了後、SNSとニュースは瞬時に反応する。双子のファンは母娘の真摯さに胸を打たれ、被害を受けていた関係者の声が集まり始める。悠の何気ない一言が、隠れていた事実を表に引き出す引き金となった。


最後に悠は双子の肩に手を回し、カメラに向かって穏やかに笑う。その笑顔は計算のない母のものだが、その真っ直ぐさが周囲の偽善を切り裂き、娘たちの清廉なイメージを守る力になっていた。


2ch風コメント


1: 名無しさん@恐縮です 2025/12/01(月) 21:05:12

悠マジで母親パワーでぶち壊したなwww 天然って最強だわ。


2: 名無しさん@お腹いっぱい。 2025/12/01(月) 21:06:03

あの一言で証拠が出るとかドラマすぎるだろ。演出かと思ったわ。


3: 名無しさん@恐縮です 2025/12/01(月) 21:06:45

Aさん終わったな。業界の闇が一気に露呈して草。


4: 名無しさん@お腹いっぱい。 2025/12/01(月) 21:07:10

悠の落ち着きが怖い。裏で何か仕込んでたんじゃね?って疑っちゃうレベル。


5: 名無しさん@恐縮です 2025/12/01(月) 21:07:58

双子のイメージ回復キター!母親と一緒に歌うとか神采配すぎる。


6: 名無しさん@お腹いっぱい。 2025/12/01(月) 21:08:22

生放送でメール誤送信とか運が良すぎる。偶然の連鎖って怖いな。


7: 名無しさん@恐縮です 2025/12/01(月) 21:09:01

Dも名前出てきたの?あの人まで巻き込まれるとは。業界終わるんじゃね。


8: 名無しさん@お腹いっぱい。 2025/12/01(月) 21:09:40

悠「ちゃんと感謝したい」って言い方が母親らしくて刺さった。計算じゃないのが効いたな。


9: 名無しさん@恐縮です 2025/12/01(月) 21:10:05

ファンの動き早すぎワロタ。SNSの力ってやっぱヤバいわ。


10: 名無しさん@お腹いっぱい。 2025/12/01(月) 21:10:47

Aの弁明が見もの。どんな言い訳するか楽しみだわ。


11: 名無しさん@恐縮です 2025/12/01(月) 21:11:20

制作秘話映像に契約書映るとか制作側もグダグダだな。管理どうなってんの。


12: 名無しさん@お腹いっぱい。 2025/12/01(月) 21:11:55

母親が表に出ることで逆に信頼度上がるって皮肉だな。プロの仕事って何だよ。


13: 名無しさん@恐縮です 2025/12/01(月) 21:12:30

悠の笑顔が怖いってレス見て納得。無自覚ざまあってこういうことか。


14: 名無しさん@お腹いっぱい。 2025/12/01(月) 21:13:02

これで双子の仕事増えるだろ。清廉イメージは金になるからな。


15: 名無しさん@恐縮です 2025/12/01(月) 21:13:40

被害者の元妻Cが出てきたのも効いた。証言が揃うと説得力あるわ。


16: 名無しさん@お腹いっぱい。 2025/12/01(月) 21:14:12

業界重鎮が焦ってるの想像すると笑える。権力って紙一重だな。


17: 名無しさん@恐縮です 2025/12/01(月) 21:14:50

次の生放送でAが謝罪会見やるのか?見逃せん。


18: 名無しさん@お腹いっぱい。 2025/12/01(月) 21:15:25

とりあえず悠と双子のユニット曲出してくれ。今なら売れる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る