第四章 士族の棒術
首里の士族、湧田 覚心(がくしん)は棒術と手(ティー)の達人として知られていた。
数刻前、弟子の一人が負傷し、やがて屍者へと変じてしまった場面を、覚心はこの目で見ていた。
「噛みつかれれば、化ける」――その原理はすでに理解していた。
道場へ屍者の群れが迫ったとき、弟子たちは震え上がったが、覚心だけは冷静だった。
「肝ぬ太さ忘るな。噛まれたら終わりだ。だが……わしは簡単には喰われん」
覚心は自らの前腕を示した。
日々の部位鍛錬で鍛え上げられた腕は、節の立った木のように硬く、皮膚は厚く締まっていた。
「鍛えた身体は裏切らん。頼れるのは技と鍛えだ」
屍者の一体が覚心に飛びつき、むき出しの腕へ噛みついた――。
その歯が折れた。
弟子が叫ぶ。
「師範! 本当に効かない!」
「効かぬ。だが油断するな。噛まれたら化けるのは確かだ。だから――噛ませる前に倒す」
「いや師範、今一度噛まれてますよね!?」
覚心の棒が風を裂き、屍者の顎を砕き、喉を突き、膝を断つ。
その動きは舞のように滑らかでありながら、一撃ごとに骨の軋む音が響いた。
村人を背に庇いながら、覚心は大声で吠えた。
「琉球の武は――守るためにある! 今日こそ証明してみせるわ!」
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