第4章 変化
星の見える夜、アーデルと庭で焚火をしていた
「最近は…楽しいかも…それにもっと魔法も使いこなしたい…」
梓が小さく呟く
アーデルは驚いたように梓を見るがすぐに笑った
「そりゃよかった、それが俺の望みだしな」
「別にアーデルといたいとかじゃねぇけど」
アーデルは梓の頬をつんつんしながら、
「はいはい、ツンデレ」
「殴るぞ」
「殴れ殴れ、痛いの慣れてるから」
なんだよ慣れてるって…
アーデルの笑顔は弱いけれど優しかった
梓は火を見つめながら思う
…母さん…僕ここで生きていけるのかな
死んだ母に問ても答えは返ってこない
だけれど毎日が楽しいからこそ梓は恐怖を感じる。
強い人
梓は目を覚ますと、これまでより少し強くなった腕の感覚に気づいた
視線をそらすと、アーデルはいつも通りベッドの横で腕組して、にやにやしている。
「お、目覚め早いな、今日の魔法のレッスンは特別だぞ」
「特別って?」
梓は首を傾げる。
「生きるための魔法、もっと使いこなせるようにならないとな」
梓は顔をしかめる
魔法…自分が人間からそれていくのは…少し怖い
でも、これまでのアーデルとの生活を思い出したら少し勇気がわいてきたかも
「わかった…」
アーデルは満足そうにうなずき、梓の頭を乱暴に撫でた
「まずは"動物の動きを読む魔法"からだ。
森での狩りに必要だからな」
「読むって…どうやって」
「まぁやり方は教えるから」
アーデルと森へ行き、やり方を教わる
なんだよ…とにかくネックレス握って集中すればいいって…
教えるのへたくそ…
梓はネックレスを握り、目を閉じて力を集中させる
夕方
今日は何も成長することができなかった
鳥が飛び立つ音に反応するぐらいでその動物の行動を1から読むことはできない
魔法が安定しない…
「できないや…」
アーデルは腕組をしながら答える
「いや、練習を積み重ねればすぐできる、でも才能あるよ本当に」
梓は悔しそうに舌打ちした
「あっそ」
「負けず嫌いは強くなるんだぜ」
アーデルは笑いながらも、とても真剣な目をしていた
その日から、梓は何日も何日も諦めずに練習に取り組んだ
"動物の行動を読む魔法"をアーデルに教わってから、約2週間__
梓は森の動物たちの行動を読み、狩りを効率よく成功させることができた
「ほら、梓できたじゃん」
アーデルは得意げに言う
「当たり前だ」
「このまま日常的に使えるといいね」
梓はアーデルを見る
日常的って…
アーデルは僕が、アーデルに教えてもらった魔法しか、使えないと思ってるのかな…?
「僕、アーデルが思ってるより魔法使えるよ…」
梓は魔法を使い枝や葉を自在に操る
アーデルは驚いたのか硬直して梓を見ている
「はっ、こいつはすげぇ」
「…だろ」
アーデルは梓の頭をなでる
「いや、本当にすごいよ、毎日ちゃんと練習した努力だよ
梓はすごいな!」
アーデルの本気の"褒め"に梓は一瞬だけ顔を真っ赤にした
「照れる…」
「お!照れてる!?」
「うっせぇ…」
夕方の空、二人の笑い声が森に溶けていく
森の影
昼過ぎ、森を歩いていると梓はふと気づき、アーデルの裾を引っ張る
「アーデル、なんか森の奥から変な気配がする…」
アーデルは一瞬顔を曇らせ、手を梓の肩に置いた
「気にすんな…大丈夫」
「大丈夫って…でも…」
梓は目を細めて森を見渡した
いつもとは違うような…
僕の考えすぎ…?
森はいつもより静かで、普段なら気づかない細かい影までもが気になってしまう
アーデルは口元に笑みを浮かべたまま、少しだけ目を伏せる
「大丈夫だから…家に戻ろう…?」
梓は小さく頷いた
アーデルの言葉に少し安心した
秘密の手紙
梓がいつのもように外に出て、ポストを開けると中にはあふれ出るほどの手紙が入っていた。
封筒を見る、梓はこの世界の文字は読むことができないが、雄一覚えたアーデルという言葉が書かれていた
梓は大量の、手紙を抱えながらアーデルのもとに行く
「アーデル、この手紙何?アーデル宛てみたいだけど…」
アーデルはそれを見て眉をひそめ、梓を見た
「それ…どこにあった…?」
「ポストの中だけど…」
アーデルは手を顎に当て何かを考えている
「コレ何なの?」
「ラブレターだよ、ラブレター」
ラブレター…?
「嘘だぁ…」
「本当だよ?俺結構モテるんだぜ?」
梓は冗談を言うアーデルを睨む
「隠し事すんなよ…」
アーデルは「ははっ…」と笑った後、呼吸をして小さくつぶやいた
「昔のことだ…俺の…国のこと」
梓は黙って頷いた
「まぁ気にすんな」
アーデルは右手をこすりながら笑った
アーデルが右手をこすってる…
嫌な話とか、あまり話したくないことを話すときは毎回そうだ…
癖なのかな…
ありがとう
深夜、梓はなかなか眠ることができず、することもないのでアーデルの部屋に行く
本当はただいつのもお礼がしたかっただけだった。
コンコン__
「ん…え…梓?」
アーデルは驚いた顔をしている
梓はトコトコと、アーデルの横に行きベッドに腰をおろす
「寝れねぇんだよ…話したっていいだろ」
アーデルは横たわっていた体を起こし、梓の頭を撫でる
「魔法…怖くない?」
アーデルの質問に梓はネックレスを握る
「そりゃ怖いけど…少しは慣れた…」
そっかそっかと、アーデルは優しく微笑む
「それでいい…少しずつだ、急がなくていいからな」
梓は小さく頷いて見せる
どうしよう…
言ったほうが…いいよね…?
「ねぇ、アーデル…」
「なぁに?」
梓は何から話そうか、自分の頭の中を整理しながら話し出す
「母さんのこと…人殺しとか言って悪かった…。
あの時母さんは辛かったんだと思う…でも…僕は現実を見たくなくてそれを分かってあげれなかった…そのうえアーデルに悪魔とか人殺しとか…言っちゃって……」
アーデルは子供を宥める親のような顔で、梓の両頬を手で押さえる
「いいよ…気にしないで」
「でも…」
アーデルは微笑みながら
「じゃあ…1つお願い聞いてくれる?」
「何…」
アーデルは梓を抱きしめる
「え…何…?」
梓は混乱した顔でアーデルを見つめる
だが決してアーデルの手をどけようとはしなかった
「俺さ…梓のお母さんに殺してくださいって頼まれてたんだよね」
梓は驚いて硬直する
え…?
「母さんが…?」
「そう。でもね…梓のお母さんに言われたんだ…」
梓は固唾をのみながら、アーデルの次の言葉を待つ
「なんて…?」
アーデルは梓をより強く抱きしめる
「私が死んだあと、私の代わりに梓を幸せにしてあげてくださいって。
だから、俺は梓の成長を最後まで見届けたいんだ…」
「ダメかな…」
アーデルの顔は見えないけど……アーデル泣いてる……?
ぼ、僕はアーデルのこと信じていいのかな…
「だめじゃない…けど…僕はアーデルのこと信じていいの?」
アーデルは少し間をおいてからゆっくりと話し始める
「あぁ…信じてくれ…梓は俺が守るから。
12の子供に責任を負わせるほど馬鹿な大人じゃない…」
その言葉に梓は決意を決めて口を開ける
「アーデルは馬鹿だよ……でも…いつも…ありがと…」
最後は聞こえないほどかすれてしまったが、アーデルに日ごろの感謝をすることができた
「らしくねぇ」
アーデルは笑いながら梓の頭をがむしゃらに撫でた
撫ですぎだろ…
でも言えてよかった…
梓は今までたまっていた感情を伝えることができ、安心したように眠りについた。
「まだまだ子供だな…ちゃんと守ってやんないとな…」
アーデルの優しい声が聞こえる
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