第49話 stranger in the terminal(1)

 大型車の往来が激しい『トラックの港』―――


 およそ200を超える数の四輪車が、それぞれの荷物を積んでは走り、また下ろしては積み―――


 という動作が絶え間なく行われている正月のトラックターミナルに、三つの人影があった。中学二年生の早坂、河北、そして山田である。


 成瀬の現状と、絶望に追いやられた甘衣の状況を聞かされた河北は、すぐさま早坂の自宅へと走った。


 早坂の家には数人の警備員が常駐しているので、突破に時間がかかったが、何とか早いうちに早坂へ話を通すことができたのであった。


 玄関先の立ち話で、あれやこれやと話し合う早坂はやさか河北かわきたの前に現れたのは、こちらも話を聞きつけた山田であった。おそらく、甘衣からその友人へ、今度は別の友人へ、次に山田へ―――というリレーのようなかたちで情報が彼のもとまで辿り着いたのであろう。


 当然、河北かわきたも山田への連絡を行おうとした。しかし、早坂はやさかと家が近所どうしの彼―――河北において、切迫した事態のなかで『端末で連絡を取り合う』という方法は選択されなかった。無意識のうちに、身体が問題の共有者たる早坂はやさかの家へと向かい、気づけば親友の家のチャイムを鳴らしていたのだ。


 だが、ある意味でこの選択は正解であったといえる。由緒正しい家柄に縛られている早坂はやさかは、自宅に尋ねてきた親戚たちへのまどろっこしい挨拶巡りをさせられており、端末を手元には置いていなかった。


 いつも通り端末での連絡を行なっていた場合、早坂へ連絡がたどり着くまでに長い時間がかかっていた可能性があったのだ。


 遅れて合流した山田と彼らは、現在―――



「おいっあんまり顔出すなっ! バレちまうぞ!」


「うるせー! お前こそ声抑えろや!」


「二人とも静かにしてくれっ! 最適な移動経路をマップから編み出そうとしているんだから!」



 宮崎の郊外に位置するトラックターミナルにいた。成瀬が運ばれたらしい東京の病院へ行くためである。


 彼ら自身も、無力な学生である自分たちが病院へ出向いても、大した意味は無いかもしれない、と分かっている。それに、もしかすると成瀬なるせに会うことは叶わないかもしれない―――それも分かっている。


 それでも、彼らには『行かなくてはならない理由』があった。それは、地元の医師―――事故にあった成瀬なるせを、最初に診察した―――の話したがもととなっている。

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