第38話『王宮の決断と姫の同行』

 マスティアから俺たちは帰った。 


「あの国はどうなるんですか......」


 レンドが聞いた。


「王が死にグラウニーもいなくなったからな。 知られれば混乱は必死だ。 だからゼノフォスはその前にルードランドに帰り王へ相談に向かった」


「少なくとも前の王よりはましじゃない」


「かもしれないが...... ただ宝玉の行方だ」


「ええ、もう考えられるのはゼアルードしかないですね」


(ファラドの持ち出したものが、何かはわからないが、冒険者だとするなら隠し部屋にあった終焉の宝玉(ヴァラム・オーブ)の可能性が高いな...... ゼアルードのダンジョンならリゼルダインが待ち構えている可能性もあるが」


 俺たちはゼアルードに向かうことにした。


「しかし、どうやって向かう。 敵対してるなら、入国もままならないだろう? 転移の指輪は距離も決まっているし、何度も連発できないぞ」


「冒険者としてならはいれるわよ。 あそこにも支部はあるから」


「でも、あのリゼルダインとかいうやつらが来たら厄介です。 あの青い剣はなくなっても、とてつもなく強いことには変わりはない...... 正直剣技じゃかないませんよ」


 レンドが自信なさげに言う。


「そうだな。 あのリゼルダインたちの装備から国が絡んでいるかもしれない。

ただこの宝玉はどうする?」


「国の方が安全でしょうね」


 ディルセアがそう言った。


(ひとつの国に巨大な力を与えるのは危険だが...... 俺も終焉の宝玉を持っているから、少なくとも二つ持つよりは安全か。 もし裏切られるようなことがあっても、最悪は避けられるはず......)


「......そうだな。 宝玉は預けておこう。 いいかレンド」


「そうっすね。 グラウニーがいないなら、襲われる心配はないですし......」


 レンドも意図を理解したようでうなづいている。


 俺たちはルードランドの王宮に向かった。



「お久しぶりです! カイトさま!」


 満面の笑みでイオリシアは出迎えてくれた。 俺たちはルードランドの王宮に来ていた。 ゼノフォスは話をするため先に帰っていた。


「ああ...... いや、お久しぶりです。 イオリシアさま」 


「やめてください。 そんな言い方、今までと同じでお願いします」


 悲しそうにイオリシアが言う。


「わかった。 イオリシア、久しぶり」


「久しぶりっす。 イオリシアの姉さん」


「ええ、レンド君も久しぶり」

 

「ひ、姫様、はじめましてディルセアです」


「あなたがヒュライドさまのお孫さんですね。 カイトさまたちを助けていただいてありがとうございます」


「は、はい」


 珍しくディルセアが緊張している。


「それで、先に帰ったゼノフォスから話は聞いているか」


「......はい、まさか宝玉が関係するとは......」


「知っていたのか」


「とてつもない力を持つものだとは父に聞いていました。 まずは父にお会いください」


 そう言って王宮を案内してくれた。



 謁見の間で俺たちは王と王妃に謁見した。 その隣にはゼノフォスとイオリシアも立つ。


「君がカイトどのか。 イオリシア、ゼノフォスから聞いている。 私はこのルードランドの王、【トレイル】だ。 遅くなったがそなたにはディセンタの野心をくじいてくれて感謝している」 


 玉座の精悍な顔のトレイル王はそう言い、横に座る王妃は優しく微笑んだ。


「トレイル王、お忙しいところお会いしていただいてありがとうございます。 それで早速でもうしわけありませんが、宝玉のことを詳しくお話いただけますか?」


「うむ、私も先代の王である父から聞いた話だ。 かつて文明が滅んだあと、この地に強いモンスターが現れ、崩壊後生き残った人々を蹂躙した。 その時、我が祖先が人々を率い多大な犠牲を払って、モンスターを討伐した。 そのモンスターが持っていたのが、この宝玉だという」


 そういって衛兵に守られた従者が持ってきた小箱を開ける。 そこには透明な黄色い宝玉があった。


「これが始祖の宝玉(ファースト・オーブ)」


「そうだ。 かつての王国にあったとされるが、ヴェルザグに奪われたという。 とはいえ、モンスターが所有するその異様さに、我が一族はこれを封印し守ってきた」


「なるほど...... リゼルダインとガーランドと言うものが、四つの宝玉を狙っています。 この宝玉もお守りいただけますか」


 俺は運命の宝玉(フォーチュン・オーブ)を差し出した。


「それが四大宝玉か...... しかし、それを私に預けてもよいのか。 自らの欲のために使うとも限らんぞ」


「......ですね。 ですが、我々が持ち続けるのは他の宝玉を手に入れるときに危険ですし、預ける場所も狙われるかもしれない。 少なくとも国が管理したほうが安全でしょう」


「それだけか?」


「イオリシアとゼノフォスは旅をした仲間です。 イオリシア、ゼノフォスとも自分の命を懸けて行動できるもの。 その両親ならば少なくとも他の国よりは信頼できます」


 それを聞いてトレイル王は微笑む。


「ふふっ、そうか。 いつも勝手をして困ってはいたが、二人とも信頼を勝ち得ていたな。 よかろう、それは我が国で預かろう。 それでそなたたちはゼアルードに行くつもりだとか」


「はい、かつてのリサーラ国には宝玉があったらしく、今もゼアルードに宝玉があるかもしれません」


「ふむ、そんな話も、聞いたことがあったな...... 手紙を出した。 向こうにいる者たちを訪ねるがよい、力になってくれるだろう」


「ありがとうございます」


「では、父上、私も同行します」


 ゼノフォスがいうと、側近らしき老人が手を上げた。


「なんだ【ブレイロ】大臣」


「ゼノフォスさまを、ゼアルードに向かわせるのはお止めください。 かの方は王家の跡取り、もし何事かあれば王家の存続に関わります、 それに王子は外遊で顔をしられていてもおかしくありません。 暗殺の危険すらあります」


「いや、しかし......」


 ゼノフォスは反論しようとするも、言葉を見つけられなかった。


「ゼノフォスはここにいてくれ、それにマスティアのこともあるだろう」


「......そうですね。 私が利用されかけましたし......」


「うむ、そなたにはマスティアへの支援を頼みたい」


 そう王から頼まれ無言でうなずいた。 


「ならば、私が参りましょう」


 イオリシアが手を上げる。


「イオリシアさま...... それは」


 ブレイロは止めようとする。


「私はほとんど外遊に出ませんゆえ、顔も知られておりません。 冒険者としての実績もあります。 父上、宝玉を悪用されれば、かつてのような文明の破壊もあり得ます。 何卒同行をお許しくださいませ」


 そう、深々と頭を下げた。


「わがままなどいわぬ、そなたが、そこまで言うか......  わかった、カイトどの我が娘を連れていってくれ、役には立とう」


 そう王に直々に頼まれ、断れなかった。

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