第36話『宝玉の影』

「あれがそなたの言ってた宝玉を望むものか......」


「ええ」


 観客席から声がする。 見るとグラウニーと話す小太りの男がいた。


「なんのつもりだ...... グラウニー」


「見ればわかるだろう。 お前たちはここで死ぬ。 そのルードランドの王子とともにな」


「私のことを知っていたのか」


 ゼノフォスが言うと、グラウニーが口角をあげた。


「うちの商会の情報力を侮るなよ...... この国にはいる前からお前らの動向は知っていた」


「宝玉の話も嘘なのね!」


「いいや、考古学者のお嬢さん、あれは本当さ。 嘘には本当のことを混ぜないとうまく騙せないからな......」


「宝玉は盗まれたのか!」


「ああ、元クランチとこのボウズ...... あの坊主から手に入れたあと、ファラドが宝玉を持ち逃げした。 見つけ出したときには、もう手元にはなかった......」


 不快そうにグラウニーは言う。


「それで俺たちを殺してどうするつもりだ」


「ああ、そりゃ王様に聞けよ」


 隣の小太りの男を見た。


「王様......」


「カイトさん、あの者がこの国の王、ビスクロエです」


 ゼノフォスが言う。


「ルードランドは我が国に入り、不当にも王子を使い宝玉を奪いとらんとした。 これは敵対行為である。 ゆえに我らはルードランドの宣戦布告と見なし、兵を挙げる!」


 ビスクロエはそうニヤニヤと笑いながら言った。


「戦争の名目にするつもりか...... そんなことで戦争してもこの国はどうにもならんぞ」


「むふっ、この国が戦争になれば、我を頼り皆がひとつになろう。 さすれば逆らうものを一斉に処断できる」


 そうビスクロエは笑みを浮かべた。


「戦争を理由に反対するものの粛清が目的ですか...... そして戦争を途中で切り上げ調停...... そんな算段でしょうね」


「ルードランドはゼアルードと敵対しておる。 我が国と戦っておる暇などはない。 これを機に不穏分子を捕らえるか前線に送るかして処分するのだ」


「......ということらしいぜ」


 グラウニーはそう淡々と話した。


(どうせ、グラウニーがこの王を唆したんだろう...... だがなんのために)


「さあ、死んでくれ」 


 鉄格子を上がると、巨大な四本腕のゴリラのようなモンスターが出てきた。


「ガァァァァ!!」


 雄叫びをあげ、モンスターは丸太より太い両腕を地面につけ、走って迫ってくる。


渦風ストームウィンド!!」


 レンドの剣の風が渦を巻きモンスターに当たるが、そのまま突き進んでくる。


光閃ライトスラッシュ!!」


 近づくモンスターの腕に光の剣を振り下ろす。 片腕が飛ぶが、他の腕がゼノフォスを殴りつけようと振るわれる。


「させない!」


 ディルセアの石の魔法で地面が盛り上がる。 しかしその石をモンスターが砕いた。


「ゼノフォス! 光だ!」


輝軌シャインロード!」


 ゼノフォスの剣から光が放たれる。


拡張スキル・エクスパンション契約コントラクト! 輝拳シャインフィスト!!」

 

 俺は左手にそれを浴び、右腕でそれをモンスターの顔面に放った。


「ギャウウッ!!」


 強い光を浴びたモンスターは俺たちを見失う。


「いくぞ!!」


裂風ピアシングウィンド!!」


光閃ライトスラッシュ!!」


鋼指メタルフィンガー!!」


 俺たちは三人でモンスターの体を切りつけると、モンスターは血飛沫を上げてよろめき倒れた。

 

「お、おいグラウニー! 話が違うではないか! やつらモンスター倒してしまったぞ!! はやく殺せ!!!」


「あー うるせえな...... ブタが......」


「はっ...... なにを、ぐはっ」


 グラウニーが腰の剣を抜いてビスクロエを刺すと、その体を蹴り落とした。 闘技場内に落ちたビスクロエはそのまま動かなくなった。


(なんだ! 王を殺した!)


「ボ、ボス!?」


「いくらなんでも!! 王を殺せば、俺らも...... ぎゃああ」


「なにするんですか!!」


 グラウニーは無言で部下たちを次々と剣で殺していく。 そしてこちらを見下ろす。


「これで知るものはお前らだけだ...... これで、この国とルードランドは戦争になる」 


「戦争、なんのつもりだ...... お前は戦争を起こすのが目的なのか」


「クククッ......」


 グラウニーは跳躍すると高い観客席から、俺たちの前に着地すると地面が揺れ振動した。 


「なんだ!? この身体能力!!」


「普通じゃないわ!!」


「来るぞ!!」


 グラウニーは走りよると、そのまま剣をふるう。


 ガキィィン!!


「ぐあっ!!」


「なっ!!」


 レンドとゼノフォスが受けたが、二人は弾かれる。


(あの力、人間離れしている...... まさか)


「お前、宝玉を使ったんだな......」


「......くく」


 そのグラウニーの含み笑いから、俺はそう確信した。

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