路上占い、あれこれ94【占い師はタクシーで】

崔 梨遙(再)

もう書いてました? 書いてませんよね?

 僕が週末の夜のミナミで路上占いをしていた頃、僕には昼の本業がありました。求人広告の営業でした。その延長線上で、『採用コンサルタント』を名乗るようになりました。


 営業でしたから、タクシーにはよく乗りました。タクシーの運転手さんって、めっちゃ話しかけてくれる方もいます。僕は或るタクシーの運転手さんから、怖い話を聞きました。


 夜中、人通りの少ない道で、白いワンピースの女性が手を上げていました。勿論、運転手さんはタクシーに乗せます。女性は長い黒髪で、行き先だけ告げると俯きました。話しかけられる雰囲気ではありません。沈黙のままタクシーは走ります。目的地付近に着いたところで、女性が言いました。


『ここでいいです』


 料金を支払って、女性はタクシーを降りると足早に姿を消しました。運転手さんが後部座席を振り返ると、染み。後部座席を確認すると、それは小便でした。車内を洗浄するのが大変だったということです。運転手さんはこう言っていました。『幽霊よりも、小便の方が怖い』と。



 別の運転手さんから聞いたお話です。夜中、人通りの無いところで老婆が手を挙げました。茶色のワンピースでした。当然、運転手さんは乗せます。真っ白い髪の老婆は行き先だけ告げて俯きます。話しかけられる雰囲気ではありません。目的地付近まで辿り着いたところで、


『ここでいいです』


 料金を支払って、女性は足早に消えました。運転手さんが後部座席を振り返ると、後部座席に異変が! 茶色い染み・・・う〇こでした。車内洗浄が大変だったらしいです。運転手さんは、こう言っていました。『幽霊よりも、う〇こが怖い』と。



 或る日、僕は営業で某県のお客様を朝から4社回って、タクシーに乗りました。女性の運転手さんでした。美人で、毅然とした雰囲気、美しい姿勢と仕草。好感が持てるカッコ良いドライバーさんでした。歳は40代だと思いましたが、女性の年齢はわかりません。


 僕は某大きな駅まで、と言いましたが、運転手さんは違うことを言い始めました。


『お兄さん、独身?』

『はい』

『彼女は?』

『今、いません』

『今日は直帰?』

『はい、この時間ですから』

『明日の土曜は休み?』

『はい、休みです』

『予定は?』

『無いです』

『じゃあ、私の家に泊まる?』

『え! いいんですか?』

『私、今日はこれで終わりだから、事務所までついてきて』


 事務所の駐車場で待たされたら、私服のお姉さんがやって来ました。私服のセンスのいいお姉さんでした。


『ここからは私の車で家まで行くから』


 僕はお姉さんの家に泊まることが出来ました。それからしばらく、某県に行く度にお姉さんと会っていました。



 何故、お姉さんが僕を気に入ってくれたのか? それは謎でした。僕が四柱推命でいうところの紅艶という特殊星を持っていたからでしょうか? 『僕のどこを気に入ってくれたんですか?』と、聞きたかったのですが聞きませんでした。聞くのが野暮だと思えたからです。なので、何故、お姉さんが僕に優しかったのか? それは今も謎のままです。




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路上占い、あれこれ94【占い師はタクシーで】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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