第31話:正義の信念
「ダメだ!無駄な行為は辞めてもらいたい!」
今まで淡々と話をしていた須佐本部長が声を荒げた。
それまで黙っていた大和刑事部長と竹取警務部長は須佐に抗議を始めた。
竹取警務部長
「ダメだと言われてもね、須佐本部長。」
「今の状況を良く理解していただきたい。」
大和刑事部長
「そうですよ。」
「鬼頭という警察システムの構築者にハッキングされて機密データを流出させたうえに、強盗事件まで起こされている。」
須佐本部長は二人の反論に言葉が出ない。
竹取警務部長
「ここは鬼頭の逮捕よりも鬼の存在を公表し、鬼を処罰することで我々警察の威厳が保たれるではないですか。」
大和刑事部長
「何を迷うことがあるんですか。」
「所詮は相手は鬼なんですよ。鬼の一頭や二頭を処罰したって問題などありませんよ。」
須佐本部長
「分かった。桃谷巡査部長、一つ聞きたいことがある。」
桃谷は須佐本部長の次の言葉を待った。
須佐本部長
「私に『正義の信念』はあると思うかね?」
桃谷はポケットからきびだんごの御守りを取り出すと空高く御守りを掲げて見せた。
桃谷
「あなたは、世間の混乱を避けるという大義のために、法と、そして一人の人間の尊厳を犠牲にするという、警察官として最も重い過ちを犯されました。」
「しかし、私は信じます。その決断の苦しみを背負い続けた、本部長の心の中にも、今もなお、必ず 『警察の正義の信念』 が残っていると。」
須佐本部長
「そうか。桃谷巡査部長、ありがとう。」
「鬼の存在は公表しない。世間が混乱することだけは避けたいんだ。」
「何より鬼ヶ島には鬼ヶ島の我々には我々の平和がある。また元の世界に戻るだけさ。」
竹取警務部長
「お言葉ですが本部長。我々の意見を無視するようならあなたの責任は免れませんよ。」
須佐本部長は笑みを浮かべた。
須佐本部長
「私はこの2年、見えない恐怖と闘っていたが、君たちのおかげで解放された。ありがとう。」
「雉屋さん、お父さんには申し訳ないことをした。」
雉屋
「いえ、本部長のお心お察しします。」
「父の名誉回復とあなたがこれからの組織に示す正義の姿を、私は信じます。」
須佐本部長
「犬飼くん、君にも苦しい思いをさせてしまって申し訳なかった。」
犬飼
「いえ、俺はただ後輩の死が無駄にならなければそれで良い。」
須佐本部長
「猿渡くん、君には鬼頭の構築したシステムの再構築を頼むことになると思う。」
猿渡
「僕なんかに任せて大丈夫ですか?」
須佐本部長
「君は今回の任務でその技術を真実を追求するためにだけ使ってきた。」
「君以外には頼める人はいないよ。」
猿渡
「ありがとうございます。」
「その時は協力させてもらいます。」
須佐本部長
「桃谷巡査部長。君の警察官としての正義の信念を見させてもらったよ。これからの君の活躍を心から願うよ。」
桃谷
「ありがとうございます。」
須佐はゆっくりと席から立ち上がった。
須佐本部長
「では、金城課長、行こうか。」
会議室を後にする須佐本部長は重々しい雰囲気の中にも、その足取りはどこか軽やかなものを感じた。
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