第28話:警察本部長の決断
「待って下さい、須佐本部長!」
その場を去ろうとする須佐を桃谷が引き止めた。
「報告は終わったはずだ。まだ何かあるのかね。」
竹取警務部長が彼らに引き下がるように訴える。
「もう少しだけお時間をいただけますか?」
「構わない。話を聞こうじゃないか。」
須佐は桃谷の真剣な表情を察して再び席に戻った。
桃谷は猿渡に目で合図を送ると、猿渡はポケットからUSBを取り出した。
「このUSBには鬼頭がハッキングによって入手した警察組織の機密データが保存されています。」
猿渡が持っているUSBを見ると、大和刑事部長が怒りの表情をにじませた。
「お前たちの目的は何だ!」
「勝手に犯人の盗んだ機密データを持ち出して!ただで済むと思うなよ!」
桃谷は須佐本部長の表情を見るが、全く動揺した様子はなかった。
「ここには2年前に警察本部が隠蔽した鬼の事件のデータの証拠データも残っている。」
「そして、その隠蔽は鬼頭の指示によるものだった。違いますか?」
「お前たち、好き勝手言わせておけば!」
怒る大和刑事部長の横で須佐の表情は全く変わっていなかった。
「そして、その事件を追求しようとした私の父、雉屋広海を組織から追放した。」
雉屋翼の表情は険しくなっていた。
「君が雉屋くんの娘さんか。」
須佐は雉屋を見て呟いた。
「はい、そうです。」
「私の父は正義感が強く、鬼の事件についても後輩刑事の死を熊の仕業による事故で片付けられたことに納得がいかなかった。」
「その父が邪魔になった。」
「全く君まで訳の分からないことを言って。」
「あれは熊を追いかけた刑事の不幸な死だったんだ。」
竹取警務部長は雉屋の意見に反論する。
「いや、あれは鬼の仕業だとワシは散々証言したんだ。それを組織は揉み消したんだ!」
犬飼は怒りの表情で竹取警務部長を睨みつける。
「須佐本部長、警察本部はあの島の鬼の存在を知っていたのではないですか。」
「警察本部の機密データとしてあの島の座標位置が重要場所として保存されていたと鬼頭が証言しています。」
桃谷の言葉に大和刑事部長が怒りをあらわにする。
「もういい!全く何なんだ!」
「せっかくこちらも鬼ヶ島へ行くとかいう訳の分からん話に協力してやったのに。」
「本部長、やはり彼らを島に行かせたのは間違いでしたな。」
「静粛に!」
須佐の一言に、会議室は再び沈黙に包まれた。
「まさか鬼ヶ島に行ってそこまで調べあげていたとはな。」
本部長の思わぬ一言に大和刑事部長と竹取警務部長は顔を見合わせた。
「真実を…話していただけますか?」
桃谷の問いに須佐は静かに頷いた。
「真実を話さないといけない時が来たようだ。」
「ただ2年前の事件のことについては大和刑事部長や竹取警務部長も知らないことだ。」
「二人とも聞いてくれるかな。」
大和刑事部長と竹取警務部長が静かに席に着くと、須佐本部長は2年前の真相を語り始めた。
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