第27話:警察本部と鬼ヶ島
海上保安庁のヘリで桃谷、猿渡、雉屋の三人は帰還し、浦島の補給船で犬飼が鬼頭の身柄を輸送していた。
全員の意見の一致により、鬼の温羅、小椿、剛羅は鬼ヶ島に留まってもらうことにした。
彼らは共に人間様の元へ行き、今回の事件の説明をしようかと訴えてくれたが、かえって混乱するだろうとの意見だった。
鬼の温羅や剛羅との別れは寂しいものではあったが、今回の事件の解明や鬼頭の逮捕に尽力してくれた二人には感謝してもしきれなかった。
二人と別れた後、まず警察本部に今回の鬼ヶ島での出来事の一報を報告した。
“鬼ヶ島を鬼頭なる人物が占拠し、事件を引き起こしていた”と。
彼らの向かう先は警察本部という新たな鬼ヶ島だった。
2年前に鬼頭の指示に従い、鬼の事件を熊の仕業と偽り、鬼頭の犯罪を増長させていた。
これが真実であればとうてい容認できたことではない。
一体なぜ警察組織が鬼頭の指示に従ったのか。
全ての真相解明のためにも一行はそれぞれの思いを胸に警察本部へと向かっていた。
***
ヘリは海上保安庁に到着した。
雉屋は無事に警察への捜査協力が終了したことを報告した。
そして、彼らは鬼ヶ島での一部始終を報告するために警察本部へと向かった。
また鬼頭を乗せた補給船も遅れて海上保安庁の基地に着岸した。
そこで待っていた金城捜査第一課長が鬼頭の身柄を引き受けた。
金城は鬼頭の身柄を引き取ると犬飼に伝えた。
「須佐本部長が警察本部で待っています。」
「鬼頭の身柄は私が責任を持って預かります。」
「今すぐ警察本部へ向かって下さい。」
犬飼は警察本部へと向かい桃谷たちと合流した。
***
警察本部には、須佐本部長、大和刑事部長、竹取警務部長が会議室にて待っていた。
「君たちご苦労様。今回の事件の首謀者を捕まえたと報告が入っている。」
須佐本部長は淡々と話し始めた。
「はい、被疑者は鬼頭剛。元システムエンジニアでプロのハッカーです。」
「彼は警察などのシステム構築にも尽力したと聞いています。」
須佐は桃谷の報告を聞いていたが、表情一つ変えない。
「ほら見ろ、鬼などと騒ぎよって!」
「結局は人間の仕業じゃないか!」
大和刑事部長は桃谷たちに皮肉を投げつけた。
「それにしても警察システムの構築者が犯罪を犯したとなれば、大変な問題だ。」
竹取警務部長がこれからの対応を嘆いて呟いた。
「それはお気の毒に。しかし、鬼ヶ島に鬼は確かにいました。」
桃谷の言葉に大和刑事部長は馬鹿にした表情をしていた。
「君ね、鬼がいるなら是非とも連れて来てもらいたい。」
「結局、連れて帰ってきたのは人間じゃないか。」
「それとも彼が犯罪を犯した鬼ですとか言うんじゃないよな。」
「我々をからかうのもいい加減にしろよ。」
大和刑事部長は桃谷に食ってかかった。
「僕たちは鬼ヶ島での出来事を真面目に報告しているだけです。」
「まぁ刑事部長、彼らの報告を最後まで聞こうじゃないか。」
須佐本部長は感情的な大和刑事部長をなだめ、桃谷たちに報告を続けるように促した。
「僕たちは鬼ヶ島へ向かう道中に親子鬼に出会い、母鬼から人間が鬼を支配している話を聞きました。」
大和刑事部長は相変わらず馬鹿にしたような笑みを浮かべている。
「鬼たちは鬼頭に支配され、自らの地に文明を築こうとの鬼頭の誘惑に乗り、人間の国から金品を強奪するように仕向けられました。」
「鬼たちは鬼頭に利用されたのです。」
「鬼が人間に支配される?馬鹿げた話だ。」
大和刑事部長の発言を無視して桃谷は報告を続ける。
「鬼頭が鬼を利用して、連続強盗事件を起こしたのは紛れもない事実です。」
桃谷の一言に会議室は沈黙した。
沈黙を破るように会議室の扉が開いた。
鬼頭の身柄を移送し終えた金城が会議室に入ってきた。
「本部長、後ほど連続強盗事件の首謀者を捕まえたと発表のため会見を開きます。」
「ありがとう。君たちのおかげで連続強盗事件が解決に向かっているよ。」
須佐は桃谷たちの労をねぎらいつつおもむろに立ち上がった。
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