第4話 魂の継承
『【
体の奥底にあるエネルギーまでもが、細い糸となって引き出される感覚。だが、それは単に吸収されるだけでなく、何か別の形へと変容しているようだった。
俺の腕の中で、ユキさんの身体が淡く光り始める。
最初は微かだったそれは、次第に強さを増し、まるで夜の湖面に映る月明かりのように周囲を照らしていった。
光は彼女の胸元に収束してから、俺の持つカードへと吸い込まれていく。
やがて、彼女の身体から放たれる光すべてが『【
次の瞬間——。
カードの中心から、吹雪のような白い霧があふれ出した。
霧はたちまち視界を覆い、まるで世界そのものが凍てつくかのように周囲を包み込むなか、俺の手にあったカードの感触が消えていく。
指先すら見えないほどの濃霧の中、生命力を消費して消耗していた俺は、無理矢理にでも意識を保ちながら、ただじっと待つしかなかった。
どれほどの時間が経ったのだろうか。
朦朧とし始めた意識のなか、とても長かったような気もするし、一瞬のことだったようにも思える。
——やがて、吹雪が静まり、視界が晴れていく。
そこには、俺の腕の中で横たわるユキさんとは別の、もう一人の宵月詩が瞳を閉じたまま、静かに立っていた。
そして、もう一人の彼女の前に新たなカードが現れる。
【
俺がゲームで魂なき女神の現し身のために用意していた、専用の装備カード。
『【神話】魂なき女神の現し身』の
[このユニットを召喚した際、同時にデッキ内の好きな『魔導具/装備』を開封し、ノーコストでこのユニットへと装備させることができる]
その効果により、半ば強制的に召喚されたのだ。
〝骨格型魔導人形〟——自立可能な
その名の通り、それは魂なき女神の現し身の全身の骨格に合わせて作られた、骨型の
ユニットでありながらアイテムでもある。そんな通常のユニットとは違う
さらに、恵まれた能力がゆえに本来ならば種族として弱点が多く、非常に
この発想をもとに、俺が作った骨格型魔導人形と、それを装備するための英雄ユニットばかりで『フィールド専用英雄デッキ』は編成されていた。
彼女の前に浮かぶカード『【神話】骨格型魔導人形〈ヘル〉』が、一度脈動するかのように震える。
次の瞬間、それは砕け散るようなエフェクトを発したあと、骨の姿を映し出した。
まるで氷か水晶のように輝く白銀の骨格が、淡い光を纏いながら浮かび、すぐさま彼女の身体へと吸い込まれていく。
——そして、奇跡が完遂された。
そこから『【神話】骨格型魔導人形〈ヘル〉』の開封と装備へと至る、一連の流れ。
それは、まるで神話の一
言葉にできないほど神秘的で、美しい光景だった。
……だが。
俺自身には、その光景を楽しむ余裕など残されていなかった。
魔力の枯渇。生命力の減少。
筆舌に尽くし難い全身の倦怠感と苦痛。
体の芯から冷え、指先がしびれ、感覚が遠のいていく。
意識の奥で、何かが削られていくような音がする。
気を抜けば、意識が途切れそうだ。
それでも、ユキさんの魂の移植とも言えるこの奇跡の結果を見届けるまでは、倒れるわけにはいかない。
やがて、人形のようだった『【神話】魂なき女神の現し身』の美しい唇から、白い吐息が微かに漏れる。
そして——ゆっくりと、
俺を見つめる彼女は、戸惑いながら言葉を紡ぐ。
「……PQたん? あれ? 私……死んだはずじゃ……?」
——彼女の声を聞いた、その瞬間。
張り詰めていた何かが、音もなくほどけるのを感じた。
俺は、抱きしめていたユキさんの本来の身体とともに、崩れ落ちるようにして意識を手放していった……。
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