第6話 お、俺の名は__!!

「お、俺の名前はスプリングロール・マキ。ただの人間様だ」


 返事が無かった。

 金髪青目とピンク髪赤目は固まっていた。

 その光景に俺は思わず「だるまさんがころんだ」と言いたくなった。

 

「お、おい。なんか変なこと言ったか?」


「私の名前は、スプリングロール・アロエ。この国の四大貴族、スプリングロール家の一人娘よ」


「え?」


 ヤバイヤバイヤバイヤバイ……。俺はとんでもないミスを犯したのでは。

 いや、たまたまなのよ。

 だってこれは俺の中学生時代の友達が……。


「あなた、料理はできる?」


「ちょっとなら」


「そう。さっきの春巻きはあなたの料理?」


「いえ、あれは違います」


「作り方は?」


「大体なら」


 背後から勢いよくドアが開く音がした。

 思わず、振り返ると。

 金髪青目の男の人が一人。

 

「うわぁ~」


 背が高くイケメンだが貫禄からも意外と年はいってそう。


「なにか御用でしょうか? お父様」


「お、お父様ああ?!」


 あ、でもいやどっちも金髪青目だし遺伝子的にもおかしくはないか。


「そのものは誰だ?」


「私の専属料理人よ。春巻きという食べ物を作ってもらうわ」


「そうか」


「そうよ。用がないなら出ていってもらえるかしら」


「今日の夜、夕食の後でいい。私の部屋に来なさい。話がある」


「わかったわ」


「失礼する」


 そういって、その人は部屋から出ていった。


「ふぅ」


 金髪青目が小さく息を吐いた。

 緊張していたのだろう。

 あまり親子仲良くないのか。

 もったいない。

 不意にそんな思考がよぎった。


「ごめんなさいね、厳しい人なのよ」


「いえ」


「これからこの世界のことを教えるわ」


「ん?」


「ここで生きていくためには必要でしょ?」


「あ、はい」


「まずは……」


 こうしてこの世界のレクチャーが始まったのである。

 


 


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