11 8時だ。全員集合!
突如として現れたマスケット銃の男――アラミスの登場に、ホールの空気が一変した。
肩を
「……助かった、アラミス!」
心拍は限界まで打っていたが、瞳から戦意は消えていない。置き手紙には「来るな」と書いたはずだったが、会場はすでに話し合いで済む段階を越えていた。結果として、彼の到着が彼女の命を繋いだのだ。
「けどよくここが分かったわね」
アラミスは片腕で彼女を背後へと
「当然さ、危なかったな。銀の弾丸持ってきてよかった」
(あと5発分しかないけどな)
それを聞いたマルコスは、ジェシカに刺された腕を押さえながら口元を
「……なるほどな。小娘一人じゃなかったってわけか」
緑の血を
「アラミス! 銃を下げて! あいつ磁力で武器を奪い取るの!」
ジェシカの叫びより早く、瞬時にアラミスの手からマスケット銃が離れる。まるで見えない糸に引かれるかのように宙を飛んでマルコスの手へと吸い寄せられた。
「なにっ……!?」
腰の後ろに
「くっそぅ、なんだあの
思わずベルトを押さえながら毒づくアラミスに、彼の登場で多少の余裕を取り戻したジェシカの軽口にも、自然と
「ゲーッ!? アラミスやめてよ!? 公衆の面前でヘンタイ騒ぎだけは!」
「わかってるヨ!」
ニタっと笑ってハンドガンを硬く握り、アラミスが前へ出ようと動いたその時だった――。
「……公衆の面前――! そうだ、ヨハン今何時だ!?」
サイモンの叫びに、ヨハンはハッとした表情で
「大変です! もうすぐ8時です……!」
その一言に、サイモンの眉がピクリと動く。
――8時。
それは今日、この集会に合わせて一般協力者たちが集まる刻限だった。白装束ではない。しかしEIAの理念に共鳴し、街に潜むイントルーダーを監視・通報する役目を
老人もいれば商人もいる。中には家族連れすらいるのだ。
この状況で、彼らがホールに
「怪我人……いや、死者が出る――!」
サイモンは歯を食いしばり即断した。
「ヨハン!」
「は、はいっ!」
「あと数分で8時だ。もはや全員が集合する前に連絡を取る時間はない。お前が入口で参加者を止めろ。集会の中止と危険を伝えるんだ! 中には絶対に入るなとな!」
「はいっ!」
「ここは私が
サイモンは一歩、前に出た。人型の
「EIA侵入者
その宣言に呼応するかのように、マルコスが笑った。
「いいねぇ……戦争らしくなってきたじゃねぇか」
「まぁ待ちな、サイモンていうのか。勇気は認めてやる。けどな――ここは俺たちに任せとけ」
アラミスがサイモンの前へ一歩出てハンドガンを構えた。銃身を反対の手で支えなければ、磁力に引き
「
銀の弾丸を詰めたハンドガンでマルコスに照準を合わせる。今しかない――そう判断したサイモンがヨハンに目配せをすると、ヨハンは扉へと駆け出した。
だが――
ゴォォン……ゴォォン……。
その音を合図にしたかのように前後左右の4か所、鉄扉が開いて参加者たちがホールへ雪崩れ込んでくる。
「サイモン殿おおおおおッ! 止められませんでしたあぁぁぁぁ……」
数人だった人影は、あっという間に数十へと
「三角頭巾のあんた、そこどいてくれ」
「おい……なんか叫び声が聞こえたぞ……?」
「見せろ!」
「まさか……イントルーダーか!?」
中を
「ひっ……!」
誰かが悲鳴を上げた。そして恐怖は伝染する――。
「ばっ、化け物だ!!」
「逃げろ!!」
「押すな、子どもが――!」
誰かの悲鳴をきっかけに、入口付近では人々が押し合い、転び、叫び声が連鎖していく。ホールは
更にこの時、最悪と呼ぶほかない2つの事態が同時に牙を
1つは、マルコスだった。
彼が両腕を広げると、前後左右に設けられた4つすべての鉄扉が勝手に動きだし、内側へと叩きつけられた。そのうえ
逃げ場は、消えた。
一般民衆と白装束の生き残り、合わせて百人を超える人々が、閉じ込められた空間の中で恐怖に飲み込まれていく。
「お集まりのEIA諸君……まとめて地獄まで招待してやろう!」
そして、もう1つ。
それこそが、より致命的な悪夢だった。
撃ち抜かれた足を抱えて床に座り込んでいたザイードが、ゆっくりと顔を上げたのだ。
アラミスに撃ち抜かれた足に力が入らず、両手を床に着いて体を支えている――と思っていた。
「……へへ、待ってたぜ、EIAどもが一堂に会するこの時を……遠距離ヤロウが1人増えたくらいで関係ねぇ……」
「全員まとめて、溶かしてやる……!」
ザイードの体が再びオレンジ色の光を
「おいおい赤頭、動くと
アラミスはホールの中央から後ろには一般民衆がいないことを確認し、ザイードの手へ銀の弾丸を撃ちこんだ。
ところが――。
ジュッ!
銀の弾丸は手の甲にあたる直前に蒸発してしまったのだ。
「……うそだろ」
アラミスの表情から冗談めいた笑みが完全に消えた。ザイードの体からは
「アラミス、どいて!」
ジェシカも立て続けに2本、眼に狙いをつけて放った。だがそれらもまた、うねり立つ高温の壁に触れた瞬間、影も形もなく蒸発した。なんという高熱を
ザイードは手の平に粘つく黒い液体を集め、ジェシカに向けて一直線に放った!
「フハハハハハッ、食らえ!」
「危ない!」
アラミスは
「クソッ、弾丸みてぇな速度だ。けどコイツは水じゃない……地から湧く黒い油だ! 直撃してたら終わりだったぞ」
もう逃げ場はない。マルコスの磁力で扉はビクともしないのだ。
天井から爆音が
ドガアアアアアアア――――ッ!
屋根の一部が破壊され
「ジェシー、アラミス! 無事か――!? ……って、なんじゃこりゃぁ!?」
「ヒース!」
ジェシカが叫ぶのと、ほぼ同時だった。天窓を、稲妻が貫いた。
バリバリバリイイイイイ――――ッ!
「待てっつってんだろ、ヒース!」
ミツヤだった。
「……ッキショウが。大人しく宿で待ってろって、言った
皮肉めいた言葉とは裏腹に、アラミスの顔から不安の色は消えていた。
「毎回派手な登場しやがって、なんでここが分かった?」
アラミスの問いかけにミツヤがちらりと天窓を見上げる。そこには風に揺れるライトグリーンの髪があった。
「ビアンカちゃん……!」
すべてを察したアラミスは目を閉じて、ほんの一瞬だけ笑った。
一方、突如現れた炎と雷を
「次から次へと集まりやがって……これで、全員集合かぁ?」
この瞬間から、
***《次回予告》***
ヒース:なんだよこの館内、サウナか!? 息するだけで肺まで焼けちまう!
ジェシカ:赤い髪のアイツよ! マグマ級の地熱で全て溶かす
ミツヤ:じゃあニット帽のヤツは?
ジェシカ:磁力で武器を奪い取るやつ! 油断したらベルトも持ってかれるわよ! それと……みんな、巻き込んでゴメン!
アラミス:え……俺は嬉しいけど? もっと巻き込んでくれる?
ヒース:誰かこいつを病院に放り込め!!
ミツヤ:次回第12話、「炎 VS
ヒース:あぁクソッ、またタイミング逃しちまった!
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