7 イントルーダーは異物
「3人じゃねぇけどな!」
ヒースは走りながら、去り際にトルデルが吐き捨てた
オレンジ色の光を
「
続いて黄色い光が帯を引いて追走する。ミツヤだ。雷の粒子が地表を滑り、残像だけを置き去りにして姿を消した。
それを見ていたアパート屋上のヨハンは、興奮のあまり声を裏返す。
「サイモン殿――ッ! く、黒髪の少年が消えました!」
その隣でサイモンは平然と高みの見物をきめ込んでいる。
「あのミツヤという少年は移動の際、電気エネルギーを体内に蓄えて見えない速度で移動できる。残像に惑わされるな」
「そ、そんなことが――」
「それよりヨハン見ろ。
彼の言葉を裏付けるように、遠くで地鳴りが響いた。ヒースの前方、建物の影から2体の
「でけぇぞミッチー! 俺は左のヤツを仕留める!」
「了解。僕は右をやる! ヒース!
「わあってらぁ!」
二人は地を蹴り、左右に散開する。
その会話が屋上にまで届き、聞き捨てならない言葉にヨハンは息を呑んだ。
「サイモン殿、
元々
「彼らは今、近隣諸国を巡りながら、
「けど生かしてどうするつもりでしょう?」
「人間に戻すらしい。その為に30日間、絶食させている」
ヨハンが驚きに声を張った。
「に、人間に戻れるんですか!? 足斬り落としても?」
「ああ。戻る時に失われた部位も修復される。半年ほど前、ブルタニーの護衛隊研究班が発表した。
「絶食だけで戻れると? しかしサイモン殿。そもそも、イントルーダーはどのようにして
「極秘ゆえ講習会でも触れられない部分だが――彼ら異世界人は彼らの世界へ繋がる『穴』から何らかのきっかけでやって来る。ところが、その穴は彼らにしか見えない」
ヨハンは絶句し、唾を飲み込む。屋上を吹き抜ける風がパタパタと白装束をはためかせた。
「彼らは穴を見つけると
当然だろう、といった風に2度大きく頷くヨハン。
「ところがだ。どういうわけか、また同じ穴を通って戻ってくる者が多いと聞く」
「なんと……で、ではその時に
「そうだ。異形化した者は、もはや人としての意識を持たず――ただの捕食者となる。欲望のままに、人間を襲う」
「なんと恐ろしい。彼ら、そんな者でも助けたいのですね」
「全くだ。放っておけばいいものを」
「人間に戻っても、イントルーダーのドナムで暴れられたら、たまったものじゃないですよね」
「それはないらしい。人間に戻るとドナムは完全に失われる。もうただの
ハンスとサイモンが話をしている間に、ヒースは突進してくる狼型の
「ち、近すぎます! あれでは喰い殺されます!」
しかもヒースの数メートル後方には負傷して動けない警備隊員たちがいる。ここで食い止めなければ――!
ヒースは足を踏みしめた。
瞬間、熱気がドッと周囲に広がる。
「
「
ゴオォォォォォォォォ――――ッ!
牙まで10メートル。
ヒースが力の限り
炎に包まれた
「ミッチー、そっち頼んだ!」
その叫びが耳へ届く前に、既にミツヤは2体目の
視線を球へ合わせたまま軽く助走をつけ、上空へ跳ぶ。
空中で左手を前に伸ばし、体を大きく
右手の中指の付け根あたりに
そのシルエットがヨハンの目線――およそ地上8メートルの高さに達した瞬間、ミツヤの背に「翼」が見えた気がした。
「なんと高いジャンプ……!」
反り返った身体のバネを利用し、
「食らえ!
バリバリッと空気を切り裂くような音と共に電光がスパークし、電撃が背に叩き込まれた
「サイモン殿、見ましたか!」
「フンッ……それでも、
サイモンの小さな呟きはヨハンの耳には届いていない。次なる脅威が目の前に展開されていたのだ。
「見て下さい! 3体目の
見ると、ミツヤのジャンプサーブに気を取られた一瞬の隙に、最後の1体が背後から飛び掛かってくる。巨大な
「ヒース、後ろ――! って、あ?」
ミツヤが叫びかけ、ふいに
ミツヤの視線は数百メートル先、3階建て建造物の屋上に向けられていた。そこには、黒いスーツに金髪の青年。腹ばいになってマスケット銃を構え、標的を狙っている。ミツヤはギリギリ肉眼でその姿を捉えていた。
「――距離、521メートル。風速2カンマ4、角度
あろうことか、弾道計算を暗算で行っていたのだ。
「サイモン殿! 誰かが狙撃しようと狙っています! しかし、あんな距離で命中できるはずが――!」
***《次回予告》***
ヒース:なぁミッチー、あのビルの上にさっきから白い服着た奴が2人いるの、気づいてたか?
ミツヤ:ああ、トンガリ帽子2人組だろ? 何者だろうな。 そいやジェシー、アイツもずっと後方のビルの上にいたぞ?
ジェシカ:あー、走るより早いんだって。
ヒース:ケッ! ヤツはいなくても問題ナシだ。じゃ予告いくぜ? 次回第8話。あれ、何だっけ?
ジェシカ:次回、第8話「そのスナイパー、難あり」。お楽しみにね!
ヒース:クソッ、またやられた!
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