できないことにも意味がある

べこたろ

できないことにも意味がある

 気づけばもう12月。暦の上では冬ですね。

 冬と聞いて私がまず思い浮かべるのは、編み物です。編み物好きな人は、マフラーとかセーターとか帽子とか、今まさに編まれている頃だと思います。

 ただ、私は編み物がからっきしダメなタイプでして。

 そうは言っても裁縫は昔から好きだし、興味が湧いたら手を出さずにはいられない性格なので、手芸やクラフト系は色々やってました。プラモデルを組み立てるのも好きです。

 ……が、編み物だけは、どう頑張っても仲良くなれないんですよね。そもそも編み方がよく理解できないというのもあります。

 学生時代、編み物の得意な友人がつきっきりでマフラー編むのを手伝ってくれたときは、なんとかなりました。でも一人になると、すぐ行き詰まっちゃって。

 同じ動作が延々と続くせいか、途中でゲシュタルト崩壊のような感覚にも陥ります。「これは何をしているところなんだ?」って、混乱しちゃうんですよね。


 そんな私の編み物苦手の原点は、幼少期にまで遡ります。

 当時、リリアン編みのキットが欲しくて親にねだったことがありまして。買ってもらってすぐ取りかかりましたが、何度やっても紐が編み上がらなかったんですよね。

 親は手芸全般が苦手な人だったので、聞いたところで当然、解決もできず……。

 結局、きらきらのラメ糸をただ眺めるだけで終わりました。

 ちなみに、大人になってからも懲りずに「今ならできそうな気がする……!」とリリアンに再挑戦しましたが、結果は玉砕。何度も編み直してよれよれになったラメ糸と、無言で見つめ合いました。

 本当に、どうやったらできるんでしょうね、あれ……。


 まあそんなこんなで、私に編み物の才能はないと思い知ったわけなんですが、「どうあがいても編み物ができない」という経験ができたのはとても良かったなと感じています。

 努力してもできないことは、本当にあるのだと。

 それを自覚してからは、どの分野においても人に対して「こんなの普通にできるでしょ」「努力が足りないせい」なんて、決めつける気持ちはすっかりなくなりました。

 そんな気づきを得られたので、編み物が苦手なままでも案外悪くはないもんだと、今では思っています。

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