19.勧め


「嬢ちゃん、大丈夫か。火傷せんかったかのう?」



 教会の下男であるヌ=カスマダはレイリーリャの指と顔を交互に見つめながら尋ねる。目を隠さんばかりの太い白髪眉を下げ心配しているようだ。

 当のレイリーリャは指先を熱い茶に浸けてしまい、患部である指に息を吹きかけている。



「ご心配ありがとうございます。大丈夫です……。」



 レイリーリャは愛想笑いを浮かべる。

 指先の痛み自体は大したことは無く、もう大丈夫だった。しかし、素焼きの碗を見ずに熱いお茶の中に自分の指を突っ込んでしまった自分の不注意さが、愚かに思え恥ずかしかった。

 羞恥心が溢れ出す心の方は、大丈夫では無かった。



「そうかいのぅ。女の子じゃかぁ、跡が残ったぃしたぁのこったりしたら、結婚すぅ時にぃ、困ぅじゃぉう。」



 ヌ=カスマダ老人の声は柔らかく、安心したように微笑む。



「結婚だなんて大げさですよぉ。まだそんな歳でもないし、相手なんていませんよ。」



 レイリーリャは手を左右に振りながら笑う。

 今はまだ15歳だが、その時が訪れたら結婚したいなとは思っている。だが具体的にどうやって相手を探し出し婚約するかについては、考え行動などしていなかった。



「いやいやいや。嬢ちゃんだったぁ、可愛いかぁ、そのうち相手も出来ぅのう。心配すぅことないのぅ。」



 ヌ=カスマダ老人はレイリーリャの顔を見つめる。



「そんなぁ、お世辞でもそう褒めてくれると嬉しいですよぉ。そんな風に言ってくれる人なんて、周りにはいませんから。」



 レイリーリャは愛想笑いを浮かべつつも、少し嬉しさと安心感が混じったような気持ちを感じた。自分自身から見て容姿は特に優れているとは思わないが、良いと他者から肯定的に認めてくれたからであった。



「なんとまぁ。嬢ちゃんのいぅ街の人は、みんな見ぅ目がないのぅ。」



 ヌ=カスマダ老人は後ろにのけ反って、誇張するように驚く身振りをする。



「そなぁ、ワシのひ孫さのトコへ嫁に来ぅか来るか?」



「はっ?……」



 レイリーリャは全く想定していなかった言葉を言われ呆然とする。



「……えっと、おじいさんのお孫さんは、何歳ですか?」



 装っていた愛想笑いが抜け落ち、思わず尋ねる。



「……ワシのひ孫か?何歳かのぅ……んーと、ジズは七歳だったかのぅ?」



 ヌ=カスマダ老人は目を左上に向けて思い出そうとする。



「その下のゾサンは……三歳下だったかぁ、…………四歳だ。」



「おじいさん、そんなに小さいのだったら、結婚はまだ先じゃないですかぁ。それに、その子とはまだ一回も会ってないのに、嫁に来いだなんて無理も有り過ぎですよ。」



 レイリーリャは真顔で返す。

 ヌ=カスマダ老人の話を冗談と思わず、真に受けてしまったのだった。



「そだぁ、早過ぎかぁ。断ぅたぁ断るとは、残念だのぅ。」



 ヌ=カスマダ老人は自分の膝を叩くと、苦笑いを浮かべた。



―――……せめて十三歳位なら、顔ぐらい見ても良いけどね……。



 レイリーリャはヌ=カスマダ老人の顔を眺めながら思う。



―――やっぱり、このおじいさんに似てるのかな。髪の毛や眉毛ぼーぼーで……。


 長い髪や眉によって顔を隠されたヌ=カスマダ老人似の真っ黒い少年の顔を想像する。



「ジズムは病気一つぅ無くぅ、しっかぃしとぅかぁしっかりしとるから、医者もちぃょうじゅつ士治療術師要ぁずだかぁいらずだから勧めたがのぅ。」



 そう言いながらヌ=カスマダ老人はレイリーリャが使っている碗に茶を注ぐ。碗の縁近くまで深緑色の峠竹脂茶で満たされる。



「仕返し等価、……医者も、ちょう、じゅつし、いぁず?」



 レイリーリャはヌ=カスマダ老人の発した訛りの有る言葉の意味が理解出来ず、思わず繰り返す。



―――仕返し等価?なら恩も恨みもきっちり返す性格ということ?



 繰り返しながら考える。



「……ああ、こっちのなまぃ訛りで聞きづぁいかぁづらいから、『ちぃょう、じゅつ、し、いぁ、ず』だぁよぉ。」



 ヌ=カスマダ老人は苦笑いを浮かべながら、ゆっくり繰り替えす。



「腸濡術士、イカず?」



 レイリーリャは眉間に皺を寄せ首をかしげた目が泳ぐ。



「Ci……yoU、JyuTsu、Shi、Ia、Zu。」



 ヌ=カスマダ老人は怒りもせず、柔らかい笑みを浮かべたままもう一度繰り返す。



「…………あぁ、治療術士、要らぁ ず、ですか。」



 レイリーリャはヌ=カスマダ老人が発した言葉が解り、失礼にならずに済んで安心感と解放感が混ざったような物を感じる。

 ヌ=カスマダ老人も、「んだ」とほっとしたように頷く。



「そういえば……、治療術士さんはどこにいらっしゃるんですか?」



 レイリーリャは治療術士という言葉に、ハイリアルが何か病気に罹っている事を思い出し尋ねた。



ちぃょうじゅつし治療術師か?……ちぃょうじゅつはウチの司祭が使えぅが、嬢ちゃん、若ぇのにどっかかぁだわぅい身体悪いのがぁ?」



 ヌ=カスマダ老人がレイリーリャの顔を見つめながら怪訝そうに尋ねる。



「いえいえ。わたしの身体はどこも悪くありませんよ。


「健康だけど、ダメなトコだらけですよぉ。」



 レイリーリャは片手を左右に振って否定すると、苦笑いを浮かべながら自嘲する。



「身体が悪いのはわたしの主人、ハイリアルさまです。ここに来る前に血を吐かれました。」



「血かぁ。そぇは大変だのぅ。すぐに治した方が良いのぅ。ウチの教会の司祭がちぃょうじゅつ治療術をいくつか使えぅが、どうじゃぉのぅ。」



 ヌ=カスマダ老人が眉間に皺を寄せ両腕を組んで困惑する。



「前に鋳物師のじじいのはぁの痛みを取ったがぁ、若ぇ男の吐血はどうじゃぉうなぁ。……ぶつ日二日酔いで吐く衛兵の若ぇのは治せたが、そぇとは違うしのう。……司祭に聞いてみないと解ぁないのう……。」



「そうなんですか。」



 レイリーリャはそう相槌を打つと、ヌ=カスマダ老人と二人でとりとめの無い話をし始めた。


 ネレイステセシア像の背後にある窓から陽の光に照らされ、床の上にネレイステセシア像の影が伸びていく。

 風が窓に当たり、窓ガラスが揺れる音がする。


 しばらくすると、礼拝堂の入口に取り付けられた引き戸が開かれる。ハイリアルを墓地に案内してきた司祭が入ってきた。司祭は口を尖らせ不満そうに他者を責めるような独り言を呟いていた。


 ヌ=カスマダ老人は司祭が入ってきた引き戸に顔を向ける。

 その顔はレイリーリャを見ている時の表情とは異なっていた。

 似たような事を何度も行っている、ありきたりの瑣事のような冷淡な目をしてその姿を眺めていた。



「司祭サマ、おつぇお連れの方はいぁっしゃぁないいらっしゃらないのですがどうさぇたのですか。」



 ヌ=カスマダ老人は椅子から立ち上がり低い声で尋ねる。内心軽蔑しているような声であった。



「独りにさせろなどと怒鳴られたから、こっちに戻ってきたわ。」



 司祭は内心の苛立ちを抑えつけず吐き捨てるように言った。ハイリアルと接した時の態度とは違い、宗務職らしくない振る舞いだった。


 レイリーリャは司祭の苛立つ態度を見て、今尋ねたら怒られそうだと思い戸惑う。



「ヌカスマダ、茶寄こせ。」



 司祭はヌ=カスマダ老人に急かすように催促した。そしてレイリーリャを一切気にする事なく、背を向けて自らの控え室に入ろうとする。


 ヌ=カスマダ老人は振り向きレイリーリャの様子を見た。



「司祭サマ、従者さんが尋ねたい事あぅそうです。」



 ヌ=カスマダ老人は司祭を見て伝えると、再び振り向きレイリーリャを柔らかい目で促すように見つめる。

 レイリーリャはヌ=カスマダ老人に突然振られ内心困惑する。



―――えっ、司祭サマ、こんなに機嫌悪そうなのに……。



 司祭は面倒臭くうんざりするような目をして、椅子に座っているレイリーリャを見下ろしている。


 レイリーリャは司祭が目を向けるのに気付くと、途惑いながら椅子から立ち上がる。



「……し、司祭サマ。……司祭様は治療術をする事が出来るのでしょうか。」



 司祭に怒られる事を内心怖れながら、おずおずと司祭を見つめる。



「ああ、決められた額の布施を出せば治療術を唱えるが。」



 司祭はレイリーリャに対して無関心なようで、突き放すように言う。



「治してもらうのはわたしではありません。ご主人のハイリアル様で、」



 耳にした司祭の目に力が入る。



「これより前の日に血を吐かれてしまいまして、治してもらいたいなぁと思いまして……。」



 司祭の顔に生気が宿る。



「……ハイリアル様が吐血されたのか。……ご本人がご希望されるのなら、治療術を唱える事は吝かではない。

 私の力なら、今すぐにでも唱えて治す事が可能だ。」



 司祭はレイリーリャより格上の姿勢を崩さず、勿体振るような厳かな口調で応える。



「それではよろしくお願いします。」



 レイリーリャは脱力するようにほっとして口許が緩む。

 垂れ下がっていた尻尾も上がる。

 ハイリアルの病を治せそうな事と、司祭に断られ怒られずに済んだ事からであった。



「うむ。解った。」



 司祭は重々しく同意すると振り返り、自らの控室に向かって歩き始めた。その顔には何か好機を見つけたように、口許に笑みを浮かべている。


 ヌ=カスマダ老人は今までの二人のやりとりを見つめていた。そうしながら、眉間に皺を寄せ口を曲げ困惑した顔をして、何か考えているようであった。


 そんな二人の態度を気付かずに、レイリーリャの尻尾は踊るように左右に揺れている。



「司祭サマがハイリアル様の身体を治してくれるようだし、これで大丈夫だよね。」



 レイリーリャは独り言のように呟く。満足感と安心感が混じったような想いに満たされている。


 そして再び椅子に座ると、テーブルの上に置かれた素焼きの碗を見つめる。



「今度は火傷なんてしないから。」



 問題を乗り越えたように少し上機嫌で片側の口許に笑みを浮かべながら、碗を取って口を付けた。

 碗の中に茶はほとんど残っていなかった。


 レイリーリャはそれを飲み干すとテーブルの上に置いた。

 口の中に拡がる独特の渋味も味わい深く感じる。


 ヌ=カスマダ老人は空になった碗にポットで茶を注ぐ。



「嬢ちゃん、ちょっと聞くがぁ、司祭サマに嬢ちゃんのご主人様のちぃょう治療をお願いしたのう。……そぇはご主人様かぁからの頼みがあったのかのう?」



 ヌ=カスマダ老人の声の調子は何か思い詰め沈んだように低かった。

 茶を注ぎ終わりポットの注ぎ口を上げる。

 顔を上げレイリーリャの顔を見つめる。その眉間は上がって皺を寄せ不安を語っていたが、語り終えて閉じた口には力が籠もり何らかの決心が在る事を語っていた。



「いえ、ありません。身体が治るのは良い事ですので頼みました。」



 レイリーリャは従者として主人の為になる正しく良い事をしたと自認し、内心誇らしく感じている。両耳がピンと立っている。



「そうか……。嬢ちゃんの独断だったかぁ……。司祭サマに聞く前に、嬢ちゃんに尋ねぃ尋ねるの忘ぇてしもうたのは、ワシの失敗じゃのぅ……。すまんのう……。」



 ヌ=カスマダ老人の話す声が沈む。話し終えると困窮し下唇を噛む。



「……何か問題があるのでしょうか?」



 レイリーリャは何故ヌ=カスマダ老人が悩むのか解らなかった。自分のした事に問題があるとは思えなかった。


 レイリーリャの主張する態度を見てヌ=カスマダ老人は、皺寄せた眉間を上げ困窮さと無念さが混じったような表情をしている。



「いやのう、余計なお世話で、聞いてもぁえん貰えんかもしぇないじゃぉうがしれないじゃろうがあぁかじめ予めご主人様のご意思を尋ねて、許可をもぁってかぁ貰ってから頼まないと不味い事になぅかもしぇんかぁなるかもしれんから、次かぁ気をつけないといかんのう……。」



 ヌ=カスマダ老人の言葉は力無かった。

 レイリーリャの態度は断固としてその言葉を受け入れないようだと捉えていたからであった。



「病気で苦しむのはハイリアル様だけではなく、誰にとっても嫌な事ですよね。


「……そうなると、身体が良くなり苦しみがなくなる事は、ハイリアル様にとっても良い事です。」



 レイリーリャはヌ=カスマダ老人を否定するように凝視する。



「わたしには、悪い事をしたなんて、思えません。」



 レイリーリャの行為に対してハイリアルも肯定するのは当然だと思い込んでいたので、マ=ダイスト老人がそれを否定する事を理解出来なかった。



「……確かにかぁだ身体良くなぅ良くなる事は良い事じゃが、そうは言ってものう……。



「…………嬢ちゃん、ワシみたいな爺の言う事だかぁ、話半分に聞いてくぇいよ。

 ご主人が戻ってきたぁ、すぐにこう伝えた方がええのう。『私の独だ「こんちゃー、ブコン屋ですけど、配達の品届けに来ました。」



 ヌ=カスマダ老人が伝える言葉は突然遮られた。

 礼拝堂の入口の扉が開かれ声を掛けられたのだ。

 それは腰に前掛けをかけた川獺族獣人の青年の呼び声だった。

 彼の足下には野菜や肉、飲み物の入った瓶など食材の入った木箱が置かれている。

 彼はブコン屋という食料品店の商人で、ここに配達で訪れたのだった。



「あっ、ブコン屋さんかぁ……。少々お待ちくださぇ。


「嬢ちゃん、話の途中で済まぬのう……。」



 ヌ=カスマダ老人はブコン屋の青年の声に応え立ち上がると、レイリーリャに顔を向け残念だか悲しいような表情をして謝った。


 レイリーリャはその表情を見る。

 怒りこそは感じなかったが、自分の考えを貫いたからとはいえ、ここまで悲しませてしまった事に対して申し訳ないような気持ちがした。

 それでも自分の考えに間違いがあったと思えないのは変わらないが。


 ヌ=カスマダ老人はブコン屋の青年が待つ玄関前まで行くと、商品の入った木箱の中を覗いた。



「今日、持ってきた注文の品はこぇで、代金は3大銅貨1角銅貨5まぅ銅貨丸銅貨だけど良いかいなー。」



 ブコン屋の青年がヌ=カスマダ老人に注文の品が書かれた配達伝票を渡す。

 ヌ=カスマダ老人は注文伝票と木箱の中の商品を頭を動かし覗き込んで見比べる。眉間の皺が深くなる。



「商品はええが、代金はこぇか……。思ったよりはかかったのぅ。」



「ええ。木タメェィゴゥが不作で値上げしてましてねー、スイマセンねー。」



 川ウソ獣人は愛想笑いを浮かべ、全然心の籠もっていないような平坦なトーンで謝る。



「……お金取って来ぅかぁ、少し待っててのぅ。」



 ヌ=カスマダ老人は屈んで商品の入った木箱を両手で抱える。そして「どっこいしょお」とかけ声を上げると同時に持ち上げた。

 木箱一杯に入った葉物野菜や瓶が、フルーデルで背が低いヌ=カスマダ老人の胸を隠す。



もぁう貰うまでは夜中過ぎでもここで待ってますかぁ、安心してくだせーよ。」



 川ウソ獣人は軽口を叩くと両口許を拡げ笑う。


 ヌ=カスマダ老人の抱える箱は、自分が抱えられているのではないかと見間違えそうになる程大きかった。そんな大きな箱を抱えたヌ=カスマダ老人がゆっくり歩くのがレイリーリャの目の前に入った。


 レイリーリャにはヌ=カスマダ老人が歩きにくそうしていると思え、「手伝いましょうか」と尋ねる。


 ヌ=カスマダ老人は嬉しげな微笑みを浮かべた顔をレイリーリャに向けると「心配無用じゃよ」と遠慮する。そして司祭がいる寺務室の反対側にある控室の中に入っていった。



「ん、おねーちゃん、何か買ってくかい?デサジスァォーンデサジスラローン山名物、しょっぱくない岩塩なんてどうだい?サービスすぅよ。」



 レイリーリャの存在に気付いたブコン屋青年が顔を向け軽く声をかける。



「……それ、ただの岩じゃないんですか?」



 レイリーリャは眉間に少し皺を寄せ右口許を開き怪訝な顔をする。



「ただの岩なワケねぇよ。おねーちゃん。安心してよー。ちゃんと砕いて粉にしてぅから、すぐに肉や魚にかけていょうぃ料理出来ぅし、しょっぱくないかぁ余計な塩味はつかないよー。」



 川ウソ獣人はレイリーリャの疑いを気にかける事なく平然と宣伝する。



「……それじゃあ、ただの砂じゃないですか……。」



 レイリーはブコン屋青年の宣伝の内容に白け批判する。



「ただの砂なぁなら名物になぁないならないって、おねーちゃん。

 この粉かけたいょうぃさぇた料理されたものを食べぅと、独特の噛み応えがあってたまぁないたまらないって声よく聞くよー。」



 川ウソ獣人はレイリーリャの批判に全く気にする事なく、両口角を上げていけしゃあしゃあとPRする。



「…………やっぱり、それ、ただの砂ですね。…………」



 レイリーリャは呆れ果てる。

 そこへヌ=カスマダ老人が財布を持って戻って来た。



「待たせたのう。代金じゃ。」



 ヌ=カスマダ老人は財布から取り出した金を取り出しブコン屋青年に渡した。

 ブコン屋青年は手渡された代金を俯き数え確認する。



「……三…一……五……ちょうど、確かに代金もぁい貰いました。毎度あぃ~。」



 ブコン屋青年は顔を上げヌ=カスマダ老人に礼を言う。



「あっそうそう、おねーちゃん。」



 川ウソ青年がレイリーリャに顔を向ける。



「さっき言った岩塩は塩だかぁ、撒いて厄ばぁい厄払いにも使えぅつかえるよー。どー?買うのおすすめよー?」



「いりませんよ。もう。」



 レイリーリャはブコン屋青年にしつこく感じうんざりする。



「とっとと帰って下さい。司祭サマに厄払いして貰いますよッ。」



「あんちゃん、嬢ちゃんにきぁわぇて嫌われてしまったのう。」



 ヌ=カスマダ老人はブコン屋青年を揶揄うように笑い出す。



「あーあ、残念だなぁ。『粉の天然水』もお勧めなんだけどなぁ。じゃー、帰ぃますわー。」



 川ウソ獣人はレイリーリャの方を向きバイバイと呑み友達のように軽く手を振ると、礼拝堂の出入り口から出て行った。


 レイリーリャにはこの青年から、仕事として来ているという感覚を微塵も感じられなかった。


 礼拝堂から帰って行く足音が続いた後、何か這って進む足音と共に車輪が道の上を転がる音がする。大蜥蜴か何かが引く荷馬車の音かもしれない。


 その音は段々離れ小さくなっていき、やがて音は消えてしまった。




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ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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……この作者、他者評価に対して淡々としているようでも、やっぱり褒められると喜んでいるようなんです。


作者おだてりゃ 木を登り

ますます ハナシ 創りまくる


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