第46話 地下にシンジュク、天に飛行船、海の底にはアンドロイド
次の日の朝。
俺は、隣で眠るデストランのおっぱいをなんとなく揉んでおもちゃにしながら、使用人が持ってきたミルクを一杯飲んだ。
……ああいや、ミルク(意味深)とかではなく、普通に牛乳だからね。普段から変態行為ばっかりやっているから、何やっても警戒されちゃって困るぜ。
と、次の瞬間、全裸のデストランが飛び起きて、枕元のショートソードを抜き、構えていた。
んん、刺客かな?
いや、違うな、こいつは……。
「お前、『カゲマル』か?まーた顔が違うから分からんかったぞ」
「へい、カゲマルでさあ」
太鼓腹に髭を生やした中年親父。
そんなのが、俺の部屋に、音もなく入り込んでいた。
こいつは、カゲマル。
『影の衆』と呼ばれる、金さえ払えば誰にでも雇われる……所謂「忍者」だ。
俺は金持ちなので、こいつら影の衆を金で雇い、拠点も与えて好き勝手やらせている。
用事がなくともこいつらを雇っておけば、他の奴らが使えない訳だからアドなんよね。
もちろん、仕事はさせてるけどさ。
「今日はなんの報告だ?定期報告の日じゃなかったはずだが」
「へえ、『世界樹の実』の件でさ」
世界樹の実……、ああ!
エルフのアレか。
「また、盗めたか?」
「へえ、こちらに」
カゲマルが抱えている風呂敷から……。
……七色に光る、小さめのバランスボールくらいデカい果物みたいなものが出てきた。
うん、確かに……、エルフ達が守る「世界樹」が、年に一度だけ実らせる果実、「世界樹の実」の一つだな!
「よくやった、カゲマル!褒美を出そうじゃないか!拠点の方に百万シルバー(三億円くらい)届けよう!」
「ははーっ!ありがたき幸せ!……しかし、よろしければイェンでいただきたいところです」
「うん?構わんが……、外の組織みたいに、『イェンなどという数字を書いた紙など受け付けない!』と言わねえのか?」
「へっへっへっ……、そうしたいところですがね。もうこのワルバッド辺境伯領では、イェン以外使えないんで。とにかく、イェンでいただきたく存じます」
「良いだろう、後ほど部下に届けさせる」
そう言って去っていくカゲマル。
俺は、使用人に、影の衆への褒美の件と、ダークエルフの首領であるクルエルを呼び出すように指示をして、服を着始めた……。
……その最中、デストランが俺に訊ねてくる。
「……ああ言った者達は、金で転ぶぞ?機密が多いこの領地に入り込まれて、大丈夫なのか?」
と……。
まあ、将軍としては当然の疑問だな。
着替え終わった俺は、デストランの赤黒い髪に櫛を通してやりつつ、説明をした。
「まず、この領地の機密は、一つ取られただけじゃ再現性がほぼないんだよね」
「……どういうことだ?」
「例えば、鉄道。デストランは鉄道をどう思う?」
「兵員の展開にあれほど便利なものはないな。オークの重装兵を一晩でこの領地のどこへでも動員できることは、素晴らしいとしか言いようがない」
「じゃあ、鉄道の作り方は分かるか?」
「それは分からんが……、鉄を叩けば作れるのではないのか?」
「ははは!無理無理!剣や鎧とは違うんだよ、あれは!」
「確かに、車輪が沢山あり、蒸気を吹く器官があり……、大変そうではあるが、そこまでなのか」
「ありゃあな、ドクター・サイエンという異次元の知識を持つ究極の天才と、その天才に無限の資材を与える金持ちの俺と、奴隷にした熟練工員が山ほどいて、三年かけてやっと作れたもんだ。他の領地じゃ絶対無理だね!具体的に言うと……」
俺は言葉を続ける。
「まず、前提として、ワルバッド辺境伯領や王領のように、この大陸でも屈指の財力があり、それを自由に扱えることが前提だ」
「その時点で無理では?」
「ああそうだよ。……で、次は、金属を作るための製鉄所から作らなきゃダメだ。機関車に使われている鉄は、頑丈な特別品でな?これを作るには、『高炉』と『転炉』という専用の炉が必要なんだよ。この炉も、作るにはバカみたいな金と人手が必要だ」
「ふむ……」
「次はその炉で作った頑丈な鉄の加工だ。爪一枚程度の誤差もなく、全く同じ部品を山ほど作る必要がある!そうなってくると、職人では無理だから、『旋盤』や『油圧プレス』、『ボーリング』に『アーク溶接』と機関車を作るための部品を作るための施設と道具が必要だ。無論これも山ほど要るな」
「職人にはできないのか、なるほど」
「それに、動かすためのエネルギーもだ。基本的には『コークス』を使う。石炭の加工物だな。このコークスを作るのにも専用の機材が必要だし、量が山ほど必要だ。そして石炭は、ワルバッド辺境伯領の未開拓領域や、新大陸で得られる。他の領地にはそう多くない」
「燃料……」
「諸々の問題をクリアしたとしても、今度は人がいる。精密な設計図を理解する学者の知性と、職人の技術を併せ持つ存在が、何百人も必要だ。工員達は、事故が起きれば火だるまになるか全身バラバラになって死ぬから、まず教育から始める必要があるかもなあ」
「……つまり、こう言うことか?『領地ごと盗まなくては、技術の断片を盗んでも無駄』だと」
「そう言うことだ。……さ、もういいぞ」
俺は最後に、デストランの髪に香油を塗ってやり、整えてやった。
お互いに服を着て……、さあ、仕事をやろうか。
そんな訳で、朝飯を食う。
焼いた白パン……否、トーストに、新大陸の豆を使ったエスプレッソ。そして、目玉焼きにソーセージ、ベーコンとサラダ、カレー風味のスープに、パイナップルとマンゴー。
一つ一つが、この世界の貴族でも中々手に入らない高級品である。
例え日本では安物のファンタだとしても、十円で恵まれないアフリカの子供達を救えると知りながら飲むならばそれはドンペリに匹敵する、というインターネット面白哲学を感じるな。
そうやって朝からしっかり食事。
すると……。
「旦那ぁ!世界樹の実の三つ目が届いたって!」
クルエルが来たな。
「ほら、そこにあるぞ」
「ヨシ!……ひひひ、お高く止まった白エルフ共め、何が世界樹だい!所詮はアタシらに操作される草花に過ぎないってのにさ!」
そう言って、武装した部下に世界樹の実を運ばせるクルエル。
「旦那、『世界樹クローン』の様子はバッチリだよ!毎月『世界樹の実』を複数生産していて、アンタの言うところの『ステータスアップアイテム』も量産できている!魔法少女部隊のガキ共に、アタシら幹部格は、これでかなり強くなった!」
「土地の枯渇は大丈夫か?」
「確かに、世界樹クローンの急速成長は、土地の養分を吸い尽くすがね……、アンタが作らせた『蒸気船』が、毎日バカみたいな量の魚肥を届けてくれるんでね。それだけじゃなく、新大陸から届く『グアノ』とかいう肥料と、処理された都市の下水を使った肥料、骨粉や発酵した都市の生ごみとなんでもあるよ!」
「その件だが、もっと肥料を増やせる目処が立ってな。他の作物もそうだが、更なる増産は可能か?」
「そりゃ、できるがね……。そんなに肥料があるのかい?」
「ああ、今後は空気から肥料を作れるようになるからな」
そう言って俺は飯を食い終えて、メイを呼び出した。
「メイ、ドクからの報告は?」
「はい、ご主人様。『ハーバー・ボッシュ法』の実用化をドクター・サイエンが報告なさっております」
よーし!
また世界を変えちゃうぞ!
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