第41話 支配されるという特権をだ!
結局、カナタは、望まずにグールに「なってしまった」存在。
強がって、グールの肉体と劔辺の技を合わせてより強い存在になる!などと言っているが、本音では苦しんでいたのだろう。
そこにつけ込み、「グールになった醜い自分」とやらを受け入れてやれば、驚くほどあっさりと惚れてきた。
そして、呪陣で敏感になった身体を丁寧に丁寧に蕩かしてやれば……、鉄砲玉の完成である。
もちろん、俺はカナタを愛しているぞ?
鉄砲玉とは言ったが、使い捨てる気は毛頭ない。
丁寧に丁寧に使い潰して、その魂の最後の一片までもを俺に捧げさせてやる。
俺の為に生きて、俺の為に死ねる。その栄誉を与えてやろうってんだよ。支配される特権ってやつだな。
これが愛というものだろ?
さて、モコターン共はこうして歓迎してやったが、街の便利さ豊かさを覚え込ませたので、もう俺からは逃げられない。
生活レベルってのは一度上げちまうと、下げるのは難しいもんだ。
モコターンの今までの生活がどんなもんか、分かるか?
普段は草原を歩き回って、飯と言ったら羊の肉か馬乳酒。貧弱な飯だ、旨くもないし、量も足りない。
かわいいかわいいテメェのガキが病気になっても、医者なんざいないし薬もない。だから、怪我をしても感染症で死んだりはあるあるだなあ。
生活魔法でカバーできるところはあるが、風呂もシャワーもないし、店もなければ、面白いこともねえ。
そんな「未開人」らしい生活から……、俺の街。
夜でも街灯が灯り、道はキレイな石畳。
飯は何を食っても旨く、草原では手に入らない脂っ気と塩辛さと、旨みに満ちた飯が、金さえ払えばいつでも簡単に手に入る。
夜中に子供が咳をしたら、夜間病院で咳止めを買えるし……、怪我をしたら神官を呼べる。やばそうなら入院して手術もしてもらえる。金を払えばな。
銭湯、ダイナー、おハイソなレストラン!銀行に電信局、郵便局、サルーンに売春宿!学校に教会、スーパーマーケットも!金さえあれば、そこらの田舎貴族なんて目じゃないくらいに、贅沢で便利な暮らしをできる!
……それを知ったこいつらはもう、ただの遊牧民には戻れないだろうな。
冬の間はこの街で過ごさせてくれ?ああ、もちろん!この街での滞在をじっくりと楽しんでくれ!
冬が過ぎたら、もう手遅れだろうからな。
……っと?
絹の服を着た、モコターンの女……、モーコギンが来たな。
どうやら、家族の前で婚礼の儀をやりたいようだ。
いいよいいよ、付き合ってやるよ。
精一杯におめかししたモーコギンを抱きしめてやり、婚礼の宴をして……。
モーコギンを娶ってやった。
こういう式典や儀式ってのは大事だ。
文化や先人に敬意を〜みたいな話ではなく、多くの人間に「事実」を分からせるって意味でな。
この婚礼の儀で、モーコギンは俺の妻となって、モコターンは俺の下についたこととなる。
それを、モコターンだけでなく、婚姻の儀を見に来た奴らや、取材を許した「新聞社」にも見せつけて……、公に宣言をしたのだ。
こうやって、事実でも嘘でも、「事実ですよ」と知らしめることは重要だ。
だって、バカにも分かりやすいだろ?
たくさんの人!大きな音!音楽!歓声!その真ん中で口付けをする男女!……そらもう、バカでも文盲でもなんでも、一発で「婚姻」だと分かる。
口で言うだけだとバカには伝わらんし、噂にもならんからな。
まあほら、宣伝みたいなもんよ。広告に単に文字だけ貼り付けるか?違うよな?ド派手な音楽とド派手な格好で分かりやすくアピールするよな?それだよ、つまりは。
敬意だなんてクソ喰らえってなもんだが、敬意を払っているように見せることは重要ってこったな。
はい、そんな訳で。
新たな手下であるモーコギンとカナタを、領都エイビルベルグに連れ帰った。
で……。
「ドク!聞いたぞ、できたんだってな?」
「ああ、君か。できているよ……、『蒸気船』がね!」
帰ってきたら、丸メガネの若白髪チビ女が、ダボダボの白衣の裾を引き摺りながら現れる。
ドクこと、ドクター・サイエンだ。
「どんなもんだ?」
「先日、テスト機が帰還してきた。『新大陸』までの移動時間は……、帆船では約半年のところ、蒸気船ならば二か月で済んだ。成功だよ、君ぃ!」
「おおー!そりゃ凄いな!なんだってそんなに早いんだ?」
「溶接ブロック工法で作られた総金属製の船であり、高圧ボイラーで動く蒸気船である他、船体に呪印を刻んで魔物避けをしたり、スクリュー付近には水魔法の呪印で出力の底上げをしたり、相当に工夫をしているからね」
「じゃあ相当金がかかっただろ」
「ところが、そうでもないんだ。もう既に、大型ドックを作ってあるから、量産の体制は整っているのさ。最初から僕が規格化した度量法を使っているのも、仕事が早い理由の一つだね。特に、輸送用コンテナの規格がもうできているから、貨物船の竣工をしているところだよ。年末には三隻できていると思う」
有能スギィ!!!!
何なんだよオメーはよ?もうこいつ一人でいいんじゃないかな……、などと思ったが、こいつにヒト、モノ、カネを集めているのは俺なんだよな。
ドクは生まれた村では、変なことばかり言う気狂いとして虐められていたそうで、結局世の中は適材適所なんだろうな。
いや、適材適所というか、それを「差配できる側」になることが全てと言ったところか。
ああ、やっぱり、この立場は捨てられねえや。
確かに、やさし〜主人公サマが主君になれば、平和で平等でみんなが幸せな「理想の国(笑)」を作ってくださるんだろう。
実際に、本編ではモノローグで、主人公は「名王として時代に名を残した……」みたいなことを書かれるから、統治者としての才能はちゃんとあるんじゃない?
でも、俺が嫌だと言っている。
みんな頑張る!みんな平等!ボケカスがアホ抜かすなクソッタレ。
俺が幸福!俺が金持ち!それで良いんだ、民なんざどうだって良い。
だがマジで制御を手放すと碌なことをしないのが民ってもんだ。
だから、俺が作ってやる。
資本主義の名の下に、争って競争して、着いてこれない奴を置いていく社会を!
バカガキがイジメしくさって、女共が遊ぶ金欲しさに身体売って、オヤジ共はギャンブルで身持を崩し……、金持ちが下民を見下せる社会を!
金さえあれば偉そうにできる、クソみたいな「現代社会」を……!
俺が作ってやるんだよ!
みんな平等、押し付けられたお仕着せの平和なんざクソ喰らえだ!
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