第40話 屍山血河(ちいかわ)

「いやー!天晴!まこと、天晴にござるよ!鬼……否、ザンガンデリンス殿!お主は、素晴らしい『いくさ人』にござる!拙者、感服したでござる!」


「ザンガンデリンスはカナタに敬意を表する。素晴らしい戦いだった」


その後の話をしよう。


ザンガンデリンスが放った、魔力爆ぜる一撃は、カナタの肉体を完全に破壊した。


が、不死身のカナタは頭だけが残っていたので、俺はそれを回収してやった。


また、俺が連れて来た神官部隊による回復魔法で、カナタに斬られたモコターン達と、ザンガンデリンスは治療されたな。


ザンガンデリンスは腕が取れていたが、そこそこのレベルの神官なら、切り離された腕を繋げるくらいはできる。


そして、ワルバッド辺境伯の教会は全て、金の力をジャブジャブ注いで腐らせてあるので、俺が呼びつけると高位神官が派遣されるのだ。


と言うかまあ、常識的に考えて、辺境伯当主に呼ばれたら高位神官くらいは即来て当然だからな。無論、一定の敬意を払う必要はあるが。


モコターンは何人か死んだが、こいつらもこいつらでさぱっとしていると言うか……、死生観が戦国だからな。


強い相手と戦って負けて、それで死んだなら仕方ない、と。


戦場での恨みは日常に持ち出さないのがモコターンだから、と。


なんか普通に許していたな。


かなり物分かりがいいな……、本当にバカで助かるよ。


で、首だけになったカナタだが……。


「おい、お前」


「む、何でござるか?」


「治療だが……」


「ああ、治癒の魔法は当たると苦しいのでおやめくだされ。まあ、処刑だと言うなら受け入れるでござるが」


ああ、はい。


この世界、アンデッドに回復魔法を与えるとダメージが入る感じのアレなのよね。


でも、アンデッド退散は、肉体のあるアンデッドには通用しないから、カナタは神官に即殺される訳でもないとか、なんだとか。


「どうすれば身体は治る?」


「そんなの、適当に肉を食っていれば治るでござるよ。人肉だと尚良しでござる」


ふむ……。


「俺に仕えるつもりとかないか?」


「む、お主は何者でござるか?」


「この辺の領主だ」


「ほう!お殿様でござったか!……ザンガンデリンス殿ほどの勇士を従えるお方故、さぞ良い主君なのでござろう。拙者でよろしければお仕えするでござるよ!ただ……」


「ただ?」


「拙者、屍鬼故。定期的に人肉を喰わねばならぬのでござる。それをお許しいただけるのならば……」


「適当に、罪人の肉とか、敵兵の肉とかで良いか?流石に何も悪いことしてない街の人々を食わせる訳にはいかんぞ」


「それはそれは!勿論にござるよ!では、定期的な人肉の提供をしてくださるのであれば、拙者はお仕えするでござる!よろしくお願いするでござるよ、主人殿!」


と、このように、スカウトに成功した。


モコターン達?


こんなヤバい女をスカウトした俺を、「流石プロだ、違うなあ……」みたいな尊敬の目で見てくるだけで何もなしだな。


俺はとりあえず、生首カナタにキスをして可愛がってやった。


「んむ?!ぇ、ええ……?正気にござるか……?」


「可愛いぞ、カナタ。仕えさせると言ったが、床にも呼ぶからな?」


「ま、まあ、主人殿がそれでよいのであれば構いませぬが……。拙者、人喰いの化け物にござるよ?」


「奇遇だな、俺も女をたくさん食ってんだわ」


ついでに、可愛い男の子も食ってる。同性愛は背徳パワーが強いので、淫蕩パワーがガンガン溜まって良い。


同性愛!人外セックス!乱交!これが、勝利の鍵だ。俺のディバイディングドライバーも光になっちゃうね♡


「……ふむ。もしも、人を食った後の拙者に口付けをしてくださるのであれば……、拙者は、主人殿の妾になりましょうぞ」


あ、ふーん。


こいつの底も知れたな。


俺がどんだけ女を食ってきたのか?って話でさ。


その女の言葉や表情、話を運び方から、何を求めているのかなんてすぐ分かる。


このイかれた女、カナタ。


女を捨てているように見えて、違う。自ら女を捨てたんじゃなく、「捨てざるを得なかった」と見たぜ。


そりゃそうだ、人喰いの化け物。人間のはらわたを口の端にぶら下げた猛獣に、口付けをする男なんてこの世にいるか?いないだろうよ、そりゃあもう。


恐らく、望まずに何らかの事件でグール化してしまったんだろうな。


カナタは、本当は女として男に抱かれたがっているが、自分は化け物だからそれは無理だ、と。


だから、化け物のフリをして、狂気に身を任せて生きていくのだ、と。


そう思っていたんだろう。


つまりこいつの言っていることはこうだ。


———「化け物でも、愛してくださいますか?」


ってなもんよ。


ああ、可愛いな。


安心しろ、俺は化け物が大好きだ。




その夜。


俺は、首だけのカナタと二人きりになった。


そしてそこには、強姦と殺人の罪で処刑予定となっている男が、縛られて転がっている。


この手の犯罪者は、いくらでもいるからな。


本来なら呪印を刻んでワクワク強制労働ランド送りとするところだが、この男は捕縛される際に頭を殴られて神経がおかしくなったらしく、労働力にはなりそうもない。


だから、肉として潰してしまおうと思ったのだ。


もちろん、同じような理由で、労働には適さない死刑予定者は何人かいる。


俺はそいつらを、剣ではなく包丁で生きたまま解体した。


そして、人間のもも肉を捌いてから、表面を軽く炙り、薄切りにし、醤油と生姜を添えて提供する。


人肉のたたきだ。


心臓を刻んだネギと酢橘……はないからレモンのソースにあえて、ネギ塩レモンに。


肋の骨は味噌で煮込む。


「ほう!主人殿は料理がお得意でござるか?」


「ああ、そうだ」


膝に抱えたカナタの頭に、これらの人肉料理を食わせていくと……。


「おお〜……、再生してきたでござるぅ〜!」


徐々に、肉が盛り上がり、肉体が再生していった……。


そして、人肉料理を鍋三つ分程平らげると。


「うん……、うん!よし!身体が戻ったでござるよ!」


と、手足の再生した、全裸のカナタがそこにいた。


俺は自分の上着をカナタに着せてやる。


「もう満腹か?」


「なんの、まだまだ!」


「じゃあ、一緒に食おうか」


「は……?屍鬼ではない主人殿が、人の肉を喰うのでござるか?」


「ああ」


俺は、目の前の人肉料理を食ってみせた。


……うん、普通に美味いな。


それに、淫蕩パワーが溜まっている。


この淫蕩パワーは、俺が勝手に「淫蕩パワー」と呼んでいるだけで、本来は邪教の呪術のため、邪悪な行為をやるとパワーが溜まるのだ。


その中でも「人肉を食べる」ようなド禁忌は、かなりのパワーがギュンと溜まる。かなりアドという感覚だな!


俺は炊いた米のお供に、人肉料理を次々と平らげる。


そんな俺を見るカナタは……。


「あっ……♡」


完全に、恋する乙女の顔だった。




そしてこの後、カナタは俺に食べられたとさ。


ちゃんちゃん。

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