第33話 いでよ、領主ーーーッ!そして願いを叶えたまえ!
「へへーっ!領主様!どうか俺の話を聞いてくだせえ!」
「人王、ワルバッドよ!我らモコターンの願いを聞き届けたまえ!」
お、バカが二匹いる。
夏だなあ。
あったかくなると、頭の中までポカポカのポカって感じの奴らが湧くね。俺は好きよ?
さて、与太話を聞いてやるかな……。
……二人とも真面目な話だった。
ワーウルフの男は、名をバウワンと言い、怪我で嗅覚が鈍り、片目が潰れていた。
鼻と目がダメになったワーウルフは、ワーウルフ失格だ。
狩りと共に生き、老いと共に死ぬのがワーウルフだから。
だがバウワンは、まだ死にたくないと。幼い娘達を残して死ぬ訳にはいかない、と。
せめても、狩り以外の仕事をして、娘達が嫁入りするまでは……と始めたことは、勉強、文字の読み書き。そして、カメラの取り扱いの学習。
最初、バウワンは、魔導列車で移動して、各地の写真を撮影し、その写真をエビデンスとして森や山でのモンスター氾濫などが起きないかを調べる、軍部の下っ端をやっていたらしい。
モンスターの氾濫は、ゲーム「アストレア・オデッセイ」の中でも度々起きた、ランダムのバッドイベント。
だが実際のところ、リアルとなったこの世界では、早い内から兆候を掴んでいれば簡単に対処できる楽なイベントという認識だ。逆に言えば、兆候を掴めないと大打撃なのだが。
それでも、少なくとも「森のモンスターの様子を写真に撮って調査員に調査させる」というのは、俺の指示ではなく、恐らくは軍部がやっている活動だと思われる。俺の指示なしでも工夫ができるようになってきているな、良い具合だ。
で……、そんなバウワンだが、何度もワルバッド領内の移動を繰り返すことで、「同じワルバッド領内でも、人々の持つ情報には大きな偏りがある」と学んだんだとか。
故に、バウワンは……、各地の情報や写真を集めて、その情報を出版することで金を得るという事業を考えついたらしく、それへの出資を俺に嘆願してきたのだ。
いやあ、いるんだよな、こういう野生の天才。
「そりゃあな、バウワン。『記者』と言うんだ、『新聞』って言うんだ」
「なんと!既にある事業でしたか?」
「いや、俺がやろうとしてまだやっていない仕事だ。だが……、うん。これを機に始めよう。バウワン!お前は新聞社の社長になってもらう!」
「しゃっ、社長?!長?!お、俺が?!う、うおおお!やったぜ!!!」
で、もう片方は……。
「モコターン、と言ったな?それは確か、東の馬賊の名だったはず。先先代が、相互不干渉と取り決めをしたと思うんだが……?」
俺は、小さな女の方に目を向けた。
子供のような体格の美少女に、だ。
ショートカットの黒髪に、くりくりとした大きなお目目。
服装はいかにもアジアの部族っぽい、飾り布と玉石、瑪瑙やら何やらを数珠つなぎにしたような服。
それが、小さな身体を大きく動かして、俺にたくさんアピールをしてくる……。
「モコターンは、このままでは滅んでしまう!お願いだ、助けてほしい!その為に、部族のお金と、僕自身を人王に捧げる!」
ふむ……。
持ってこられたのは、少々の銀貨。それと、金貨が少しと、宝石や琥珀、玉石など。
総額で十万シルバー……日本円だと一千万円から三千万円ってところか。
少ないな、部族を救うという公共事業ができる額ではない。
が……、この子。
モーコギン・ミニットと名乗った女の子。
この子は欲しいな、可愛いし。
身長は俺の半分くらい、ハーフリングというやつか?すんげえ可愛い、ヤりたい。
ロリにももちろん手を出しているが、合法ロリもいると楽しいだろうしなあ。
それに……、馬賊との協調。
もしも、まつろわぬ民である馬賊を味方に引き込めたら、それはあまりにもデカい。
ゲーム的には、ハーフリングの馬賊であるモコターン族は、終盤の難敵だ。
主人公が西へ西へと勢力を伸ばして、ある程度の支配圏を獲得した頃にいきなり東から現れて、馬賊らしい移動拠点と超機動力で、手薄な本拠地を荒らし回るという害悪存在。
怖いのはこいつら、ちゃんと準備をして向かい合っても、普通に強いのだ。騎馬の機動力と、ハーフリングの騎馬ボーナス(体重が少ないから馬の移動力が上がる)で、雑魚ユニットでも歩兵の三倍くらいは動き、更に「騎射」……騎馬の上から短弓で毒矢を射ってくる為、毒対策が必須。毒矢も、毒ダメージの他、混乱毒と魅了毒などの様々なタイプがある。
つまり、超機動で動き回り、状態異常をばら撒いてくる軍団だ。普通に害悪である。
で、リアルになったこの世界では……。
まあ、モンスターと同等以上の「脅威」だよね。
こんなに強い奴らが、何にもないけど交通の要所となっているところに居座る、と。
例え、ワルバッド辺境伯じゃなくても、こちらの国の側の人間が、こいつらの住む土地を開拓しようとするとしよう。
そうしたら、「遊牧民」であるこいつらは、攻められて困るような「畑」とか「城」とかを持たないから、一方的に攻めてこちらを殺しては、ピンチになったら草原の向こう側に即逃げする。カスの極みだ。
まあ、偉そうな白人共も、モンゴル人にボコボコにされてレイプされまくった過去があるんだッ……!ってなもんだからな。真っ当な騎士様共とはドクトリンがまるで違う、戦って勝てる相手ではない。
そして俺は、そんな害悪存在達をまとめ上げて、己の力にしている。ならば、モコターンも受け入れる方がいいだろう。
「モコターンが俺に従属するんなら、助けてやってもいいぞ」
「従属……」
「いや、モコターンの財産を寄越せとは言わない。ただ、街に来たモコターンは俺の定めた法を守り、法を破れば罰を受けなくてはならない、と。そういう話だ」
「……分かった。正直な話、モコターンは今年の冬を越せるかも分からない。従属して助かるのなら、それでいい」
「それと……」
「それと?」
「モーコギン、お前は俺の妻となってもらう。可愛いからな!」
「なんと……、人王の妻に?!従属する身で、王の妻になって良いのだろうか?とても寛容なんだね、ワルバッド王は!」
「俺は従う者には寛容だ、逆らう者は鉱山送りにするが」
「分かった。僕、モーコギン・ミニットは、人王様の妻となろう!部族も、あなたに従う!だからどうか、助けて!」
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