第23話 夢みたいな目標を掲げて革命しても〜と天パに置き論破されている
領内にオーク族が我が物顔で居座ることに対して、市民達は文句を言わなかった。
何故か?
答えは簡単。
オーク以外も領内に呼び込んだからだ。
森の蛮族、戦闘民族のオーク族。
その他にも、森の半妖精種、ゴブリン族。
オーク族の敵対種族にして狩猟民族のワーウルフ族。
洞窟に棲む魔法に長けた種族、ラミア族。
山の民にして不可触民、だが手先が器用な工芸種族である、サイクロプス族。
ダークエルフと敵対していた、異教徒にして沼地の民、リザードマン族……。
こう言った、所謂「魔族」を、俺は大々的に受け入れたのだった。
問題?まあ、問題はバッキバキに出てるよ。
今日もメイがげっっっそりした顔で報告書を持ってきている。
「ば……、馬鹿ご主人様……!恨みますよ、こんな、こんな……!」
「大変そうだな、メイ」
「だ、誰のせいだと思っていらっしゃるので?!」
「誰やろなあ……?」
俺はそう言いながら、隣のワーウルフの女狩人と、リザードマンの竜巫女といちゃつく。
「あなたですよ!!!!!」
「どうしたメイ?生理か?」
イライラしちゃってぇ、も〜!
「今のワルバッド領は、どこもかしこも問題だらけです!大きな問題は確かに、ご主人様の定めた『法律』に……、魔族向けの『掟』の公布によって起きてはいませんが、様々な問題が山ほど!」
「ほーん、問題ねえ……」
「オークが加減を間違って、その辺の人の首をへし折ったりとか……、ラミアが尻尾を踏まれたからと街中で魔法を放ったりだとか!もう、ひどい有様です!どうなさるのですか、これは!」
「逮捕した?」
「報告によりますと、既に逮捕されて罰を受けております。鞭打ちや財産没収が主でございますが、これもその……」
「優先度が低い罪は一旦スルーで良いぞ。今は人間に……、いや、亜人同士お互いに、お互いのことを知るべき時期だ。とにかく、『強姦』『窃盗』『殺人』に対しては厳しく罰する姿勢を見せて、ワルバッド辺境伯は最低限の治安維持をできるとアピールしておけ」
「ですがこれでは、ご主人様が領主へと就任なさる前のような有様でございます!」
「豚親父の時代より悪くなってないならセーフだろ。驚くべきことに、あの頃は今より酷かったぞ?市民共は豚親父の時代を耐えてきんだし、今回も問題ない。それに、色々と……、研究次第ではすぐに解決するはずだから、今は文官の皆さんに頑張ってもらう時期だなあ」
「その文官があまりに少ないのです!」
「そっか、頑張れ!」
「何が、頑張れですか?!!!このままではいずれ……!」
「その辺は大丈夫だ」
「どうしてそう言えるのです?!!!」
んー……。
「人間ってよ、弱いよな?」
「はい……?」
「素早さも腕力も、オークやワーウルフには敵わない。魔力や知能はダークエルフやラミアの半分以下。器用さだってゴブリンやサイクロプス以下だ。弱いよなあ?」
「……それが、どうかなさいましたか?」
「弱いのに、どうしてこんなに数が多い?亜人と違って、『国』なんてもんを作れた?どうしてだと思う?」
「それは……、ええと……」
「分からんか。じゃあ、教えてやる。……人間の一番優れたところは、『適応力』だからだ。人間は、どんな環境にも、どんな状態にも適応する」
「適応力……?」
「ああ、そうだ。人間は亜人と違って、『余地』が多い生き物だ。……例えばオークなんかは、俺がどんなに教えても、世代を経ても、戦闘民族である誇りを捨てられない。捨てるくらいなら死ぬ。だが、人間は違う。生きるためならなんでもする、理不尽を呑み込み、その制約の中で生きられるんだよ」
「それは……」
「昔のワルバッド領みたいな八割税を取られているような状態でも、人間の皆さん共はなんだかんだ逞しくしぶとく生きてきただろう?……『亜人が街にいるのが当たり前』ってなってしまえば、人間は受け入れるぞ。だからさっきから言っているが、今必要なのは時間だ。慣れるまでの時間……」
「そうなるまでに、我々の処理能力が限界を迎えます!」
「本当にそうか?」
「本当ですよ?!」
うーん……。
「メイ、お前は良い奴だ。真面目な奴だ。俺に仕えているとは思えないくらいに、キッチリとした人間だ……」
「は、はあ?」
「……それが良くない。お前、自分で処理できることは自分で処理してるだろ?そうじゃねえんだよ、他人に任せろ」
「で、ですが、その……」
あー、はいはい。
分かるよ、分かる分かる。
「文官共の多くは、不正をやって蓄財しているような連中だから、信用できないって?」
「ご存知だったのですか?!ならば何故?!」
いや……、そんなの決まってんじゃん。
「文官ができるような高等な人材は、その辺の畑から急に生えてきたりはしないんだよね。だから、多少の不正をやっていても、領地の為に働く高等人材は手放せないんだなぁ」
そう、これなんだよな。
不正をやる奴はクビだ!
おお、カッコいい!……で、そいつの代わりをお前がやってくれんのか?って話だからな。
ただでさえ、識字率すら低いこのナーロッパで、文官ができるレベルの人材は多くない。いや、多くないってか、殆ど居ないのだ。
あるあるだよなぁ、革命家みたいな国家運営がなんも分からんバカが政権を奪取したはいいが、文官とか官僚とかをキリステゴーメンしちまって、何もできなくなって結局は盛大に死ぬ!みたいな話。
国家を人体に例えるならば、王侯貴族ってのは頭ではあるんだが、都合が悪くなれば挿げ替えられる。で、手足が兵隊や平民であるならば、文官や官僚ってのは頭の命令を手足に伝える「神経」だ。それも、かなり複雑に絡み合っていて、手術は難しい。
こいつらを何にも考えずに適当に切っちまうと、どこもかしこも動かなくなる。
なんで、多少の不正は釘を刺して「やり過ぎるなよ」と警告しつつ、クビにはせずに使うしかないんだよね。
「し、しかし、不正をしているということは、民からの税を……」
「良いんだって、そんなのは。政治家や官僚には、多少の役得はあって然るべきだ。……まあ、ヘタクソな不正をやる馬鹿や、やり過ぎた奴は、随時俺が『声をかけて』やっているから、気にすんな」
「ふ、不正をしている、文官を、頼れと?」
「そうだよ。そうしなきゃ回んないでしょ、仕事」
現実でもそうだが、綺麗事では世の中回らんのよな。
大企業、ゼネコンとかの入札も、特定企業が独占して、それに対して「政府との癒着だ!」みたいな話がされることがあるが、実際のところ、政府と癒着できるような、政府と距離が近くて信頼できる会社じゃないとデカい工事を任せたくない……とか。
小さいことで言えば、社員に仕事で使う作業服とか工具とかを自弁させるのとかもそう。そりゃ雇われている側はムカつくだろうが、だからと言って経費で買い与えると、社用品として管理義務が発生するからね?服も道具もナンバー付けられて、年末の度に棚卸しとかさせられるのだるいでしょ。俺ら管理側もだるいから嫌なのよ、そういうの。
そうやって世の中は、綺麗事ではなく、現場の都合で回っている部分も大きいのだ。
「……失礼ながら、ご主人様。本当に頭がおかしいのですか?!不正をした存在を罰することなく、要職につけたままなど、あり得ません!」
「あ、罰は与えてあるぞ?不正が下手な奴、つまりは『無能』な奴には、罰金という形式で罰を与えた。『新刑罰』も予定している」
逆に、俺でも感心するような上手い不正をやった奴は昇進させた。仕事ができるので。
「で、ですが……!」
ぐずるメイ。
しょうがないにゃあ……。
「そんなに嫌なら……、クルエルのところに行ってこいよ。そろそろだ、って言ってたし」
「どうしてそこで、クルエル様が……?」
「まあまあ、行ってきな。休憩だと思ってさあ」
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