第22話 オルシニウムほどの都市を作れる種族は十分文明的だと思われるが……?

オーク族。


この世界のオーク族は、邪悪……ではないが、ド級の戦闘民族だ。


身体の色は部族にもよるが灰色から緑色辺りで、体格は大きく、耳は少し尖り、そして下顎の犬歯が牙のように伸びている。


種族の特性として、魔法は殆ど使えないし、知能もあまり高くはないが、勇猛果敢で頑丈かつ剛力を持つ。


そんなオーク族だが、こいつらももちろん、「悪」として差別されている。


何故か?


まあ普通に……、人間を襲って食うからである。


……けどこれ、文化的なもんなんだよね。


オーク族はバッキバキの戦闘民族で、殺した相手を食べて、その力を吸収する!みたいな信仰があるのだ。別に、進んで人を食う種族って訳じゃない。


オーク族に食われたくなかったら、戦わずに逃げればいいんだよ。或いは降参するとかな。みんな歯向かうからさあ……。


逆に、オーク族は戦って勝てば、大体の言うことは聞いてくれる。死ねって言えば死んでくれるぞ。


「……だから、オーク族最強の戦士と一騎討ちで勝って、オーク族全体を従える必要があったんですね」


「なにを……、やっているのですかっ?!!!この、バカご主人様ーーーっ!!!!」


メイにめちゃくちゃ怒られたゾ……。


まあそれはそう、ワンチャン死ぬ戦いだったからなあれは。


でも勝算はちゃんとあった。


「こんな時のために、屋敷全体に『淫蕩の呪陣』を張って、魔力を蓄えていたんだ。この魔力を使えば、一時的に俺はデストランをも超えるパワーを発揮することができるんだよ」


そう……、屋敷に張り巡らせた、呪陣。


これにより、俺は、普段はセックスで魔力を蓄えて、任意のタイミングで蓄えた魔力を解放できるようにしてある。


魔力の使い道は、魔法のリソースにしたりとかもできるのだが、今回は純粋に身体強化に使わせてもらった。


それで、数分の間だが仮面のライダーみたいな超パワーを発揮して、殴り合いでオーク族最強の戦士をぶっ飛ばしたのである。多分あの時はアルティメットフォームくらい強かったんじゃない?いや、モーフィングパワーは使えないけど。


で、最強の戦士を倒した以上、領内のオーク族全体は、俺に従うと宣言した。


「だからと言って、『魔族』を街に入れるのですか?!」


「おいおい、『魔族』は蔑称だぞ?いきなり差別かよ?ヒトッパリらしいな」


「ですが、話が通じる相手では!」


「違う違う、人間の価値観で説得しちゃダメだろ。相手の価値観で説得するんだよ」


相手と融和しようってのに、相手の価値観を認めないのはおかしいだろ?外国人に自国の言葉で話しかけたのに反応しなかったから言葉の通じない野蛮人だ!と断定するようなもんだぞそれは。


「はあ……?」


「ザンガンデリンス」


「うむ、何だ?」


「オーク族に、勝者である俺が命じたことは何か?言ってみてくれ」


「良いだろう!ザンガンデリンスは最強の戦士だが頭もいい!覚えているぞ!」


ザンガンデリンスは、俺が与えた「掟」を誦じる……。




「ひとつ!ジャーク族長の民は、ジャーク族長の子供に等しい!誇り高きオークは、子供を相手に殺し合いはしない!」


そう、オーク族は誇り高き戦闘民族。


ガキ、つまり自分で自分を守れない未熟な存在に対して勝負を挑むのは、無様なこと。だから、やらない。


そして、民は領主の子供に等しい、自立していない未熟な存在。屈強なオークさん達にはとても敵わない雑魚なので、勝負を挑まない。


「殺すな!」と命じるより、「戦う力のない雑魚を殺すと、戦士の名誉が傷つくぞ?」とアドバイスしてやった訳だ。


「ふたつ!ジャーク族長の民のものは、ジャーク族長のもの!持ち去ることは許されない!」


オーク族にとって、所有の概念は曖昧だ。


家畜でも野菜でも、そこにあるなら「拾った」と言って持ち去ってしまう。


なので、「この地の全ては族長のもの」とすることで、ある程度盗みは減ると思われる。


「みっつ!オーク族の所有物は、ジャーク族長に交換してもらえる!」


オーク族には金銭の概念がないだけで、物々交換の概念はある。


ザンガンデリンスのような頭のいいオークは金銭の概念を教えればすぐに理解してくれるのだが、底辺オークにはまだ難しい。


なので、領都含む都市には、オークとの物々交換所を設ける。


オーク族は、人間の持つ穀物や家畜、魔導具などが必要だが、それをわざわざ「略奪」というワンクッションを挟まなくとも、森の恵みやオーク族の鉄(オークは製鉄ができるのだ!文明的!)を渡すことで、抵抗なく得られるのは嬉しいらしい。


戦いは好きだが、ちょっとした食事を得る為にわざわざ結構強い兵隊達と殺し合うのは流石にキツいとのこと。


ここもまた、デストランの定期巡回兵や、デストランのニコニコ根性叩き直しガチ訓練が効いている。


うちの兵士はそこそこ強いし、数が多い。金の力で集めた兵士は、かなりの数だ。


やっぱほらさ、傭兵とか、村の若者とか、生活が保障されて頑張れば女もゲットできるかも?!となると、簡単に集まるよね。


戦国時代が如く、何にも支払わずにタダで人を集めようとするからダメなんだ。金をばら撒けば、人なんていくらでも、呼んでなくても集まる。


死馬の骨を買う……とは、ちょっと違うか?だが、ワルバッド辺境伯は従うのなら三下にも金を払うぞ!という噂は実に「使える」もんだ。こういう時代は、人を集めることすら中々難しいからな。


で……、その中から使えそうな奴を、デストランやその他軍の上の奴らに選別させれば、質の方もそれなりにはなる。


後俺、こう見えて、死んだ兵士の家族に慰問金を渡しているからね?


そういう信用の積み重ねを今までやってきたから、俺のために死ぬ鉄砲玉がどんどん増えているんだよ。


で……、そんな兵隊が、領内を警備している。


なので、最近はオーク族と殺し合いがよく起きていてな……。


何度も言うが、オークだって人間の皆さんが言うくらいの蛮族や魔物ではない。殺し合いをせずに簡単に糧が得られるなら、それに越したことはない……と考えられるくらいの頭はある種族。


戦いが誉れである種族でも、つまらん日常の略奪で死にたくはないのだ。


そういう訳で、俺も手下を殺されると困る。オークも戦士達が無為に死ぬと困る。なので和平しようぜ、と。


その際に俺は、相手のやり方を学び、相手のやり方で融和を目指した。


将来的にはこちらのやり方に従わせるにしても、まずは、こちらが「他の人間とは違うんですよ」と示す必要があった。


全くもって、馬鹿なんだよな、この世界の人間。ってか正義を名乗る奴ら?いや、政府か?


相手のことを調べもせずに、こちらのやり方を押し付けては、どうにもならんだろ。


オーク側からすれば、人間こそが「誉もなくいきなり襲いかかってくる蛮族」だからな。


だから俺は、オークのやり方に合わせて、オーク的な指示を出した。


現代の地球でよ、欧州とかが中東辺りから移民を呼んでは、中東人に暴れられて国民が苦しんでる!みたいな話あっただろ?


ありゃあ、呼び込んだ側の国が悪いんだよ。


安い労働力を〜とか言ってさ、呼んだ人間がどういう奴らで、どういうことをするのか?ってのを、まるで考えていない。自分達の常識が丸っと通用すると思ってんだ、馬鹿な話だよな。


相手が異教徒で蛮族で話が通じないってんなら、それ相応の使い方をこちらが考えるべきなんだよ。移民よりも「文明的」な人間を自称するんならな。


「以上の三つが、ジャーク族長からの掟だ!より詳しい掟は、今後新たに設けられる!」


ザンガンデリンスはそう言った。


全員が微妙な顔をしているが……。


「じゃあ今後は街にオークが入ってくるから。よろしくな」


俺はそう言って、ザンガンデリンスの腰を抱いたまま、寝室へと向かった……。




あ?


いや、ザンガンデリンスはこう見えて女だぞ。


全身筋肉バキバキの好青年っぽい見た目だが、女だ。ちゃんとおっぱいあるだろ、よく見ろ。


だから抱く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る