第21話 許してください、何でもしまむら!

そうしたら、まあ。


予想通り、スターライト子爵はこう宣った。


なんでもするから、娘だけは!と。


でもさぁ、これっておかしくねえ?


俺はさぁ、クルエルを筆頭に、ダークエルフの愛人がいて、ダークエルフの呪術隊を指揮していて、ダークエルフのドルイド達を労働させてる訳じゃん。


なんなら、俺のガキを孕んでいるダークエルフの女だって何人かいるんだぞ?


その、俺の愛した、俺の使っている、ダークエルフを。


こいつは、問答無用で殺すとほざきやがった。


なのに、自分の娘は殺さないでくだちゃーい!って?


通るか、んなもん。


他人にやるのはよくて、自分がやられるのは御免被るって?ノーカン!ノーカン!って?


いや確かにそりゃあ、基本的にカスである人間という愚かなカス生物としては当然の思考だが……、論理的に考えると通らんのよ、そんなもんは。


おかしいだろ、なんで俺はダメなんだ?やり返しちゃダメなのか?


相手がガキだからか?正義だからか?美しいからか?


俺は、ダークエルフの愛人と、兵士と、民を殺されそうになったのに?相手はそのつもりだったのに?


報復は何も生まない!みたいな話をするのか?そんなん、追い詰められた側が言ってもな。殺しに来た側が「他人と争うのはキリがなくムナしい行為だ」などと言い始めてもそりゃあ、「てめーの都合だけしゃべくってんじゃねぇーぞこのタコがッ!」ってなるよ。


「……そういう訳だから、あんたの娘は犯して殺すことにした。先にあの世で待っているといい、家族と感動の再会ができるからさ」


「やめろ!やめろーーー!!!」


んー……。


「……そんなに嫌か?そうだな、それなら、民衆に向けてこう言え。そうしたら、お前の娘も、『命だけは』助けてやるよ」




———「私、スターライト子爵は、領地が貧しく、略奪をするためにワルバッド辺境伯領を襲いました」とな。




それからは、まあ。


街の噂になったよね。


「スターライト子爵は、ダークエルフ討伐と言いながら、豊かなワルバッド辺境伯領を襲いにきたのだ」、と。


「若くして領主になり、すぐさまに領地を富ませたワルバッド辺境伯に嫉妬したのだ」、と。


何せ、本人が処刑台に晒されて拷問されながら、そう答えたのだから。


やはりアレだな、万物において言えることだが……。


実際、本質としてどうなのか?ではなく……、愚かな民衆達が「どう見るか?」なんだよ。


何でもそうだ。


この街にいる間諜、裏社会の奴ら、民衆、色々な人々の前で……、スターライト子爵は、拷問に耐えかねて己の罪の告白をした!


事実なんて誰も分からんし、分かった奴がいたとしても、そんなのは大衆に飲み込まれる程度のごく少数。


愚民共がどう見たか?というと……、俺が正義で、スターライト子爵が悪だった、ということだ。


いやぁ、バカに限って、「俺は自分の目で見たものしか信じないぜ!」みたいな態度だから本当に笑えるよね。各国のテレビがバカ向けにできているのと一緒で、切り取り捏造でそれっぽいシーンをこうやって見せてやれば、愚民からの支持率もグーンとアップ!という訳よ。どうでもいいけどコズミックイラの水陸両用機のデザインってキモいよな。




さて……、突発的な襲撃を捌いた俺だが、これはプラスに働いた。


若く、代替わりしたばかりだから、与しやすいだろう!……などと思っていたバカ共が、減ったからだ。


実際、ちょこちょこあったんだよね。他の領地からの使者とかさ。明らかに舐めている態度の奴も少なくなかったよ?


でもそこで、突っかかってきた敵を捕らえて処刑した!ってのは、俺の威厳ポイントにたくさんの加点がされ、舐めた奴とのエンカウント率が減った。


禍転じて福となす、ってなもんだ。まあ俺が禍そのものみたいな説はあるがそれはいいとして。


逆侵攻をかけるにも、今はまだ早いからな〜。戦力が足りん。


デストランの鍛えた精鋭は減らしたくないし、雑兵だって畑からとれる訳じゃない。


とりあえずは、敵の大将首を獲ったのでよしとしよう。……貴族的にもかなり褒められることだからな?戦国武将で言えば、攻め入ってきた国の総大将を戦場で返り討ちにした訳だから、どんな貴族も一目置くよ。


一目置かれる、つまり、ビビられた、と。そうなってくると、軽々しく攻めてくる奴は減るはずだ。


というか基本的に武力での殺し合いとか儲からないからやりたくないです……。


ああでも、その辺を言えば今回は、スターライト子爵軍は当主が捕縛という最悪の負け方をしてくれたからな。


爆薬を派手にぶっ放したとは言え、兵士の生き残りは実は結構居てさあ。ほら、この世界の人間って頑丈だから……。


そいつら全員に、鉱山とか新大陸の砂糖プランテーションとか蟹工船とかの素晴らしい就職先を見つけてあげたので、今後そいつらが稼いでくれる利益を考えるとまあまあプラスなんだよな。


そこは唯一の良かったポイントだね。


「そして、戦争が終われば、みんな大好き内政フェイズだ……。メイ、報告を」


「はい、ご主人様。……今回の戦争ですが、正規兵以外の死者は一千人程度、正規兵の死者は五十名程度となっており、兵士の運用は理論上問題ないとデストラン将軍からも通達がありました」


「ほう、他は?」


「内政面におきましては、村一つが先の戦争による人口不足で経営難に陥っているのですが……、その村をダークエルフに与えるとのことでしたので、そこはとりあえずの解決となりました」


「そうだな。ダークエルフは今回の戦いで頑張ってくれたので、それに報いるために……ってな名目で村一つを与えたな。お国を守る為に血を流して戦った!ってのは、外国人部隊に永住権が付与されるのに値する働きだよ」


「その他、農業等については、未だ試行錯誤中でございます。農業は時間がかかるとか……。ですが、あくまでも現時点での報告によると、『灌漑』と『農薬』、そして『品種改良』というものは既に動き出しており、高い収穫高が見込めると、ダークエルフドルイド部や農村からの報告がありました」


「結構。農業は全ての基幹となる産業だ。バッチリ決めてもらわなきゃな。ノーミン共も、逆らったら即座にチクられて兵隊に殴られるって分かったからか、聞き分けがよくなってきたな!」


「はい……、確かに、治安は良くなりました。新設したダークエルフの呪術師部隊と、今年度の利益を使って新たに雇用した兵士部隊により、治安維持の為に巡回させている兵の数は、前年度の倍以上となっております。故に、盗賊の類やモンスターはもちろん、街の中での喧嘩やスリなども減少傾向にあり、平民達は従順になりつつあります」


「そういや、ダークエルフだが、どんな感じだ?問題とかは?」


「問題はもちろんございますが、大きな問題には発展しておりません。……ダークエルフの呪術の濫用につきましては、ご主人様が法律によって規制をし、違反したダークエルフには容赦なく刑罰を与えますので。今までの積み重ねから、『布いた法を破る存在は許さない領主』と思われているらしく……」


「なるほど。ダークエルフであっても、法に背けば領主が必ず罰するから、隔意はあれども致命的な問題にはなっていない、と」


「しかし、ダークエルフは酒場から入店を断られてしまったり、いきなり侮辱されたりなど、問題はいくつもありますが?」


「それは知らん。だが、治安維持担当の兵士の前でそれをやれば、逮捕して罰金なり鞭打ちなりの罰を与えると公布している。平民の融和とかは知らんが、少なくとも俺は『平等』にやっている」


「ですが、ダークエルフを民とするのならば、ダークエルフは立場が弱過ぎます。数も少なく、縁故も少ないのですから」


「ああ、それについては大丈夫だ」


「はい?」


「これからどんどん、この街には異種族が増えるからな。紹介しよう、こちらオーク族最強の戦士、ザンガンデリンスさんだ」




「私の名前はザンガンデリンス!オーク族最強の戦士!」




「うあぁ……?!」


あ、メイが倒れた。

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