第20話 火かきボルグは最強武器

さて、俺は早速、裸にひん剥いて手錠をかけたスターライト子爵を、処刑台に縛り付けて公開処刑を始めた。お前を芸術品にしてやるよ!


晒し者処刑は良い、「見せしめにして俺の権威アップ」、「市民のガス抜き」、そして「相手陣営の萎縮」をも望めるからな。相手が、いきなり村を略奪しに来たワルモノだと特にポイント高いぜ!文句言われねえからな!


俺は早速、焼けた火かき棒を片手にニコニコ笑顔で処刑台の前に立った。


「諸君!こちらは、このワルバッド辺境伯領に愚かにも攻め入った、悪逆貴族スターライト子爵……とおまけ二匹だ!」


「ち、違う!私は悪などでは!」


何言ったって無駄無駄。


チンポ丸出しのおっさんの抗弁なんて、バカな市民共が聞くわきゃねーだろ?


愚民の皆さんの何が愚かって、言葉の内容ではなく、誰が言っているかで判断するところよ。


まっ、どこの世界もそんなもんだ。


日本だってどこだって、選挙の時にちゃんと政党の公式ホームページを見て、政策を吟味してから投票している人なんて、どれだけ居る?


居たとして、そいつら「模範的な賢い市民」は少数派だろうなあ。大多数のバカの意見に、多数決の原理の名の下に打ちのめされて終わりだ。


大半の愚民の皆さんは、「政治家が若くてハンサムだから」とか、「与党を倒したいから」とか、「なんとなく聞こえのいいことを言っていたから」とか、そんな程度のクソみたいな思考能力で投票なさる。


この世界も同じだ。


スターライト子爵がどれほど正しいことを言ったとしても、無様に晒し者にされている状態では、誰もその言葉に耳を傾けない。


それどころか、むしろ、積極的に侮辱して見下すぞ。加害行為、イジメってのは、猿でも行う知的でポピュラーな最高の娯楽だからなぁ?


「領主様に逆らいやがって!」


「ママー、あのおじさん、悪者ー?」


「うちの亭主が戦争で怪我しちまったじゃないか!死んで詫びなっ!」


「へへへ、貴族の処刑だ!」


「いつも偉そうにしている貴族が死ぬなんて、気分いいなあ!」


「あははー!ちんちん丸出しだー!」


「ママ見て!ちんちん!」


「こらっ!おじさんのちんちんなんて見ちゃいけません!」


うーん、クズみたいな愚民の皆さんの温かい声援!胸が熱くなるな!


愚民共はご覧の通り、こっちの味方だ。


「ワルバッド辺境伯領みたいな悪者の支配する街だから、市民も悪い奴らなんじゃないの?」みたいな邪推はやめてくれや。マジでシンプルにこの愚民共がバカでカスでクソなだけ。


いやまあ、確かに俺は、どちらかと言えば圧政、キリキリと愚民共を締め上げている。


だが、ちゃんと生かさず殺さずのラインは見極めているし、締め上げた分だけ還元もしてやっている。そもそも、富の絶対量を増やしているから、税率を増やしても手取りそのものは前より増えているんじゃないか?


具体的に言えば……、新産業である蒸留酒作りでは、その一部を市民に与えている。娯楽が少ない世界だと、酒ってのはかなり喜ばれるもんだ。


ドクの技術で作られた水汲みポンプの設置は全主婦が感謝したし、灌漑農法で収穫量が増えて、公共事業で治水やため池を作り、市民の財布も分厚くなった。


また、市民の引き締めの意味もあるが、定期的に兵士を巡回させたことは、治安向上に繋がったし……。


工員や工事員に、流民でもなんでもたくさんの人々を雇ってやっている。しかもこれ、他所の貴族みたいにタダ働きではなく、賃金を払ってのことだ。いやまあ、日本の最低賃金以下なんですけれども。


こんな感じなんで、先代のマジで終わっている状態からの落差もあり、今の市民共は、「アレ?ひょっとして、新領主って割といい感じなのでは?」という話になってきている……と、各地に放ったスパイから報告が上がっている。


結局、市民共は支配者が誰か?どんな血統か?正義か悪か?……なんてのは気にしてなくって、自分の生活さえ良ければそれでいいんだよな。


自分が奪われず、できることなら豊かになればそれでいい、と。それが無理なら、他所から奪ってでも生きていきたい、と。そう思ってんだよ、みんな。


「さあさあ!スターライト子爵の最後の話を、皆で聞いてやろうじゃないか!どんな命乞いをするのかなー?!」


「み、皆、聞いてくれ!ワルバッド辺境伯は悪なんだっ!!!ダークエルフに味方していて……、ダークエルフは死霊術を使って人々を惑わせるんだ!こんな奴の言うことを聞いちゃいけない!!!」


おーおー、この後に及んで、「正義」か?


良いねぇ、見ている分には愉快だよ。


ところがぎっちょん!


「うるせー!」


「悪がなんだよ?!正義だと飯が食えんのか?!」


「ダークエルフが居なかったら税が安くなるのかよ?!」


市民共は石を投げてくる有様だぁ、残念だね!


俺は、火かき棒でスターライト子爵の胸を焼き、言った。


「ご覧の通りだ、子爵閣下!市民の皆さんは正義になんぞ興味はないとさ!」


「ぐあああっ……!!!よ、よく考えろ!今戦わなくては、将来は暗いんだぞ!ダークエルフは、いつか必ず、我々人類の敵になる!!!」


必死の訴えだ。


だが残念ながら……。


「今良くなかったら意味ないだろ!」


「ダークエルフの死霊術を使った農法は、気味が悪いけど安いんだよ!」


「将来を考えるなんて暇なんだな?俺達は今困っているのによ〜!」


愚民にそんな話は通じない。


マフティーの崇高な革命の意思は、現実世界で目の前の仕事をこなすことで精一杯の一般市民には届かない……みたいなアレだな!


こいつら愚民の殆どは、将来性がないから、将来について考えることがない。


だから、「将来的にこうなるぞ!」という警告は通じず、実際に困ってから「なんで何も言わなかった!」とキレてくる……、そんな感じのカスばかりなのだ。


でもしょうがねえよな?無知で無学で、目指すべきロールモデルもなく、親から社会から人生の行く道を強制され、そもそも学ぶ気もなく、無能で怠惰で!ゴミクズなんだもんなあ!


だからやっぱり、俺は毎回言っているが、こんなクソ共は「民として手を取り合って……」みたいな綺麗事を言って、「人間」を相手にしているなどと思うことなく、そういうタイプの「家畜」の一種だと割り切り、上手く「制御」した方がいいんだよ。


人間に生まれただけじゃ「人間」にはなれないってこったな。学問のすゝめとか読んだ方がいいぞ。


もちろん、いつまでもこのままでは市場が育たないからな。いつかは変えていきたい所存だ。そんな、市民が学をつけると反乱する!みたいな、大日本帝国の元老みたいなことを言っていたら、儲からないのだ。


「そ、そんな……!」


何にせよ……、市民様の「本音」を知って、スターライト子爵は絶望した。


そこですかさず俺は、焼けた火かき棒を何度も押し付けて、痛めつける……。


「ぐあっ!ぐああああああっ!!!」


ダメージを受け、衰弱していくスターライト子爵……。皮膚が爛れてべろんべろ〜んっと。


あー、かわいそ。


ん……、横からメイが来たな。なんだって?


……ふむ、ふむふむ。ふむ!そりゃいいな!


俺は、スターライト子爵の耳元に顔を寄せて、一言。




「お前の娘を捕らえたぞ、スターライト子爵。銀髪の、可愛らしい娘だそうだなァ……?」

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