第16話 命令は唯ひとつ
はい、そんな訳で。
『悪』の侵略者である、スターライト子爵を『やっつける』ことになった。
いやぁ、まさかなあ?
ダークエルフ云々と言いながら軍を引き連れて領内に入り込んだと思ったら、いきなり奇襲を仕掛けてくるなんて!
誇りもクソもあったもんじゃねえなあ?貴族の風上にも置けないよ〜!
「……なので、ぶち殺します♡」
「……分かりました。あちら側の使者はどうなさいますか?」
「使者?使者は無事に帰してやれ。何故なら、俺達は『正義』の軍だからな!『悪』の侵略者を倒す『正義』の軍が、使者を殺すようなルール違反はしちゃダメだ!」
「ルール違反、ですか……。どの口が……?」
「メイ〜?知らんのか?ルールや制度ってのは頑なに守る奴の味方じゃない。適切にハックできる奴の味方だゾ!」
あ、これマジな。
地球でも同じだが、山ほどある法律や制度を、自分が楽できる部分だけピックアップして上手く使うのが一番いい。
その気になれば、ろくに働かなくても楽しく暮らせるライフハックなんていくらでも思い浮かぶぞ俺は。具体的には言わんが、生活保護以外にも国から金をふんだくる方法なんていくらでもある。貧困ビジネスなんざアホでもできちゃうんだよな〜!利率が低いから俺はやらんけど。
でもそういう制度って、自分で調べて、自分で申請しないと、ビタ一文たりとて貰えないからな。
だから、自分で調べて申請できる奴の味方なのだ、あらゆる制度ってのは。
「よォし、じゃあ正義の大将軍!デストラン!」
「はっ!」
「いつも通り、お前の完璧な戦術には文句をつけない!だが、領主として戦略について一つ指示を出す。……『一人も逃さず殺せ!』と、『可能な限り捕えろ』だ!」
「二つある上に矛盾しているが……、了解した、主人よ。一兵たりとも逃さずに処理しよう。もちろん、極力逮捕を心掛けるが、基本的には殺すぞ」
「ああ、そうしてくれ。最重要なのは、お前と兵の命だ。無理に逮捕しようとしてこちらの死人を増やすようなことはあってはならない。なあに安心しろ、手足が片方なくても、人間は働けるからな!相手を殺さなきゃどれだけ怪我をさせてもいいぞ!」
曲がりなりにも兵隊をできる若い男を殺すのは、流石に命がも"ったいだい!案件だ。フェミニズムとかいう欺瞞を好む人々には申し訳ないのだが、死ぬまでキッツイ肉体労働をやらせるんなら男の方が使える。
女の奴隷ってあんま価値ないのよね〜。そりゃ穴ボコに価値はあるんだろうが、穴ボコにチンチン突っ込んでも腹は膨れない。食うものにも困る時代じゃ、「性奴隷」みたいな制度もないのよ。(ドスケベロリ奴隷シルヴィちゃんがデリバリーされてくるみたいな展開は)ないです。
「ああ、分かった。すぐに出撃する」
「おう……。あ、クルエルはもう出撃しているから、連携してくれ。それと、ドク!」
「分かった……。将軍、こちらが『無線機』だ。使ってくれたまえ」
「おお、これがか……。伝令兵に訓練は済ませているらしいな?伝令なしで瞬時に情報交換ができるなど、夢のようなマジックアイテムだ」
「科学の産物だがね」
「ふむ?まあ、その辺はどうでもいい、使えるのならばなんでもな。よし、出るぞ!」
さて……。
「じゃあ、俺達は仕事だ。メイ!『あの件』は?」
「はい、『あの件』は、順調でございます」
「ん、今回の戦争で皆大きく動くから、今お前も……」
「もちろんです、ご主人様。ただいま、メイド隊の方にも指示を出しております」
「良し。……ドクはどうだ?」
「ああ……、僕の方は順調だよ。汽車だが、最初は難しいと思っていたんだが、魔法使いを動員すれば短縮できる部分が多い。あとは耐久実験と理論の実践になるから、もうしばらくはかかるが……、予定より進捗は良いねえ」
「そうか……、よくやったな」
俺は、ドクの頭を撫でた。うーん、ベタつく髪。キューティクルが死んでる。
「……僕の精神年齢の方は、もう六十代なんだがね」
「ん?嫌なのか?幾つになっても、美しい異性とのスキンシップと性愛は幸福だろうに」
「ふうん?僕のようなおばさんにも、君は手を出そうとしてくる訳だ」
「そう自分を卑下するなよ、ドク。俺はお前のことが好きだぞ?ああ、前世で忘れられない人でも居たか?それなら遠慮してやるが」
「いいや。前世の僕はナードだからとクラスメイトから虐められていて、ボーイフレンドどころか友達の一人も居なかったさ。君が僕のボーイフレンドになってくれるのかな?可愛い少年君?……いや、そうか、君も前世分で同い年くらいなのか?」
「そうだな」
「それなら……、前世と同じくらいの年頃で、価値観を共有できる仲だ。親密になりたいと……、うん、僕も、君と仲良くなりたいと思うよ」
「おっ、いいねえ!」
「と言うより、この世界の土人相手に恋愛感情とか抱けないからね!必然的に、そういった関係になるなら、相手は君ということになる」
「土人は草」
「いや本当にね!村人共は、hillbilly(田舎者)どころかbarbaroi(野蛮人)だったからね!!!」
まあそうね。
いかにこの世界がファンタジーゲームだとしても、田舎者は汚い。
日本の何が凄いかって、みんなが文字を読める!とか、算数ができる!とか、そういうのじゃなくって、もっと根本的に「教育を受けている」ところなんだよね。
例えば、「人のものを盗んではいけません!」とか、「人を殴ってはいけません!」とか、そのことを大体みんなが知っているというところ。……これはそのレベルの話だ。
日本人なら、「そんなの、法律以前の話じゃん?」と言うかもしれんが……、中世、いや、外国とかもそうだが、治安がクソなところではこの「そのレベルの話」すらできていないからな……。
そんなんもうさ、文字が読めるとか「お勉強」の話ではなく、「人として当たり前の話」じゃん?それができてないのよ、この世界の人々は。
どこの国のどこの人種とは明言しないが、今もそういう奴らはいるよな?窃盗とか暴行とか電車内で音楽流して踊るとかの犯罪とか迷惑行為をして、それを動画サイトにアップロードしているような奴らだ。
そのさ、窃盗だのの犯罪の様子を動画サイトに共有するのってさ、「普通に考えて」おかしいじゃん?
それがさ、「証拠を残しちゃダメだろ」とか、「そもそも犯罪では?」とか、そういう話じゃなくて、一般的なまともな人間はそれを理由なしに「ダメなこと」と認識できるんだよ。そう教わっているからな。
その、ダメなことをダメなことと認識できないのが、ヤバいんだ。「普通」という感覚を共有できないことが。
そりゃあ、ドクが野蛮人とも言いたくなる。ってか、俺も思ってるし。
平気で窃盗して、法律を破り、動画をバズらせる為に他人に迷惑をかける。
そんな奴らを、自分達と同じ人間とは思いたくない。そんな奴らは、猿だ、土人だ、人未満だ。
そう思うことの何がおかしいんだ?
差別もクソもなく、正当な区別だよね。
「別に、今世の身体に愛着がある訳でもないが、野蛮な猿共に犯されるなんて、考えただけでも怖気が走るね。……そうだ、ジャーク君?良かったら、僕を抱いてはもらえないだろうか?」
「ん?良いのか?」
「ああ。初めては好きな人が〜……のようなセンチメンタリズムがない訳でもないのだが、君のお手つきになった方が、他の男共を避けられるだろう?部下の職人共も、私のことをいやらしい目で見てくるのでね……」
「あー、だろうな。男ばかりの職人達に、女一人ってのは配慮がなかったか」
「いや?こんな世界だ、ウーマンリブもフェミニズムも遥か遠く先の話だろう?女の職人を用意しろ!だなんてことは言わないさ、居ないだろうしね。その辺りは、実力で黙らせているよ」
「で、下手に実力を見せたから、『この女と結婚すれば上に行けるかも!』とか思われちゃってウザい、と」
「ンッンー、皆まで言わずとも察してくれる知能があるとはね。本当に好きになってしまいそうだよ、ジャーク君?……とにかく、そう言う訳だから、早急に抱いてくれたまえよ」
「ああ、良いぜ。楽しませてやるよ」
そんな訳で、ドクとセックスしながら、戦争の結果を待つ。
え?武将として前線に立つ?
やだよバーカ。
何が嬉しくて、意味もなく戦場に出なきゃならんのよ?
領主が参陣しないと士気が保たないようなギリギリの戦争じゃないだろこれ。そしてそんな戦争をするつもりは、俺にはないしな。
俺、勝てる勝負しかしない主義なんだよね。
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