第52話 オタク男子なら、美少女男子と友達以上も余裕です、多分。
「ど、どうしよう……浜野井に、なんて伝えれば……」
自分がとんでもないことをしていたことに気づき、おろおろする僕だが、糸美川さん達も考え込んでいるようだ。
「どうしようと言われましても、これも勘違いかもしれませんからね……」
「うん~。湊くんのことが、好きなの~?って聞くわけにもね~」
お互いに顔を見合わせて、ため息一つ。
屋上を沈黙が支配した。
しかし、その静寂を破るように、ガチャリと屋上が開く音が。
そちらに振り替えれば、なぜか玉枝さん。
「みなとー!お前、晶というものがありながらー!!!」
ダッシュでこちらに近づいてきたかと思えば、僕の胸を両手でぽかぽか。
「え、急になんだよ、玉枝さん」
「晶があんなに頑張っているのにー!浮気か、浮気なのかー!?」
いやいや、何を言い出すんだ、君は。
というか、あれですか、浜野井が僕と付き合っている前提ですか。
「ま……待って、玉枝さん……」
「はぁ……全く、少し落ち着きなさいな」
別の声がして、そちらへ視線を向ければ、息を切らせた浜野井と、やれやれ顔の宇城さん。
「ご、ごめんなさい……湊君、玉枝さん、なにか……勘違いしているみたいで……!」
「そんなことないぞー晶!私に任せとけー」
玉枝さんは、たたきつけるのを止めて、拳をねじ込むようにぐりぐりしてきた。
どういう発想?僕を貫くつもりですか?殺意高くない?
「アンタはとりあえず止まりなさい、混乱するだけでしょうから、ここは私が説明するから、良いかしら?晶君」
混乱する場を収めるように、宇城さんが周囲を見回して、確認を取った。
浜野井も異議はないようで、頷いている。
「確認するけれど、湊君は男性のことが好きなわけではないのよね?」
「と、当然でしょ」
「なんだとー!この!湊ー!」
痛い痛い、止めてよ玉枝さん。
その僕を突き刺そうとする攻撃止めて。
「晶のことが嫌いなのか―!」
「いや、嫌いではないけれど」
「だったらー!好きなんだろー!」
「はいはい、あんたはいい加減にしなさい」
「うげー痛いってー」
こちらを無視して暴走する玉枝さんを引き離すために、耳を引っ張る宇城さん。
意外に容赦がない。
「ごめんなさいね。この子、男性のことが好きでない、というのを湊君が晶君のことを嫌いだとイコールで結んでしまったみたいで」
「ああ、そういう……あれ?でもなんでそういう話に」
「私達、晶君がどうして変わったのか気になったから、色々お話ししていたのよ」
それ、普通に聞けちゃうんだ宇城さん。
「まぁ、概ね、湊君が原因ということは分かったんだけれども」
そして、はっきり言うんだ、宇城さん。
「後は、そうね、晶君。あなたから伝えた方が。良いんじゃない?」
「うん……ありがとう。宇城さん」
宇城さんが、浜野井を促すと、おずおずと一歩踏み出した。
「その……ごめんね、湊君」
「浜野井、そのもしも勘違いさせていたら申し訳ないんだけれど、僕は別に男性とは」
「うん……分かっているよ。湊君は……別に、女性の服を着ている、男子が好きなわけじゃ……ないんだよね」
良かった、きちんと伝わっていた。
でも、だとしたらなんで?
「その……恥ずかしいんだけど……あのね」
浜野井は、もじもじと自分の髪を弄っている。
今日は休日に出会った時のヘアスタイルだ。
「湊君に……可愛いと言ってもらえるの、嬉しくて……それで、迷惑かもしれないけれど……今の自分も良いかなって」
編み込んだ髪を指で摘まみながら、浜野井は恥ずかしそうにそう告げた。
な、成程?あくまでも、浜野井君が望んでその恰好をしているということ?
つまり、交際しようとか男女の好きとかではなく、僕に褒められたいと、そういうことなんだろうか。
「その……やっぱり、変、かな?」
「浜野井が、そうしたいなら。うん。良いと思うよ、僕は」
「……良かった」
浜野井は、嬉しそうにホッと胸をなでおろす。
そして、今度は僕ではなく、糸美川さんと志原田さんに視線を向けた。
「二人にも……迷惑をかけてしまって、ごめんなさい」
「いいえ、浜野井君、私達は何も」
「その……例えば、二人のせいでボクがこういう格好を始めたとか思われたり……」
「だいじょうぶ~ワタシ、そういう噂勝手にするやつ気にしないし~」
「志原田さん、その言い方では浜野井君が気にされるじゃないですか。でも、そうですね。安心してください。私たちにそのようなことを言ってくる相手はいませんし。そしてもしも言ってきたところでそんな人たちのことは気にしませんから」
「ありがとう……二人とも」
糸美川さんの言葉に、浜野井は微笑んだ。
どちらかと言えば、物憂げな顔をしていることが多かった浜野井だけど、一番に賀うのは笑顔だなと、ぼんやりとそんなことを考えてしまう。
「そうですね、後は浜野井さん、と呼んだ方が良いですか?」
「ううん……今まで通りで、大丈夫」
「そっか~。じゃ、浜野井君、よろしくね~」
「志原田さんも……よろしく」
三人は歩み寄ると、それぞれの両手をぎゅっと握りあった。
「あ、私も私もー!」
「いや、あんたは空気を読みなさい……って、私の手を引っ張らないの」
その様子を羨ましそうに見ていた玉枝さんは、宇城さんを無理矢理引っ張りながら、三人の輪に加わった。
「あ、湊は駄目だぞー」
いや、なんでさ。
ここでなぜ僕を排除しようとするんだよ。
「これはー、女子の友情確認だからー。湊はまた後でなー」
「いや、それは違うでしょ……」
玉枝さんの言葉に、僕が嘆息すると、美少女達が笑い合う。
ほんともう、勘弁してよ。
◇
これにて、問題はすべて解決。
明日からはテストということで、屋上を後にして帰宅することにした。
意外と気が合うようで、志原田さんは宇城さんと楽し気に話している。
玉枝さんは、本当に浜野井がお気に入りのようで、髪を弄っている。
いや、あんまり相手の髪にぺたぺた触るの良いのかな?
そして、僕の傍には糸美川さん。
僕を楽しそうに見つめるその表情は、僕にだけ見せる裏の"美少女"だ。
「美少女に囲まれて良かったじゃん?湊」
「いや、揶揄わないでよ、糸美川さん」
「はは、そうだな、けどさ、これなら目標、すぐにでも達成できるんじゃないか?」
「どうだろ、まだまだ学校生活は始まったばかりだしね」
「少なくとも、オレたちの中で、一番進んでいるの、湊かもなって思うけど」
「そうかな、僕は、糸美川さんが先頭な気がするけどな」
「そうか?理由は?」
真っすぐな瞳で、質問されてしまう。
しまった、ぽろっと思ってることが口に出ちゃったよ。
「ま、まぁやっぱり美少女って目標、ほとんど達成しているように見えるし」
「ふ~ん。そっかそっか」
僕の言葉を、糸美川さんは茶化すでもなく、何かを確認するように頷いた。
「それじゃさ、湊」
そして、眩しいくらいの笑顔で、僕へと言葉を投げかける。
「本当の意味で、オレと、"友達以上"になってみる?」
……困ったなぁ。
僕を揶揄うつもりの冗談だとは、分かっている。
けれども僕は、想像以上に、この"美少女"の顔に、弱いらしい。
嘘をついたり、誤魔化したりは出来ないんだよな。
だからさ。
「……ノーコメントで」
今はとりあえず、僕は、目を逸らした。
オタク男子なら、美少女男子と友達"以上"も余裕です!
第一章 湊君なら、美少女男子と友達なんて余裕です 了
◆◇◆◇◆◇◆◇
ということで、これにて美少女男子(略称)第一章完結です。
如何でしたか?
作者としては思った以上に浜野井君の反応が良すぎてビックリしましたが!(本音)
美少女男子(男の娘)なクラスメイトと、オタク男子なら仲良くなれますよ~。
余裕ですよ~と見せかけた、意外にオタク男子の方が仲良くなりすぎるのに余裕がない感じにて、第一章はおしまい。
第二章からは、親友たちの仲良しグループ……いや、美少女男子とのハーレム?
楽しい学園生活・イベントが目白押し!
続きは少々先になりますので、お待ちください。
さて、ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございます。
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ありがとうございました!
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