第43話 トクベツな、トモダチ 1
「失礼しました」
「失礼……しました」
僕と浜野井君は、頭を下げて、教室から廊下へと出た。
昼にあった出来事について、運営である3学年の先輩に話し終えたところだ。
体育祭は、無事、白組の勝利に終わった。
何せ、赤組の応援団の数名が不参加。
それなりの点数を稼げる応援合戦をあっさり制した白組。
その後の流れも紅組に流れることはなく、決着と相成った。
そして、僕たちは運営側に事情聴取という形で呼び出された。
勿論、昼のメガネ先輩とは別の先輩だ。
幸いなことに、あのメガネは特にこちらの不都合になるようなことは盛り込まなかったらしく、更には、応援団員の先輩女子達がしでかしたことを、ほぼ全て吐かせたらしい。
素直に見直したいところなのだけれど、去り際の視線がね。
浜野井君は特に気づいていないのが幸いだけれども。
いずれにせよ、僕と浜野井君には非がないということで決着。
寧ろ、彼女たちの行為は下手をすれば犯罪行為であるとのこと。
こちらの事情を尋ねる先輩の口から並べられる、該当しうる罪状の数々。
真っ当に生きていれば気にする必要はないのかもしれないけれど、ちょっとした悪戯と、簡単に考えてはいけないのだと思わされた。
そこで、浜野井君にどうするかを先輩男子が尋ねたのだが、彼女たちの罪を問わないという結論が出た。
「僕自身……言われるがまま、着てしまった負い目がありますから……今回は、大丈夫です」
今後、私的な用事で二度と近づかないこと、公的なことであっても他人を介することを厳命し、教師から保護者へも連絡。
それで決着となるとのことだった。
そこまで確認して、聴取は終了。
僕と浜野井君は解放されたのだった。
「お疲れ、浜野井」
「湊君こそ……お疲れ様」
並び歩きながら、お互いの苦労を労ったけれど、そこに流れる空気は、どこかぎこちない。
正直僕は、申し訳ない気持ちで一杯だった。
浜野井君のことを、守ったつもりだったけれど、結局彼はチア服を着せられたことを、自らの口で語らなければならなかった。
きっと、先輩たちの罪を問わなかったのも、その事実を拡散されることを避けるためなのだろう。
情けない話だ、本当に。
どの面下げて、友人と宣うのか。
とはいえ、きちんと謝罪しないと。
彼とは、友達でいたいから。
「あのさ、浜野井」
「あの……湊君」
二人の話しかけるタイミングが重なる。
そして、またも流れる気まずい空気。
ああ、どうしたものだろうか。
こういう時は僕の口、回ってくれないんだよなぁ。
「えっと、本当に……ごめんなさい、湊君」
先に、沈黙を破壊したのは浜野井君だった。
「いや、謝るのは僕の方で!」
それを見て、僕は慌てて彼の言葉を否定しようとしたけれど、浜野井君は首を振って、それを固辞した。
「こんなことに……巻き込んで、しまって。僕が、きちんと最初から断っていればよかったんだ……なのに……」
僕が何かを言い出す前に、彼は悔やむように、自らが悪いのだと述べる。
そんなこと、あるはずもないのに。
先ほどの聞き取りでもあったように、犯罪が如き行為をしたのは先輩たちなのだから。
それでも、僕を巻き込んでしまったことを、悪いことだと思ってくれている。
だったら僕も、彼を守り切れなかったことを反省しよう。
但し、望まない格好をさせられたことには触れないように。
「浜野井はやっぱり良い人だよね」
「え?」
「僕、ここまで大事件にするつもりじゃなかったからね。華麗にさ、浜野井を助けて解決するつもりだったから。だから、ごめん」
「そ……そんなことは、ないよ」
「だったら、お互い様。それでいいかな?」
「あ……うん。その、ありがとう……湊君」
僕がニッと笑えば、浜野井君ははにかんだ笑みで返してくれる。
僕たちはそのまま、各々自分たちへの教室へと向かった。
「浜野井、準備できた?」
「うん……お待たせ」
教室から鞄を持ち出すと、再度浜野井君と合流。
体育祭はとうに終わり、競技者である1、2学年は既に下校している。
運営側である3学年は、片付け等でまだまだ活動をしていた。
メガネには会いたくないものである。
糸美川さんと志原田さんは、待っていると言ってくれたけれど、どれ位時間が掛かるかわからなかったので、先に帰ってもらうことにした。
こうして、浜野井君と一緒に帰ることもできるから、寂しくないしね。
というか、友人になってから彼と一緒に帰るのは初めてだ。
いつも、彼の周囲には女子がいるためである。
……羨ましくなんかないやい。
「ふふ……」
「ん?どうしたの、浜野井」
「こうやって……湊君と、一緒に帰れるの……嬉しいな」
「本当に?僕も浜野井と一緒に下校したかったんだよ、ある意味ラッキーだね」
「うん……そうだね」
そうして、学校を後にして、帰路に就く。
道中で、色々な話をした。
彼が、GWで行ったという、女子との集まりや、普段女子とどのような会話をしているか。
僕が、何故体を鍛えなければならなくなったのかと、最近の身嗜み事情。
そして、話題はもうすぐ始まる中間考査へと移り、そろそろ駅に到着するかというところで、浜野井君がその歩をぴたりと止めた。
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