2歩目 志原田優はオタクにやさしくない美少女(男子)です
第14話 お昼休みは屋上で
「んん~っ!っと」
屋上に指す柔らかな陽ざしの中で、グッと伸びをする。
穏やかな陽気に包まれて、凝り固まった体がほぐれるようだった。
春よ、まだまだ死んでくれるなよ。
春夏秋冬というか、なんかもう夏夏冬冬なんて皮肉る人もいるけれど、4月の真ん中であれば、まだまだ春も自己主張してくれていた。
眠気を誘うのは考え物だけれども、僕の状況的に。
こなさなければならないタスクは山積みでございます。
入学式から遅れること1週間。
ようやく登校を果たした僕は、その後3日間を経て、どうにかこうにかみんなと同じ高校生活を始めることが出来ていた。
「湊君。準備できましたからどうぞ。昼食、いただきましょう?」
気持ちのいいポカポカ陽気に呆けていると、昼食準備完了の声。
「うわ、ごめん糸美川さん。手伝わなくて」
「いえいえ、シートを開くだけですよ?準備と言うほどのものではありませんよ」
振りむけば、糸美川さんが屋上の床に、シートを敷いてくれていた。
既にお弁当の取り出しも完了している。
なんだか、小学校時代の遠足時代を思わせる光景だ。
ちょっとワクワクするよね、不思議と。
「いやでもさ、結構こういうシートって開くのも畳むのも難しくない?」
「そうですか?そんなことはないかと思いますけれど」
「ほら昨日とかも僕、しっかり展開できていなかったし、畳む時も袋に綺麗に入れられなかったし」
「……えっと。もしかして、湊君不器用と言いますか、細かい作業とかは苦手ですか」
「図工・美術は下から2番目です」
「何故、胸を張ってるんですか……とにかく、お手伝いなんて気にしなくて良いですから、座ってくださいね」
僕が自らの弱点を開示すると、糸美川さんは呆れ顔だ。
最初の頃はいちいちツッコミを入れてくれていた"彼女"だけれど、途中から諦めたようだ。
というわけで、僕と糸美川さんの友好関係は、登校日からしっかり継続していた。
こうして屋上で一緒に昼食を食べるのも、これで4日目。
つまり全日である。
僕も園芸部に入部したので、問題なく屋上に立ち入れるようになっている。
「それじゃ、お邪魔します」
「はい、遠慮ならずに、どうぞ」
僕が靴を脱ぎ、畏まる素振りでシートに座ると、糸美川さんはその様子を見てくすくすと笑った。
流石に僕も、この"美少女男子"の"美少女"ぶりにいちいち動揺はしない。
それはそれとして、やっぱり信じられないくらい所作のひとつひとつが様になっているんですけれどね。
「それにしても、ごめんね。糸美川さん」
「どうしたんですか?いきなり。ああ、シートを私が持ってきていることなら以前も言いましたがお気になさらず――――」
「いや、そうじゃなくてさ、こうして僕とだけ昼一緒に過ごしてもらっちゃって、申し訳ないなと」
「あ、そのことですか、それこそ気にされる必要はないのに」
「だって、糸美川さんにも付き合い、あるでしょ」
「あら、心配してくれるんですか?」
「そりゃまぁね」
屋上に直接座るわけにもいかず、こうしてシートを敷いている訳だけれど、そのシートは糸美川さんが持ってきてくれている。
僕も準備しようかと伝えたけれど、固辞されてしまった。
僕の不器用さの場合、綺麗に仕舞って持って帰れない可能性があるので、お言葉に甘えさせていただこう、うん。
さておき、今日から通常日程に復帰ということは、つまり僕は登校初日からまだまだクラスになじめていないということである。
それを心配してくれたのであろう糸美川さんは、こうして僕と昼を過ごし、放課後は一緒に下校してくれている。
「ご心配いただき、ありがとうございます。けれど、大丈夫ですよ」
「そっか、それなら良かったよ」
僕がホッと胸をなでおろすと、糸美川さんは"もう一つの美少女"を取り出して、ニヤニヤと笑う。
「何、そんなにオレを独占できるのが嬉しいってこと?」
「それ止めてね、糸美川さん」
「なんだよ、照れるなって」
調子に乗り出す糸美川さん。
悪いけど、本当にそういうのじゃないからね。
端的に言って、ボッチ回避できて安心しているのが100%です。
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