天国にはまず娯楽が必要なはすだ。7

「つっても、無理はものは無理よ?あたしだって、そんなに⋯⋯ラニだったわよね?お金ないもの。2人合わせても、こんなおっきな建物買うのは無理っしょ?」


マルはモニターとハチヤの顔を交互に激しく見比べながらそう訴えた。しかし、ハチヤは自らのあごに指を沿わせたまま、険しい表情は変わらない。


「でもなぁ。この建物いいよなぁ。3階建てでさぁ。作業スペースもあって、屋上もあるし。⋯⋯案内人君。お金を借りたりすることは出来ないのかね?」


「無理というわけではないけど、俺の権限ではないからなあ。もちろん、あの眼鏡ちゃんも。⋯⋯例えば、ここの天国を管理する神様にお願いしたらいけたりして⋯⋯」


「呼んだかの?」


まるで示し合わせたかのように、パソコンに向かう3人の背後にその存在は現れた。非常に若々しくも、どこか厳かな。女性の声であった。


霊人、マル、ハチヤの3人は驚きながら振り返る。


「神様じゃん!」


「えっ!?この人が?」


「か、かみのさん!?」


3人のリアクションに、神様と呼ばれた女性は両目を細めながらとても嬉しそうに笑う。そして、長い袖の中の脇を覗かせながら左手をゆっくりと上げたのだった。


「ほっほっほ。ワシの到着を心待ちにしていたようじゃの〜。お主らが天に参った住人かの?現世での良い行いを天の国でも心もつに勝ることはなかろうて」


どういうわけか、やけにホクホク顔の神様。まるで室町時代の貴族。袖下にそれぞれの腕を通しながら緋袴を揺らした。


「かみのさん、かみのさんですよね?」


座っている椅子を回しながら、ハチヤは神様の顔を覗き込んだ。その様子を見て神様もピンと来た顔をした。


「お主は、ぱちやで働くハチヤではないか!奇遇じゃの〜」


神様に奇遇と判断された2人の再会の雰囲気。霊人は気になって仕方ない。


「ハチヤ君、神様と知り合いだったの?」


「ええ!この方、俺が働いていたパチンコ屋の常連になってくれたお姉さんですよ!」


「あらま!そうだったんか。すごい偶然だね。⋯⋯じゃなくて、神様はなんで勝手に下界に降りてパチンコなんかしてるわけ?もう、あんたの天国、リニューアルオープンしてるんすけど?まさか、今の今までパチンコを興じていたんじゃありませんよね?」



パーカーのポケットに両手を突っ込みながら詰め寄る霊人。その怒りに触れ、巫女服姿の女性は思わず1歩後ろに下がった。


「そ、そんなはずはなかろう!あ、あれじゃ、お主が住んどる周りを!霊道の具合を見に行っておったんじゃ!途中で木でも倒れて霊道が塞がっておったら、大変じゃからのう」


「ふーん。なんだか怪しいな。ちょっとタバコ臭いような。神様、タバコなんて吸ったりしないのに」


「た、確かにそうじゃのう!おかしいのう!」


神様は霊人と目線を合わせぬようにしながらしどろもどろ。もう後ろにはパーテーションしかない。尚も迫り寄る霊人の体を押し返そうと腕組みを外した腕を伸ばした。


コロン。


神様の袖の中から、何かが霊人の足元に落ちた。小さな袋に入った煎餅だった。霊人はそれを拾い上げる。彼と横にいるハチヤはそれが何かすぐに分かった。


「神様よ。これはもしやパチンコ屋の端玉菓子じゃないのか?」


そう口にした霊人の顔がさらにピキる。


「そいつは勘違いじゃ!コンビニじゃ!コンビニで買って食っとったやつじゃ!」


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