天国にはまず娯楽が必要なはずだ。6
飲食ならば、パン屋、ケーキ屋、焼き鳥、寿司屋、焼肉屋、カフェ、バー、ファストフード関係も多数。専門レストランや手軽に始められる露店や屋台などもある。
雑貨系ならば、本、服飾、小物、インテリア、スポーツ用品、音楽関係。
他にも、青果店、精肉店、コンビニ、スーパー、デパート。素材や錬成・錬金物買い取り屋。冒険者ギルドなんてものもある。
「おお、すげー!焼き肉屋なんかいいかも!儲かりそうだし!」
「いやいや、まずは着る服がないと話にならないから、まずはアパレルショップでしょ」
スクロールするのが早いだのなんだのと言い合いをする2人の目は実に輝いていた。そんな2人を見て、幽霊屋は口を出す。
「2人にお似合いの店があるよ」
「「えー、なに?なに?」」
「パチンコ屋」
「は?」
振り返ったギャルの目は実にギロリとしていた。
霊人は視線をずらし、人差し指を立てながら続ける。
「ほら、ハチヤにマルがくっついたらパチ屋になるじゃん。この符号、運命じみているとしか思えないよね」
「あんたねぇ⋯⋯」
パチンコなんて聞いてがっかり。もうちょい押したらビンタが飛んできそうな雰囲気にすらなったところで⋯⋯。
「でも、いいかもな、パチンコ」
ハチヤ屋はそう呟いた。そして、項目的には1番下の部類にあったパチンコ屋のタブをクリックした。
次に選ぶのは、店の規模。ひと口にパチンコ屋と言っても、形態は様々だ。3000台を設置する超大型店もあれば、観光客の暇つぶしに最適な100台に満たない小規模店もある。
パチンコ専門、スロット専門。レートも4円から始まり、0、1円パチンコなんてものもある。昔は、大流行した1つの機種の専門店も存在したことがあるくらいだ。
とはいえ、ここは天国。令和時代の天国がどのくらいの人で栄えるかは、幽霊屋にも分からない。ただ、失敗した時のリスクがほぼないのもまた事実。
「理想はやっぱり、パチンコフロアとスロットフロアを分けたいよなあ。それで住居スペースもあれば⋯⋯」
パチンコ店に対応している建物でもたくさんの種類がモニターに映し出される小さいもの戦後のパチンコ創生期を彷彿とさせる一般的なコンビニより小さいのもの。
大きいものならば、全7階建て。総面積15000平方メートルというドーム球場サイズのものもある。その分、お値段も破格なのはもちろんだが。
いい人生を送り、見事天国行きとなったハチヤとはいえ、手持ちのラニが潤沢にあるわけではない。しかし、どうしても手が届かないという金額設定でもない。むしろ破格。工夫すれば、とりあえず建物を確保することが出来そうだった。
そういった思考から、隣に座るギャルの顔をじっと見つめる。この場所に来た時から、なんだかずっと一緒に居る、なんだか分かんない白ギャルを。
「え?なに?」
男からこんなにも真剣な眼差しを向けられたことがかつて合っただろうか。つい、そう考えてしまう程のハチヤの視線。思わず照れそうになったのを誤魔化す為に、マルはパソコンモニターの方へと目線をずらした。
そこに写し出されていたのは、パ3階建てである建物の購入画面。パチンコ店も経営可能な居住スペース付き。価格はハチヤが今所有しているラニの倍よりさらに少し高いくらいである。
その価格を見て、マルは察する。
「あんたまさか、あたしのお金を当てにしているってわけじゃないでしょうね!?」
マルの確認にハチヤは一拍置いた後に、コクリと真顔のまま頷いた。
(ウソでしょ。パチンコなんて冗談じゃないわ。私は自分のアパレルショップとかネイルショップを持つっていう夢があったのよ!?天国だからってふざけんじゃないわよ!付き合ってられな⋯⋯)
早くこの場から逃げ出さないと!そう考えて席を立とうとした時、自分の手がハチヤの手に包まれたのに気付いたマル。
その瞬間にふと思い出した。
死に際にほんの少しだけ感じた温もりと同じだということを。
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