第153話 パーティー
俺は冷や汗を拭った。
これまでの冒険で、俺は自分の力を「チート」だと思っていた。
だが、目の前にいるのは、そのチートを生み出した「
プレイヤーがどれだけレベルを上げても、運営の削除コマンドには勝てない。
そういう理不尽さを感じる。
【朱雀】が再び魔力というエネルギーを充填し始めた。
今度は、先ほどとは桁違いの出力だ。
狙いは広範囲殲滅系の攻撃か。
このままでは、俺だけでなく、後ろにいる桜たちまで消し炭になる。
どうする? 逃げるか?
いや、ここまで来て逃げられる相手じゃない。
俺は視線を巡らせ、奥にある【黒い石碑】を見た。
あいつだ。
あいつがこの【朱雀】を制御している。
そして、【朱雀】はあくまで「セキュリティ・システム」だと名乗った。
なら、止める方法はあるはずだ。
力で破壊するんじゃない。システムそのものに干渉し、停止させる。
俺には【解析】がある。
今まで、どんな物質も、どんな事象も読み解いてきた、俺だけの権能。
あれを石碑に直接叩き込めば、あるいは――。
だが、そのためには石碑に触れなければならない。
そして、解析には時間がかかる。
その間、誰があの化け物を食い止める?
俺は振り返った。
そこには、呆然と立ち尽くすのではなく、武器を構え、俺の指示を待っている三人の姿があった。
ジェームズがニヤリと笑う。
エミリーが銃のボルトを引く。
桜がロッドを握りしめ、頷く。
……信じろ。
俺の仲間たちを。
「ジェームズさん! エミリー、桜!」
俺は叫んだ。
「あいつは普通の魔物じゃない!
俺の攻撃も、魔法も、全て無効化される!
倒すことは不可能だ!」
「なっ……じゃあどうすりゃいい!?」
ジェームズが叫び返す。
「俺があの石碑から倒すヒントを見つける!
でも、それには時間がいる!
石碑に触れて、見つけるまでの間……数十秒でいい!
あいつを食い止めてくれ!!」
無茶苦茶な要求だ。
触れれば消滅する相手を、数十秒間、足止めしろと言っているのだ。
命を捨てろと言うに等しい。
だが。
「ハッ! 人使いの荒いリーダーだぜ!」
ジェームズが笑い飛ばし、前に出た。
全身から黄金の闘気を噴出させ、筋肉を鎧のように硬化させる。
「数十秒だな? 1分でも2分でも稼いでやるよ!
ランク2の意地、見せてやらぁ!!」
「わたくしもおりますわよ!」
エミリーがライフルの出力を最大まで引き上げる。
「あのデカブツ、わたくしの美学に反しますわ!
的が大きくて助かります! 全弾撃ち尽くしてでも、足の一本くらい止めてみせますわ!」
「ひろくん!」
桜が、凛とした声で俺を呼んだ。
「行って!
ひろくんの背中は、絶対に守るから!」
彼女達の周囲に、幾重もの光の防御魔法陣が展開される。
俺は胸が熱くなるのを感じた。
これが、パーティか。
背中を預けられる仲間がいるということが、これほど心強いとは。
「頼んだ!!」
俺は【朱雀】に背を向け、全速力で石碑へと走った。
背後で、爆音と衝撃波が炸裂する。
「オラァァァァッ!! こっちだ焼き鳥野郎!!」
「喰らいなさい! 《バスター・キャノン》!!」
「守って、《
ジェームズの拳圧が、【朱雀】の注意を引く。
エミリーの魔弾が、雨あられと降り注ぎ、視界を遮る。
【朱雀】の放った熱線を、桜の多重展開した光の盾がギリギリで偏向させる。
彼らは命を削って、俺に道を作ってくれている。
一秒たりとも無駄にはできない。
俺は【黒い石碑】の前に到達した。
漆黒の表面に、俺の手を押し当てる。
冷たい。
だが、その奥底には、恒星のような熱量を持った情報の奔流が渦巻いている。
「頼む……!」
俺は全魔力を集中させた。
血管が切れそうなほどの負荷。
視界が白く染まり、脳内に見たこともない文字列が雪崩れ込んでくる。
-----------------
System Access...
Analyzing...
Error... Encryption Level: Admin Level 9.
-----------------
弾かれる。
堅い。とてつもなく堅牢なセキュリティだ。
だが、こじ開けるしかない。
後ろでは、仲間たちが必死に戦っている。
ジェームズの苦悶の声が聞こえた。
エミリーの悲鳴が聞こえた。
桜の荒い呼吸が聞こえた。
俺は歯を食いしばり、意識を情報の海へとダイブさせた。
開け。開け。開け!
俺の手と石碑の接触点から、青白い光が漏れ出した。
戦いは、物理次元から情報次元へと移行した。
俺と『システム』との、命を懸けた対話が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます