掌編

@cieloid

かけがえのない約束という名の呪い

大事に思っていないなんてことは一度だってなかった

「私たち、終わりにしましょ」


日の暮れたなか、おしゃれなジャズが流れる店内が、急に静まった瞬間にその言葉は差し込まれた。


「...なんでか聞いてもいい?」

「今が私にとっても、晃成にとっても良い形じゃないなっておもったから」

「そんなことはないよ」

「あの子のこと、大事なんでしょ?」


その言葉を聞いた途端にああ、またかと納得と落胆の混じった感情が染み渡る。


「またかって顔してるね」

「わかってるじゃん」

「わかるよ」


そういって、水を一口含んだ彼女は切なげに微笑んだ。


「だからさよなら、なんだよ」


その瞬間、愛しさが零れ落ちたのをみて


(まるで呪いみたいだな)


どこか他人事の自分に嫌気がさしたのだった。

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