1-5

 朝起きると、ピン子が私の手首を咥えながら寝ていた。


「ギゃーァ また ピン子なのーぉ 私は  また 小学生?」


 そーなのだ 衿元と袖のない腕周りに裾もヒラヒラしたもので、くまさんの絵柄のネグリジェ。おまけにトマトのパンツなのだ。


「ちょっとぉー ピン子! どーしてくれるんよー 私 図書館で また あの人に会えるかと楽しみにしてるんだからネ!」


「フンニャー・・・」 ピン子のほうが寝ぼけているんでないのだろうか


「一応 気に入ったみたいだな そのうち また 図書館で会えるよ 明日からの林間学校でもな」


「えぇー 林間学校? ? ?」


「そーだよ カレンダー見てみろよ」


 確かに、明日と明後日に◎がしてあって、林間学校と書いてあるのだ。そして、その下には、チェックの長ズボンに赤のTシャツ、ピンクのラッシュガードが揃えられていた、おそらく、お母さんが用意してくれていたのだろう。


「まぁ わかったわ でもね 昨日 こころがね 告られたって報告してきたのよー あの子の家 パン屋さんだから、時々 お店を手伝っているんだけど、そこのお客さんでね 違う学校なんだけど 3年生でね その子に付き合って欲しいって言われたんだって・・・でね 今日 初デートなんだって! そーいうのって いいなぁー 羨ましいの 明日 その結果 聞かなきゃーなんないのよー 聞けないのぉー?」


「まぁ そのうち 聞けるよー」


「あのさー 今のこの時 高校2年生の私は どうしてるのー?」


「普通に すごしてるよ 暑いから朝シャンしてるかもなー」


「へぇー じゃぁ この私は何なのー?」


「えーとぉー 虚像ってか つぐみちゃんの頭の中に居る昔のつぐみちゃんカナ とにかく 違う 時空間なんだよ」


「何なのぉー それって アバター? 時空間? 何のために・・・ それに ピン子って何なの? 本物?」 


「うん 本物のつもりなんだけど」


「何で ここに居るのよー」


「だからぁー つぐみちゃんの相手を変な男に掴まんないよーに 誘導しようと思って・・・ それより 昨日のことが記憶にあるのかぁー おかしいなぁー」


「おかしくないわよー 私は私! それより、私 記憶がごっちゃになって来て 二重人物なのかしら・・・ 私 どうなるのよ! ピン子!」


「うっ うん 整理する」


 次の日はベッドにはピン子が一緒に寝ていて、前の日 話したことを私は忘れ去っていた。5年生全員が集合して、電車で移動して、降りてから30分ほど歩いて、現地に着いた。お弁当の後は、アスレチックなんかを楽しんで、夕食のカレー作りになったのだ。


 私は、タマネギを切る担当になっていたのだが、葛城先生が見廻りにやって来て


「神崎さん 手付きいいねぇ 慣れているのかな?」


「そうねぇー 何でやろう? そんなにしたことないのに」


「もともと 素質があるんかな」


「なぁ 先生と、こーやってるのって 前にもあったようなー・・・」


「そんなことないだろう でも 僕もそんなような気がする」


「ねぇ 私達 もしかすると 前世で結ばれていたんかなぁー」


「はっ ははっ そんな訳ないじゃぁないか」と、笑いながら別のとこに行ってしまった。


 食事も終わって、洗い物をしていると、又 先生がやって来て


「いゃぁー カレー うまかったよ 特にタマネギの切り方も良かった タテ切だろう? 食感も残っていてね」


「あっ そう よかったぁー ねぇ 先生って 彼女居るの?」


「いいやー 居ないよ」


「わぁー 良かったぁー 私が先生の彼女になってあげるね! カレー作ってあげる」


「そうかぁー まぁ 楽しみに待っているよ」



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