第3話2

 夜の闇に突然現れた、金銀に光る三組の双眸。


 トタン屋根に乱れ一つなく並ぶそのシルエットに、ボス猫率いる黒サンタ達は、思わず息を呑む。


「ニャンニャンズ、何故ここに!?」


 恐怖のあまり、そう叫んだボス猫に、ニヤリと笑う赤サンタ達。


 一歩また一歩とし後退始める黒サンタ達に対し

「今日は赤サンタと呼ぶにゃん!」

と、いつになく低い声で言った。


 「あ、赤サンタ、何故ここに?」

 律儀にも顔をひきつらせながら、再びボス猫が問うと、赤サンタの代表であるMガールが、前にしゃしゃり出る。


「巷で大人のオモチャが大量に失くなったと聞いて、もしやと思い調べたにゃん」

「そしたら、ここ二・三日の間にお前等が怪しい動きをしていたと聞き」

「一連の事件が黒サンタ一味の仕業と分かったにゃん」


 Mガールの自信に満ちた返答に続き、KボーイとSガールもそう言い放つ。


「くーっ、まさか知らぬ間に調べられていたとは」

「もっとコンパクトに答えられないのかにゃん?」

「黙れ、兎に角お前等の悪事はこの赤サンタが許さないにゃん!」


 そう言葉を放ったMガールは、一歩前へ躍り出ると同時に、身を固くした黒サンタ達を勢い良く指差した。


 悔しさのあまり、唸ることしか出来ない黒サンタ一味。

 

 ここで小さな恨みを晴らさないと、後で悔やむに違いない。


 黒サンタ一味は、より一層唸り声を上げ、正正堂堂した姿で立つ赤サンタ一味を威嚇した。


 それでも動じない赤サンタ一味。


 暫くの沈黙の後、Mガールがゆっくりと口を開く。


「お前等の目的は何なのにゃ?」

「ふっふっふっ……それはだな」


 含み笑いを浮かべ、今にも答えようとしたボス猫の耳を

「Mガール!」

という、甲高い声が貫いた。


“うるさい!”というボス猫が瞳を向けた先には、トタン屋根を見て立つ、体が一回り小さいサビ猫赤サンタの姿。


「こっち向くにゃん!」


 ボス猫の鋭いツッコミを無視し、サビ猫は堂々とした態度で

「奥の工場にも、あたし達のオモチャが隠してあったにゃん」

と、仁王立ちで耳を傾けるMガールに、そう報告をした。


 どうやらこのサビ猫は、小柄な体型を利用して、一足先に潜入捜査をしていたらしい。


「私達のオモチャまで盗んでいたとは……」


 サビ猫の報告を一通り聞いたMガールは、わなわなと怒りに肩を震わせ

「黒サンタ一味、絶対に許さないにゃん!」

と、思わず叫びを上げた。


「Hガール、Cガールと合流後、この一連の事件を大人の人間達にも伝えるにゃん!」

「了解したにゃん!」


 サビ猫改めHガールは、元気良く答えると、直ぐ様その場から走り去る。


 遠ざかるその姿をトタン屋根から見送った三匹は、音をたてずに地上へ降り立った。


「そう簡単にやられるオレ達ではない」

「その言葉はこっちの台詞にゃん!」


 お互いがお互い胸を張り、睨み合うこと数十秒。


「覚悟するにゃん!」


 Mガールの啖呵で、戦いの幕は切られた。


              





 








 

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