第4話3

 Hガールが、Mガール達に猫のオモチャの在りかを報告し終わった頃。


「くっ、来るなにゃん!」

「そんな事言わずに、オレと一緒に遊ぶにゃん!」


 盗まれたオモチャが入った袋の見張り番をかって出たCガールが、敵の仲間の一匹のシャム猫に見つかり、じわじわと言い寄られていた。


 敵というからには、例の黒いサンタ服を身に着けているはずなのだが、このシャム猫は何故か何も着ていない。


 色々と突っ込みどころはあるが、まずはこの状況をどう打開するか考える方を選んだCガールは、声を発せずその場にウズクマった。


 その姿を見たシャム猫は、cガールが降参したと勘違いしたようで、じわじわと距離を縮めていく。


 その時だった。


 突如シャム猫の口から叫び声が飛び出したのである。


 その声は、喉の奥から出ているのではないかと疑いたくなる程、悲痛なモノだった。


“ギャッ”という叫び声を上げて、その場に倒れ込んだシャム猫。


 室内は月明かりに照らされているとはいえ、薄暗いことには変わらない。


 そもそも、人間達の瞳とは全く違う構造をしているのだから、暗闇であっても良く見えた。


 しかしレンズの回りが白く濁っているせいで、目の前にいるのが誰なのかまでは、はっきりしない。


 瞳に入る光を何度か調節してみても、頭にハテナが幾つも飛び交うCガール。


 そんなCガールに、その人物は何事もなかったかのように、少々早口で話しかけた。  


「Cガール、Mガールからの命令にゃん!」

「Hガール?」

「この事件の真相を、あたしと共に大人の人間達に伝えに行くにゃん!」

「分かった、今すぐ行くにゃん!」


 Mガールの力になるべく、先程まで感じていた恐怖を、見事はね除けたCガール。


 スーッと立ち上がり、颯爽と出口へ向かったCガールを見送ったHガールは、下敷きになっているシャム猫に

「ウ・ワ・キ・モ・ノ!」

と、怒りに満ちた声でそう告げた。


「クリスマスは、とーっても楽しみですね!」


 静かにそう言い放ち、“ふん!”と鼻を鳴らしたHガールは、先に行くCガールの背を追うように、その場から走り去る。


「な、何を送ってくるのかにゃん?」


 胸の中に広がる恐怖を捕えたシャム猫は、数日後に届くであろうクリスマスプレゼントを想像し、思わず身震いをした。


              





 





 








 

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