ドキュメント14
俺は女の指を舐めるのが好きだった。あるいは指でなくてもいいのかもしれないけれど、それはまたいつか、いつの日にか判る日が来るだろうと思う。そういうわけで、俺は今日も女の指をペロペロと先っぽから根元まで執拗に舐めていた。
彼女はどちらかといえば女というより女の子であり、つまりは俺の好みだったから、当たり前に勃っていた。
でも「勃起しちゃったよ」なんて直接的に云うはずもなく、しばらくの間黙っていた。だけれど堪えきれなくなって、俺は大爆笑しながら彼女の薬指の根元まで咥え込んで噛んだ。
「痛ったい!なにマジで!あーもーやめてよ!」
とか言われたってやめられないことは俺自身一番判っていた。そのあとも「やめやめやめ!って言ってるでしょ!?ねえ!」とか叫んでうるさかったけれど、決して咥え噛み噛みするのをやめなかった。
駄目だ駄目。俺の性欲は定期的に発散されなくては壊れてしまう。
そのまま血が溢れるまで噛み続けていると、ついに女の子は泣き出してしまって俺の興奮もヒートアップしていく。
そうしてブチリ!と口内でとんでもない轟音が立って、俺は脳みそをグラグラ揺らしながらエクスタシーに至った。
ボシャボシャとパンツを濡らしていった精液は闇を切り裂き、明るみへと溢れ出した。
そして……飲み込んだ。指を。ゲラゲラ俺は笑って、彼女は大粒の涙を流し「殺してやる殺してやる!あんた、絶対に、殺してやるから!」とマジな目つきをしていたから俺はビビり、謝罪しまくっているうちに目を覚ました。
ぱっちりと両目を開く。案外、静かな朝だった。あるいは朝じゃなくて昼なのかもしれないけれど、俺にはどうだっていい。
素晴らしい夢にずっと浸っていたい気持ちはもちろん大いにあったけれど、今はぜんぶ忘れて、今日も一日頑張ろうムードを作ろうと努力し始める。
「……いや駄目だ。起きらんねえ……駄目なもんは駄目らしい……」
まだまだ眠い。夢の中の女の子、彼女は一体全体誰なんだろう?羊のように迷った俺は、全身全霊で自分の左頬を殴った。
殴って殴って、右頬も同じように殴って殴ってパンパンに腫れ上がったような感じがあるけれども、全然気にせず上半身をグイッと起こす。
途端に、射精したいという強すぎる情動に衝き動かされるままにズボンとパンツを一緒に下ろしてドバッと吐き出した。
「──うああああああああ!!いかんぞ!いかんよおお〜〜〜!!」
俺はワッと泣き出した。号泣だったから、その勢いに任せて射精したてのペニスもビクビクッと跳ね上がって奥からぜんぶ吐き出した。
そして下半身の気怠さがやってくる。
どんな気持ち良さも通り越した瞬間から萎えていくのが判った。俺も男なんだ。思春期だから当然なんだって、俺は何もかも理解したつもりで全裸になる。
別に俺は異常者じゃない。寸止めするくらいならいっそ豪快にせよ。すべてを差し出し、世界のすべてに祝福されているような気分に浸れ。
そういうことだ。
全裸になってバスルームへ向かった。脱ぎ捨てたパジャマは淀んだ川のようで、皺だらけで俺は情けなくなる。
奇跡的に精液はぜんぶ腹に受け止められ、ベッドはまったく汚れなかったからこれも愛の神さまの祝福に違いないのだ。
まだまだビンビンで半端じゃなかったから、俺はシャワーを浴びつつペニスをしごいてまたすぐ射精した。今度は多少、量は減っていたけれど十分出ていたように思う。
念入りに全身を洗う。腋に生えたちょろりとした毛が一本抜けて、枯れ葉みたいにひらひら落ちて排水口に吸い込まれていった。
なぜか判らないけれど、暗がりに飲み込まれていくそのさまは俺を感動させた。
洗濯物が結構溜まってきて憂鬱気味だけれど、それは誰だって同じだ。とか考えると、俺も凡夫のひとりなんだって気づかされて死にたくなる。
なんて嘘だし冗談だよ?でもさ、俺はやっぱり普通の奴のまま終わる人生なんて最悪以外の何物でもないと思うし、それならもはや死に至るまでペニスを寂しくしごき続けたほうがマシかもしれない。
「馬鹿!いけんよ」
そう怒鳴ったのは、俺の脳内に気づけば居座っていた女の子で、名前は……、何だっけ?なんて嘘でも冗談でもなく本気で忘れていたから、その子はTシャツを着たばかりの俺をぶん殴って床に転がした。
声も出せずに悶えていると、高まっていた意識がまた眠りにつきそうになって胸の中心らへんを足で踏まれる。
おかげで「ゴボッ」と吐血。その血をテキパキと適切に処理した彼女は、確かに俺の目の前に物理的に存在している。
マジでいんの? と訊くと、彼女は「は?当たり前でしょ」と言って俺の腕を引っ張り無理くり立ち上がらせた。
「ふざけるのもいい加減にしたら?誰か悲しんでくれる子がいるかもしれんのやから」
「へー。それって誰なん?もしかして……」とニヤニヤすると彼女は俺に「ちゃんと服着なね!」とキッチンの排水口へと、両足揃えて消えていった。
「……ほんとに誰……?」
俺は虚しかった。この空白を埋めてくれるのはきっと、夢の中の女の子だけなんじゃないかと思った。そうであったら嬉しい。
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