ドキュメント07

 いつか見た紙飛行機は機械仕掛けのように見えて、つまりはそういうことで、どういうことなの? と訊かれても僕には答えられない。

 海辺の岩陰でダンスを踊る女の子の白い胸は、鳩の胸。ふわりと柔らかくしんみりとして、僕の感性は完成する。


 あれもこれも毒の花? そう訊かれて「そうだよ」と、僕は粛と云った気がするけど実は違う言葉を吐き出したのかもしれない……と思う。

 思わぬ罠に捕らえられた天使は声をもたず、僕らは彼女を寄ってたかって虐め抜き、その果てに彼女は命を絶った。


 先生は僕らを叱りつけたけども、けども……それは罪悪ではない……と最後に付け加えた。僕は蔓で作られた鳥籠をすっぽり被った彼のほうをちらと見た。彼もこちらを見ていた、ような気持ちになってしまって、僕は思わず笑みを溢し、何かを彼の耳の穴に囁いたけど、その中身を少しも覚えていない。


 声をもたぬゆえに死んだのか? 彼はふいに云ったけども、彼の友人である彼は首をゆったりと振ってから、こう云った。

「鍵はゲーテにある」

「ゲーテ?」

「ゲーテとは?」

 鳥籠を被った鳥Aは首を傾げられるだけ傾げて、深く深く息を吸う。僕は「ゲーテ? ゲーテ? は? ゲー……テ……?」と不可解な顔をしていたように思える。けど実際はどうか。


「いつまでも撮ってる、喋ってる。エモい銀杏の木の下で、同じようにエモい女子高校生二人が、また同じようなエモさを炸裂させて笑ってる。喋って撮って喋って撮って、そこに静かに現れるのは子供二人で、彼らは確か兄妹で、俺は憎しみの声を響かせて走った。走った、走ったはず」


 一週間前に鳥居を抜けて(その鳥居はマグロっぽい赤みを帯びているようにも、紫雲丹の内臓みたいなグロい色をしているようにも見えたはず)、僕と鳥Aと鳥Aの友人は楠を見るために歩いていた。楠は熊楠に通じるのだ、と厳かに喋ったのは彼で、僕と彼との間には目に映らない白い糸が常に息を潜めていて、キュッと絞めたり弛めたりしながら僕らを殺そうと舌を噛んでいる。


 嘘つきの女子高生は僕を指差す。人に指を差しちゃいけんよ……とかなんとか指摘しようとして僕は、彼女のぷるんと艶やかな唇に目を奪われて言葉を失う。暫くそんな感じだった。




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