第8話 「Sランク」と交流しよう

「あの時は助かった! 儂はゴンツだ。よろしくな」


 ドワーフの戦士が言った。

 小柄で筋骨隆々、そして立派なヒゲ。実に分かりやすい姿ね。

 背中には大きな盾を背負っており、バケツみたいな兜をかぶっている。腰には片手剣。その鞘から察するに、ナタのように分厚く頑丈で、木材の加工にすら使えそう。剣としての分類はマチェットになるかしら。

 戦士でありながら、料理人を兼ねている雰囲気だわ。


「いやぁ、死ぬかと思ったよ! 本当に助かった! ありがとう!

 私はローフ。私たちはAランクパーティーだけど、パーティー名が『Sランク』なんだ。よろしく」


 エルフの戦士が言った。

 すらっとした中年で、耳が長い。こちらも分かりやすい姿ね。

 ショルダーバッグみたいに肩にかけたショートボウ。背中と腰に矢筒。純粋な弓兵に見えて、ショートボウの先端には何かの宝石がはめ込まれている。杖を兼ねているのね。魔法も使えるんだわ。


「あんなに走ったのに、あんたの方が先に到着してるなんてな。あれだけ強けりゃ移動手段のひとつやふたつ持ってても不思議じゃないか。

 とにかく、さっきはありがとう。あんたは恩人だ。俺はオドン。よろしくな」


 ケンタウロスの戦士が言った。

 下半身が馬。ただし馬体はミニチュアホースのように小さい。そのため上半身を含めた全体で、人間と同じぐらいの背丈となる。

 板金鎧を装備しているが……これは馬鎧と呼ぶべきかしら? 盾とランスを装備している。いかにも突撃する騎兵って感じね。ドラゴンの巣みたいな洞窟地形で戦うには不向きじゃないかしら?


「本ッ当ォーに! ありがとうねェん! あのときはお礼も言わずに失礼したわァん! 名乗りもせずに気遣いだけ見せて立ち去る背中……素敵だったわよォ~ん!

 これは何かお礼をしなくっちゃ『Sランク』の名が廃るってことで、あんたのこと探そうと思ってたのよォん! こうも早く再会できるなんて運が良いわァん!

 あたしモリー。よろしくねん!」


 人間の戦士……戦士? ……かしら? ……が言った。

 筋骨隆々。精悍な顔立ち。カツラのようなストレートヘアのおかっぱ頭。不自然で目立つ付けまつげ。真っ青なアイシャドウ。濃すぎるチーク。ここまで来ると青ひげがむしろチャームポイントだわ。

 はっきり言って全然似合ってないけど……女装するタイプのオカマね。


「あの時は名乗りもせずに失礼したわね。

 アタシは榎。ついさっきAランクになったばかりよ。

 こっちはアタシのパーティーメンバーで、同じくAランクのマックス。

 あと、これがあの巣にいたドラゴンで、今はアタシの従魔。名前はルナよ。

 よろしくね」


「マックスだ。よろしく」


「ルナです。よしなに」


 ルナは、アタシとマックス以外には、卑屈にならないみたいね。

 自己紹介を済ませると、「Sランク」の4人はルナに視線を集中させた。


「「ドラゴンちっちゃ!?」」


「街に入るために縮めてあるのよ。

 もとの大きさは、門のところで見たでしょう? あのぐらいよ」


 マックスが仕留めたドラゴンは、今も門の外で騎士団に警備されている。


「縮める? そんな事が可能なのか?」


 ゴンツが言った。

 他の3人も――いえ、マックスも含めて4人が首を傾げているわね。


「ちょっとだけ戻してみましょうか」


 猫サイズから大型犬サイズに。

 屋内だし、あまり大きくすると迷惑だものね。


「「おおっ!」」


 4人とも驚いた。

 驚いてくれたところで、邪魔なのですぐ猫サイズに戻した。


「「おお……」」


 本当に縮んだ、と驚く声に。

 ちょっと残念そうな色が混じる。


「さあ、とにかく移動しましょう。

 お礼なら食事のひとつも奢ってくれたらいいわ。アタシ、この街には来たばかりだから、美味しいもの教えてちょうだい」


「グルメ情報なら任せておけ!」


「Aランク昇格のお祝いも兼ねて派手にいこう!」


「移動だ移動だ! 酒場に繰り出すぞ!」


「飲むわよォ~ん!」


 4人がアタシを連れて行こうとする。

 取り残されそうになったマックスに、アタシは肩を組んだ。


「パーティー組んだのも今日なんだから、結成祝もしないとね!」


「ああ。そうだな」


 ポカンとしていたマックスが、ふわりと笑った。



 ◇



 ややこしい名前の冒険者パーティー「Sランク」の4人に連れられて、アタシたちは冒険者ギルド近くの酒場へ。

 注文するメニューもお任せで、色々つまんでみた。


「どれも美味しいわね」


 料理の味はいいけど、ナイフとフォークで食べるのが馴染まない。

 明日にでも箸を用意しなくちゃ。


「特にこの肉はいいな」


 アタシが何度もギコギコやらなきゃ切れないステーキを、マックスは簡単にスパッと切ってしまう。

 それにしても、食べるだけで絵になるわねぇ、この美人は。


「この大きさだと、人間の食事量でも食いでがありますね」


 ルナはソーセージにかぶりついていた。

 ドラゴンの手でナイフやフォークは使えないので、頭から突っ込むスタイルだ。

 連なったソーセージがルナの首に巻き付いて、まるで大蛇と格闘しているような有り様だわ。


「肉が気に入ったなら、牛ダンジョンや豚ダンジョンはおすすめだぞ。

 焼いて良し、煮て良し。少々の野菜を持って行くのをおすすめする」


「対空戦闘ができるなら鳥ダンジョンもな。

 肉はあっさりしてヘルシーだが、対空手段がないなら鳥ダンジョンはやめたほうがいい」


「ここからだと3つとも別々の方角だな」


「この街が初めてなら、知らないかしらァん?

 それ系の魔物しか出ないダンジョンの通称よォ~ん」


「面白そうね。食料の備蓄に行こうかしら」


「その前にマジックバッグを買わないと。

 ドラゴンの死体をどうするか決まるのを待つしかないぞ」


「そうそう! それよ、マックス。

 実はルナが収納魔法を使えるの。従魔契約のおかげでアタシにも使えるようになって、マジックバッグ要らなくなったのよ」


「え? じゃあ……」


「マックスが仕留めた分をどうするかはギルドに任せて、自由に動けるわ」


「財宝は? ルナの財宝はどうしたのだ?」


「そっち? もちろん収納してきたわ。

 マックスの夢……財宝まみれの生活、今すぐにでも実現できるわよ」


「エノキ。中身はノーマルなんだろう? 私と結婚とか、してみないか?」


「現金極まりないわね……」


 肉食獣みたいな顔つきになったマックスに、アタシは呆れた。

 ほら見なさいよ。「Sランク」の4人がどう反応していいか困ってるじゃないの。

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