第7話 冒険者ギルドに報告しよう

「てことで、これがそのドラゴンなんだけど」


 冒険者ギルド。

 ルナの従魔登録をしようと思ったら、種族がドラゴンなことに驚かれて支部長と面談することになった。


「またドラゴンだとぉ!?」


 マックスが仕留めたドラゴンの処理で伯爵様の返事待ち。

 その最中に「もう1匹」が現れて、支部長は驚いていた。


「……! ……? ……!?」


 同席していた支部長補佐が、完全に言葉を失っている。

 穴が空くほどルナを凝視して、その顔には「マジかよ」と書いてあるようだわ。


「しかも今度は生け捕りか。やるじゃないか、エノキ」


 マックスは楽しそうに笑っている。

 殺してバラバラにする事しかできないマックスに比べて、加減して生け捕りにするという結果は、万が一にも「実はこっそりマックスに手伝ってもらったのでは?」なんて疑問の介在する余地がない。


「とにかく1度鑑定を……場合によっては、どうやって契約に至ったのか説明してもらうぞ」


 何らかの不正を疑われているみたいね。

 まあ、信じられないのも無理はないわ。

 そして鑑定士が呼ばれ、結果は――


「ドラゴンが完全に服従しております。

 Aランク冒険者がスライムを従魔にしたような有り様ですな。

 ここまで実力差がある契約ですと、指1本動かすにも主人の許可を取るレベルです」


「ガチガチに縛ってるじゃないか」


「はい。これならば暴れる心配はありません。

 暴れるとしたら、主人が『暴れよ』と命じたときだけでしょう」


「一応……確認なんだが、『主人』てのは、このエノキのほうだよな?」


「そうですね」


「実力差ってのは、エノキが上で、ドラゴンが下だな?」


「その通りです」


「このドラゴンが、実は生まれたばかりの赤ん坊だとか?」


「いえ、鑑定結果は2534歳です。

 Aランク冒険者でもちょっと勝てない相手ですね。そこのマックスさんならいざしらず」


「だとしてもマックスに『生け捕り』は不可能だ。

 こいつは手加減ができない馬鹿力だからな」


 深々とため息をついて、支部長がアタシを見た。


「つまり……本当に自分でやったのか」


 支部長の顔には「こいつ本当に人間か?」と書いてあるわ。失礼ね。

 アタシは肩をすくめた。


「そうなります」


 鑑定士が言う。

 鑑定士として鑑定結果を疑うわけにはいかないでしょうね。

 しかしその目の色は、鑑定結果を信じられない様子だった。


「Aランクだ。いいな?」


 支部長が支部長補佐を見る。


「すぐ用意します」


 支部長補佐が出ていった。

 そして支部長がまたため息をつく。


「FからAに直接か。飛び級にも程がある」


「いいのかしら? アタシとしては助かるけど」


 高ランクの仕事ほど報酬も多い。自分のランクが上がれば、高ランクの仕事を受けられるようになるから、稼ぐって意味では助かるわ。

 マックスと同じAランクになったことで、マックスが選ぶ仕事にいっしょに参加できるのも助かる。

 けど、周囲のやっかみを避けるためって話だったのに、これはこれで……ね?

 冒険者ギルドとしても、こんな前例を作ったら「俺も」と言い出すやつが出てきそうだし。


「パワーで私と並ぶ実力に、強力な回復魔法まで使えるんだから、もともと時間の問題だったんだ。

 支部長の判断は妥当だ」


 マックスが得意げに言う。

 ノックが聞こえて、支部長補佐が戻ってきた。


「お待たせしました」


 差し出されたAランクの冒険者証。

 それと従魔の証――これはタトゥーシールみたいなもので、模様はアタシの冒険者証をそのまま転写したもの。従魔は姿も大きさも様々だし、ルナみたいに大きさを変更できる従魔もいるから、こういう形式なのね。


「それじゃあ話は終わりだ。今後の活躍に期待する。

 できれば近いうちに派手な活躍をしてくれ。周囲が黙るしかないような成果を出してくれると助かる」


「もう1回同じことをするのはどうだ?

 ルナに聞けば他のドラゴンの巣の場所も分かるんじゃないか?」


「ぴっ!?」


 マックスがルナを見ると、ルナは震え上がってアタシを見た。


「マックス。それは人としてどうなの?

 同族を売れって迫るのは、これからよろしくやろうっていう仲間にする事じゃあないわ。そんなこと言ってると、困ったときにルナから見捨てられるわよ?」


「もちろん売れる相手だけでいいとも。

 同族を売るといっても、善良な市民を売るのと盗賊を売るのとでは違う。

 似たようなシルエットでもゴブリンやオーガなら気にしないだろ?」


「ああ、それは確かに。

 でもドラゴンの盗賊って、そんなの居るのかしら?」


「おります、おります。

 あの……その……盗賊というより、ただの暴れん坊ですが。力ばかり育って知能が育たない個体はそれなりに。

 正直、同族が死んでも、知らない誰かなんて『可哀想に』としか思いません。

 自分から積極的に攻撃しても平気なのは、ワイバーンやバジリスクですね。あいつらは別種の生き物です」


「なるほどねぇ」


「お前ら、ギルドの仕事もしてくれよ?」


 支部長が釘を刺すように言った。


「Aランクの仕事があればな。

 無いことのほうが多いんだから、自分で稼ぐしかない」


「忙しくなるほどAランクの仕事があるようじゃあ、危なくって住めないものね」


「「それは確かに」」


 支部長と支部長補佐の声が重なった。

 そしてアタシたちは支部長の部屋を出た。


「あっ! 居た!」


「見つけた見つけた!」


「こっちだ! おーい!」


「あたしたちより先に帰ってるなんて、どうなってんのよォーう?」


 ドラゴンの巣で見かけた4人組が、受付の前にいた。

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