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 エリス先生とベル、ユー、ファルクの3人にアトリエへ送ってもらった後、メリィは一人で虹の欠片を眺めていた。


 たった1日の冒険だったのに、アトリエに帰ってきたのが久しぶりなような気がする。


「今日1日、色んなことがあったなあ……」


 メリィは呟く。虹の欠片はそれに応えるように天井にきらりと虹の光を映し出す。

 今日1日だけではない。今日の成功のために積み上げてきた色々な冒険が蘇ってくる。

 アトリエや街での素材集めから始まり、街の近く、遺跡での冒険。エリス先生やベルだけじゃない、ユーやファルクとの出会い。

 そして、自分の錬金術がみんなの役に立った瞬間。


 そんな思いを抱えながらメリィは睡魔に襲われる。


「とりあえず、今日は寝よう……」


 メリィはその夜、師匠の夢を見たような気がするのだった。



 朝、目覚めて見上げた天井は、昨日と違い何の違和感もない。着替えて庭に出る。庭に生えた植物ももう何の異常もなかった。

 2つの欠片も今は何の反応もしておらず、昨日のことは全て夢だったのではとさえ思えてくる。


「メリィー!」


 そこに幼馴染の声が響く。それが何だか「日常」を思わせて、メリィは不思議な感覚になる。


「ベル! それにエリス先生も!」


 2人はアトリエの前に立っていた。メリィは庭の植物への水やりの手を止めて、2人に向かって駆け出す。


「おはようメリィちゃん。よく眠れた?」

「うん、ぐっすりだったよ! 疲れてたし……」

「ふふ、そうね」


 良く見るとベルの頭には寝癖が付いている。


「ベルももしかして寝坊した?」

「う、うるせえな! 元々朝苦手なのに昨日あんだけ動いたんだぞ!?」


 確かにベルは避難誘導や、メリィの作った薬の運搬、そしてあの「死の竜」との闘いもこなしたのだ。


「確かに……肉体労働的にはベルの方が圧倒的だったね……」


 メリィは「自分には無理だ」と思いながら素直に尊敬の眼差しを向ける。


「まあ、そういうのは男に任せとけばいいんだよ」


 ベルのその言葉に、エリス先生はニコニコしている。


 3人は歩きながらギルドの前まで来ていた。


「ほら、一人前の錬金術師と認めるって言ってもらえたでしょう?

 だから冒険者証を新しくしてもらわないといけないの」

「あ……そっか!」


 昨日、ギルドマスターに認められた嬉しさで、手続きのことはすっかり忘れていた。

 ギルドの内部は昨日の今日で、まだ少し忙しそうな感じはあったが昨日よりは圧倒的に落ち着いていた。

 カウンターの受付がメリィの顔を見るなり、すぐに察してくれる。


「冒険者証の更新ですね? 少々お待ちください」


 ベルがぎょっとしたような表情でメリィの顔を見る。


「お前……顔パスじゃん」

「ええ……そうなのかな?」


 そこに後ろから声がかかる。


「街の英雄なんだもの。当たり前じゃない?」

「ユーさん! と、ファルクさんも!」


 振り向くとユーと、ユーにしっかり襟元を掴まれたファルクが立っていた。

 もうすっかり、そこを掴むのが定位置になったようだ。メリィは犬みたいだなあと思いながら笑いを堪える。


「お待たせしました! こちらが新しい冒険者証になります。これでブルーメンブルグ以外の街の出入りもスムーズに行えるはずですよ!」


 受付の女性が新しい冒険者証を渡してくれる。

 前とは色が少し変わったカード。メリィにはそれが一段とキラキラして見えた。


「ありがとうございます!」


 受付係に頭を下げ、カードを受け取る。


 エリス先生が、真剣な面持ちでメリィに問う。


「やっぱり、メリィちゃんは他の街に行くのね?」


 その表情は、昨日と同じく寂しさと心配が混ざったものだった。


「うん……行きたい。師匠のことをもっと知るには、そうしなきゃいけない気がする」

「そうね、先生もそう思うわ」


 その時、ポケットの虹の欠片が、じわりと熱を持つ。

 欠片を取り出してみると、少しだけ、光が強くなっているような気がした。


「その、虹の欠片、恐らくまだ続きがあるわ」


 ユーが声を掛ける。


「うん、私もそう思う」

「……そうね。私も、その謎を見届けようかしら」

「え?」


 ユーはいたずらっぽい顔をして微笑む。


「店はどうとでもなるもの。それよりも、その欠片と、メリィ自身に好奇心が動いてるの。

 どうかしら? ちょうど街道先のエーベネ王国に遺跡に関する変な依頼が来てるのよ。何か虹の欠片のヒントになるかもしれないわ」

「俺も、メリィの錬金術のことは気になってる。それに暫くはコイツといないと迷いそうだからな……必然的に俺も一緒になる」


 それはユーとファルクが、これからも一緒に同行してくれるというメリィにとっては願ってもない提案だった。


「ほ、本当に良いんですか?」


 そこにベルが割り込んでくる。


「メリィが行くなら俺も行くよ。約束しただろ一緒に冒険するってさ」

「ベル……」

「私も応援してるわ。だから……たまには帰って来てね」


 そう言ってエリス先生はメリィを抱きしめる。


「ありがとう。先生。私の帰る場所は、あのアトリエだもん。絶対また帰ってくるよ!」


 そして、メリィは力強く頷く。


「うん、みんなで行こう。師匠の行方も、虹の欠片の謎も、絶対見付ける! 図鑑のページも、もっともっと埋めていく!」



 それは、師匠を辿る、新たな冒険への宣言だった。



Chapter3:軸の歪み  !Complete!

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新米錬金術師メリィのアイテム図鑑~師匠の遺した虹の欠片~ 常陸 花折 @runa_c_0621

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