第17話
赤陽層の熱が静まり、空気が澄み始めた頃——
三人は、紅核獣があった中心部のさらに奥へと進んでいた。
そこには、岩の壁とは明らかに異なる、
黒い金属の門が静かに佇んでいた。
ミラが近づくと、門の表面が霧のように揺らぎ、
淡い光の文字が浮かび上がった。
「……“深層路(しんそうろ)”……?」
カイが眉をひそめる。
「聞いたことねぇ名前だな。第四層から第五層への道なんて、公式記録にも載ってなかったはずだ」
「そもそも、第五層の存在自体があやふやだったしな」
レオンが門の前に立つと、
門はその姿に反応したように低く唸り——ゆっくりと開き始めた。
奥は暗闇。
しかしその闇の奥から、かすかな“脈動音”が響いてくる。
「これ、まさか……層の鼓動?」
ミラの声が震える。
生物の心臓のような音。
それが、層全体から響いているかのようだった。
レオンは静かに言う。
「カイ、お前は……この音、覚えがあるか?」
カイは息を呑んだ。
そして、ゆっくりと頷く。
「……ああ。俺とレオンが“あの戦場”にいた時……侵蝕災が生まれた瞬間にも、同じ音がした」
ミラが振り返る。
「それって……軍の記録にも残っていない、あの——」
「……“始源侵蝕”。俺たちが初めて遭遇した、最悪の化け物だ」
レオンの表情は硬い。
「第五層は、その“始源”の座標らしい。原因がそこにあるなら、止められるのもそこだ」
赤陽層の炎より、紅核獣の影より……
もっと深く冷たい“危険な気配”が、闇の奥から迫ってくる。
「戻る選択肢は……もうないよな」
カイが冗談めかして言うが、声は僅かに震えていた。
レオンは剣を抜き、ミラに手を差し出す。
「行くぞ。ここから先は、どの層よりも危険だ。……でも、俺たちで終わらせる」
ミラはその手を強く握り返す。
「うん。絶対に辿り着こう、第五層へ」
三人は、深淵へ続く“深層路”へと足を踏み入れた。
闇の中で、門が背後に閉じる音が響き消えた瞬間——
空間そのものが揺れ、三人は深層へと落ちていくような感覚に包まれた。
そして——
静寂の中で、新たな光景が姿を現し始める。
それが“第五層の入口”。
そして、侵蝕災の“始まり”の場所だった。
戦禍の大地にて、英雄は二度立ち上がる ゆうたろう @yuutarou924
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