第15話
赤陽層の底から現れた“守護者”は、ゆっくりと姿を持ち上げた。
赤黒い霧が四方に渦を巻き、熱と圧力で肌が焼けそうになる。
四本の脚は岩のように太く、
身体全体がひび割れた結晶と影の肉で構成されていた。
顔らしき部分は仮面のように平坦で、
そこから覗く赤い一つ目だけが、感情を持たぬ光を放っている。
「……あれ、が……核を守る本体……」
ミラの声が震える。
守護者が一歩踏み出すごとに、赤陽層が揺れる。
まるで層の“大地そのもの”が動いているかのようだった。
「くそ……でけぇな」
カイが息を呑む。
弓の狙いを定めても、熱と震動で照準が揺れた。
赤黒い影が守護者を中心に渦巻き、
無数の触腕となって三人へ襲いかかる。
「来るぞ!!」
赤炎を纏った剣で触腕を斬り払いながら、レオンは前へ出た。
だが守護者の影は通常の侵蝕災より遥かに硬い。
斬っても斬ってもすぐに再生し、厚みが増していく。
「っ、耐久が違う……!」
「攻撃パターン、解析します……!」
ミラが光紋を輝かせた瞬間――
「……っ!」
膝が崩れた。
慌ててカイが支える。
「おいミラ、しっかりしろ!」
「ごめんなさい……滞在時間が……もう二十……いえ……十九分、切って……」
数字が目に見えて減っていく。
侵蝕災が強まるほど、ミラの存在は層に弾かれる。
レオンは振り返らずに叫んだ。
「ミラ、無理に解析するな!お前が消えたら意味がない!」
「でも……!解析しないと、核の守護者には……勝てません……」
守護者の背中――
結晶の一部が不規則に光り、
そこから新たな影の柱が噴き上がる。
「くるぞ!!」
影の柱は生き物のようにうねりながらレオンへ伸びる。
斬っても斬っても動きが止まらない。
「しつこいッ……!」
カイが影の根本に矢を撃ち込むと、
影が一瞬だけ形を崩した。
「レオン!!背中!守護者の背の“左上”が薄い!!」
ミラの叫び。
「行く!!」
揺れる大地を蹴り、守護者の懐へ突っ込む。
影が壁のように迫るが、炎でねじ伏せた。
守護者の背。
結晶が脈動し、ひび割れが走っている部分が確かにあった。
「ここだ!!」
剣が深く食い込む――
だが同時に、守護者が咆哮を上げた。
赤陽層全体が爆発したように揺れる。
「っ危ない!!」
ミラが叫ぶ。
守護者の体から放たれた衝撃波が、三人を吹き飛ばした。
大地が割れ、赤陽の霧が噴き上がる。
レオンは必死に体勢を立て直し、歯を食いしばった。
「……クソ、硬すぎる……!」
カイは喉を焼くような空気を吸いながら言う。
「手加減してたら死ぬぞ……!本気で行くしかねぇ!!」
ミラは震える身体で立ち上がる。
光紋は弱々しく点滅していた。
「……私の解析……あと一回だけ……“核の中心”が……見つけられます……だから……レオンさん……次で……決めてください……!」
言葉が途切れた瞬間、光紋が消えかけた。
ミラの存在が一瞬――薄くなった。
「ミラ!!」
レオンが叫んだ。
ミラは必死に笑顔を作る。
「大丈夫……まだ……います……でも……急いで……このままじゃ……本当に……」
守護者が再び地を鳴らし、
層全体が崩れ落ちる寸前のような音を立てた。
赤陽層の“命の限界”が近づいている。
そして――
ミラの“滞在時間”も、限界が迫っていた。
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