第13話
赤陽層の荒野を駆け抜ける三人の足元で、
黒い岩盤が悲鳴を上げるように割れ続けていた。
レオンが叫ぶ。
「もうすぐだ、赤陽層の中心核はこの先だ!」
カイが揺らぐ輪郭を押さえつつついてくる。
「急げ、灼陽の巨影が追ってきてる……あいつ、何かに“操られている”!」
ミラは胸に手を押し当て、苦しげに言う。
「赤陽層のコア……そこに“異常データ”が集中してる……これは……ただの暴走じゃない……もっと深い、“侵食”……」
ぞくりと風が冷たくなる。
赤陽が照りつけているのに、肌が凍えるような寒気。
その瞬間、
三人の前の地面が——崩れ落ちた。
「下だ! 飛び込めッ!」
レオンがミラを抱えて跳躍し、
三人は燃えるような赤の深淵へと落下した。
落下の先で、視界が一気に開ける。
そこは——空洞だった。
赤陽層の中心に開いた巨大な縦穴。
中央には、真紅に輝く“球体の核”が浮かんでいた。
ミラが震える声で言う。
「これ……見たことがある……赤陽層の制御核……だけど……何かが……おかしい……!」
レオンが剣を握りしめる。
「おかしいのは見ればわかる。色が……赤じゃない。」
本来は赤陽の光を放つはずの核が、
その一部だけ“黒く”染まっていた。
まるで、腐っているように。
カイが息を呑む。
「……まさか……これ、侵蝕災……?」
黒い部分が、じわり、と蠢いた。
レオンが反射的に前に出る。
「来るぞ!!」
核の黒が弾けた瞬間——
空洞全体に黒い触手のような“情報の糸”が走った。
ミラの視界が一気にノイズで覆われる。
「ぁ……っ! 侵蝕災の……コード!私の内部まで……入り込もうとして……!」
カイが咄嗟にミラを引き寄せる。
「ミラ、目を閉じろ! 見るだけで感染する!」
赤陽層の核から、低いうねりが響いた。
黒い腐食部が形を変え——
巨大な“影の顔”を作り始める。
レオンは歯を食いしばり、剣を構える。
「これが……侵蝕災の本体の一部……!」
影は、赤陽の光を呑み込みながら笑った。
『—— ミラ・アルシル・ウロボロス……キミを取り戻しに来た……』
ミラの身体がびくりと反応し、
うっすらと涙が浮かぶ。
「やっぱり……私……侵蝕災と……」
レオンが叫んだ。
「言うな! 今は戦うことだけ考えろミラ!」
影は再び形を変え、
灼陽の巨影の“胸の中心”へ黒い触手を伸ばした。
赤陽層の巨影が苦悶の咆哮を上げる。
カイが叫ぶ。
「しまった……奴を核ごと乗っ取る気か!!」
赤陽層全体が揺れ、地鳴りと共に大地が赤く裂けていく。
その震動は層そのものが悲鳴を上げているようだった。
落盤が始まり、赤黒い砂塵が三人の視界を覆う。
「カイ、ミラ!絶対にこの核を破壊する!侵蝕災ごと、赤陽層を浄化するぞ!!」。
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