第12話

灼陽の巨影が咆哮し、赤陽層全体が震えた。

黒い岩盤が波のように盛り上がり、砂の奔流が三人を飲み込もうと迫る。

レオンがミラの腕を引き寄せ、叫んだ。

「ミラ、後ろだ! カイ、お前は左側を!」

カイの輪郭はまだ揺らぎ、完全に実体化していない。

それでも彼は頷き、赤い砂を踏みしめる。

「わかってる。まだ身体は本物じゃないが……動ける程度には戻ってきた。」

ミラは赤陽の照り返しに目を細め、

自分の内部で走るノイズを抑えながら指先をかざす。

「……この層、やっぱりおかしい。記憶と層の“熱”が干渉して……私の中に、何かが入り込もうとしてる……」

レオンはちらりとミラを見る。

その表情には焦りはあったが、迷いはなかった。

「大丈夫だ、ミラ。お前は俺が守る。……それにカイもいる。」

カイは照れたように鼻を鳴らし、

レオンの背中に並ぶ位置へと立った。

「守るとか、偉そうに言えるほどデカい背中じゃねえだろ、レオン。——だが、相変わらず頼もしいよ。」

レオンは軽く笑い返した。

昔のようだ。

二人がまだ、生きて肩を並べて戦っていた頃のように。

だが、その瞬間——

灼陽の巨影が腕を振り下ろし、

赤陽の光を凝縮した“火柱”が三人を襲う。

「来るぞッ!」

レオンが前に飛び出し、炎の壁をその剣で切り裂く。

炎は二つに割れ、荒野に散っていく。

カイが続けて叫んだ。

「レオン、奴の核は胸の中心だ! でもまだ隠れてる、赤陽層の残光に!」

ミラが声を震わせる。

「でも……その残光、私の記憶にも干渉してる……“赤陽の核”……どこかで、見たことが……」

ミラの視界が一瞬だけ真白に染まる。

——映像が浮かんだ。

燃え落ちる施設。

赤い光に照らされた“巨大な球体”。

そして、その前に立つ影。

(あれ……誰?

私……ここを……知ってる……?)

記憶の波が押し寄せ、膝が崩れそうになる。

レオンがすぐ支え、叫んだ。

「ミラ、無理すんな! 今は戦いに集中しろ!」

しかしミラは震える声で首を振った。

「違う……赤陽層の核……“灼陽の巨影”を倒すには……あれを壊さなきゃ……!」

カイが驚く。

「ミラ、それを知ってるって……どういう——」

しかしその問いは、巨影の咆哮にかき消された。

灼陽の巨影が全身を赤陽で包み、

荒野が真紅の光に染まっていく。

レオンが剣を構え、叫ぶ。

「行くぞッ!赤陽層の中心へ——奴の核をぶっ壊す!」

三人は赤陽の荒野を駆け出す。

灼陽の巨影が追いすがり、赤陽層そのものが崩れ始める中、

ミラの記憶はさらに深いところへ、

確実に踏み込んでいた——。

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