第8話

レオンの攻撃が炸裂しても、ミラの意識は揺れ続ける。

彼女の“失われた記憶の扉”が、確実に開き始めていた。

ミラは胸を押さえ、ふらつく足取りで壁に寄りかかった。

視界に、見覚えのない都市の断片が瞬き、消え、また浮かぶ。

レオンは振り返り、焦った表情で叫ぶ。

「ミラ! 大丈夫か!?」

「……わかんない。さっきから、何かが……頭の奥で、ずっと呼んでる」

そのときだった。

──カツ、カツ、カツ。

二人の足音とは違う、遅れたリズムの響きが通路の奥から近づいてきた。

レオンは剣を構えて振り向く。

「またか……“反響”だ」

ミラの影が、微かに揺れた。

ただの光の歪みではない。

影だけが、ミラ本人より半歩遅れて動く。

ミラは不安に眉を寄せた。

「レオン……私、また“何か”を思い出しそう……」

「無理に思い出そうとしなくていい。今は先に進むぞ」

レオンはミラの腕を取り、反転塔第3層の奥へ歩き出す。

影は、二人の後ろをつけるように、遅れて伸びた。

やがて、通路の先に巨大な門が現れた。

都市の中心──第3層の核心部だ。

門には、人影を象った奇妙な凹みが刻まれている。

ミラが近づいた瞬間、その凹みが淡い光を放った。

「……これ、私に反応してる?」

言葉が終わると同時に──

『第三層管理体・残響体識別──一致』

低く響く声が広場全体に満ちた。

次の瞬間、ミラの影がゆっくりと立ち上がった。

レオンが叫ぶ。

「ミラ、離れろ!」

しかし影はミラに向かって歩み寄る。

その目の空洞が、静かに光を宿して。

ミラは震える声で呟いた。

「あれ……私の記憶が生んだ……“誰か”だ」

空気が張りつめる。

ゆっくりと、影の手がミラへ伸びる。

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