第2話
そういえばさっき言っていた意味が分からなかったな。
「そういえば層界の自動修復プログラムってなんだ?擬似生命体ってなに?」
ミラはこう答える
「自動修復プログラムは侵蝕災がこの世界で発生したときに対応できるように作られたプログラムのこと。疑似生命体っていうのは“ 生命のふりをしている生命ではない存在”かな。一応データなんだ。とりあえず、今回ここで発生したということはもうこの世界はほかのところが危ない可能性があるの。だからほかの層にもいかないといけない。」
ザザッ
あれ?一瞬ミラにノイズがかかったような気が…。まあ気のせいか。
「なるほど。で、どうやってほかの層に行くの?」
ミラに問いかける
その時大地がきしんだ。
倒れ伏した侵蝕災第2層の残骸がそこら中に散るにつれ、周囲の景色は急速に壊れていく。
「なんだ!」
空には規則性のないノイズの帯が走り、大地はところどころ透け、風の音さえ数拍遅れて耳に届いた。
ミラへ視線を向ける。
「ミラ……様子が変だ」
ミラの輪郭が淡く揺れていた。髪先は光の粒子にほどけ、足元は影を落とさない。“存在が薄くなる”という表現が、そのまま現実になっていた。
ミラは小さく息を呑み、首を横に振る。
「この層……もう形を保てない。長くいると、私のコードが分解される……」
「分解……? それって、消えるってことじゃないか!」
レオンの声に呼応するように、地面のひび割れがさらに拡大する。遠方では建物の影が反転し、同じ景色が二重に重なる“不正な表示”が浮かび上がった。
そんな中——ミラの背後に突然、細い光の帯が浮かび上がる。
ミラは胸元を押さえた。
「……来る。バックアップコードが……暴走し始めてる」
レオンは駆け寄ろうとしたが、ミラが制止する。
「強制同期が走るわ。レオン、準備して……!」
その声はかすれていた。存在そのものが薄れ、音声データすら安定していないのが分かる。
強制同期とは層と層をつなぐ、彼女の内部システムらしい。
本来は、レオンが生命の危機に陥ったときだけ発動する緊急機能らしい。
だが今は違う。
「崩壊ランクC……もうすぐ自動で同期が始まる。止められない……!」
ミラは震える手で胸元の光帯を掴む。
「だけど、無理に同期したら……私……メモリが……」
レオンの胸が締めつけられる。
「じゃあ、崩壊を抑えて——」
言いかけた瞬間、影が地面から這い出した。
黒いノイズが人型のような形に変わり、レオンの背中へ伸びる。
無音で、ただ空間が“擦り切れる音”だけが響く。
ミラが叫ぶ。
「残留侵蝕災コード! 触れたら記憶を、持っていかれる!」
レオンは剣を振り下ろす。しかし刀身が裂けるだけで、斬った手応えはない。
ノイズは広がり、二人を包もうとした。
そのとき、ミラが膝をつく。
「……レオン……あなたの名前が……一瞬……飛んだ……」
その言葉に、レオンは迷いを捨てた。
「ミラ、右手を出せ!」
「え——?」
レオンは自分の内側から炎を引き出す。
光が爆発した。それは“燃える”炎ではなく、データ層においては“上書きする光”として扱われる力。
彼はミラの右手を掴み、その光を流し込んだ。
ミラの身体の奥から、細い“1の線”が浮かび上がる。
そこへレオンの炎が流れ込み、破損しかけて歪んだ経路を焼き固めていく。
ミラは目を見開き、震えた。
「……熱い……でも、これで……つながる……!」
黒ノイズが押し寄せる。
空が裏返り、地面が白線に砕けはじめた。
「ミラ、行くぞ!」
「うん……! 強制同期——発動……!」
上下左右がひっくり返り、映像が砂嵐のように流れ去る。
ミラがレオンの腕を掴むが、その指先も一瞬、粒子になりかけた。
「はなさないで……! 次の層は……気をつけ……」
最後まで言えなかった。
言葉は光に飲み込まれ、世界は完全に反転した。
——そして、暗転。
レオンが目を開けたとき、そこは音のない荒野だった。
風が吹いているはずなのに、音がしない。
隣を見ると、ミラは地面に倒れ、起動する気配がない。
「ミラ……!」
呼びかけても反応はなく、ただ胸元の光だけが微かに点滅していた。
周囲の砂地が動く。
地面の下から、得体の知れない“うねり”が近づく。
第3層の怪物——フェイズワーム。
レオンは剣を握り、息を整える。
「ミラが起きるまで……俺が守る」
荒野の静寂を裂くように、足元の砂が跳ね上がった。
レオンは一歩踏み出し、次の戦いへ向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます