悪口
「めっちゃ大声で悪口言ってもええ?」
楓子はそう言いながら、テーブルの端を小指でコンコンと叩く。場所はいつも通り、馴染みの喫茶店の隅の壁際の席。
「ええ訳ないやろ」と、天井のシミを見つめながら千絃。
「聞いて聞いて」
「ウチの話は聞いてくれへんのに?」
「めっちゃイラついてて、悪口でも吐かな落ち着かへんわ」
「アホやん、ウチら制服やぞ」
「だから?」
「変な事したら、すぐにどこの学校か特定されるやん。SNSで拡散されて、ウチらも学校もおしまいやぞ。SNSで思い出したけど、鍵垢でも作ってそこで毒吐けよ」
「いや、鍵垢でもバレる時はバレるやん。ていうか、ネットに悪口なんか書いて何が楽しいん?」
「そこまでは分かるのに?」
「どうしよ、マジでムカついてきた…」
「分かった、じゃあウチの耳元で囁け。周りには聞こえないように気をつけてな」
「ええの?」
「学校とウチの人生の為や」
「行くで? 【自主規制】【自主規制】【自主規制】」
「エグいエグい。お前、100年前の監獄で育ったんか?」
「マジでスッキリしたわ、ホンマありがとう」
「てか、何でそんなにキレてたん?」
「聞いてや! 今週行こうと思ってた美容院の予約が取れへんくて、来週になってん! あー! 前髪がウザすぎる!」
「しんど」
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