熱愛報道
「ゔあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ん」
楓子はそう言いながら、スマホをテーブルの上に投げる。場所はいつも通り、馴染みの喫茶店の隅の壁際の席。
「声汚ったな」と、片手で頬杖をつきながら千絃。
「ゔあ゙あ゙…、ゔっ…、ゔっ…」
「汚すぎるって、大雨の後の排水溝か」
「熱愛や…、また熱愛や…!」
「今度は誰?」
「『セブンティーン&エイティナイン』の『マックス』と、『世界が終わるならこんな風に』の『どちらかと言えば糟谷』」
「ごめん、どれがどれ?」
「ゔあ゙っ…、ゔあ゙っ…」
「その声マジでやめろ、女子高生の誇りぐらい持て」
「千絃だって、楓子と同じ状況になったらこんな声も出るって」
「なるか。そもそも、他人の色恋なんて興味ないし」
「はっ!? 自分の好きな人間が、自分に相談も無しに恋人作っても平気なん!?」
「お前はさっきの2人の何やねん」
「もしも楓子が勝手に恋人作ったら、千絃もショックやろ?」
「どうぞお好きに」
「ふーん、あっそ…」
「まあでも、こういう時間が減るのは嫌かな」
「…えっ?」
「だって、恋人が出来たらそっちと遊ぶやろ? ウチなんかに構ってる暇ないやろし」
「楓子と会えんくなったら、千絃はどうするん?」
「別に、元に戻るだけやん。学校が終わったら、誰もおらん家に帰るだけ」
「めっちゃボッチやん! 可哀想やから、しばらく恋人は作らんでおいたるわ。ホンマに、千絃って面倒いなあ!」
「良い感じに締めようとしてるけど、ウチは普通にキレてるからな」
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