第5話 秋の気配
クルマ「ブロロロロロロ」
ギア(カコン
男「寒っ」(ブルッ
ノブ(クルクルクル(回転
運転席の窓(ピシャッ
親父が死んだのは夏前…
もう、秋の気配がする。
夜は、冷える。
男(フンフーン フフフフフフフ フンフーン(秋のささやき 第一楽章
タヌキ(ジィーーー
相変わらず週1で顔を出している俺の実家、母のところ。
今はその帰りだ。
母は、パアトを始めたようだ。
どうやら、小学校で給食をつくっているらしい。
お昼休みの子供たちが、おこぼれ欲しさにコッソリ、給食室に来るんだと楽しげに話す母。
そこには、同じような境遇の人も多く、母は今度皆で行くというカフェというのを楽しみにしていた。
季節の変わり目
母がそうであるように、この男にもまた…
クルマ「ブロロロロロロ」
悪魔(ジィーーー(フッ
助手席から男を見つめる、赤い瞳が、かすかに細められた。
クルマ「ブロロロロロロ」
男「…」(考え込む
男(チラッ
タヌキ(首コテン
小首を傾げながら見つめるタヌキに、男は
男「何か食ってくか。」(腹グー
けれど、もう夜だ。飯を出す店は閉まっている頃。
妻は今日は家にいない、晩飯が無い。
男は包丁など握ったことが無かった。
タヌキの白い指が (スッ
指差すのは、国道沿いには場違いな 光輝く店、最近出来たばかりの
ファミリーレストランだった。
男はファミリーレストランの駐車場にクルマを駐めた。
男とタヌキは立ち尽くす。
自家用車が、多い。
男(高い店なんじゃ? ドキドキ)
ーーーーー 空想 モワンモワン ーーーーー
(大将「らっしゃい!」俺「お任せでたのむよ。」 「おあいそ。」 6800円です。喫茶店のコーヒーが220円の時代である… )ソソソ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
男が踵(きびす)を返そうとするも、タヌキはそこを動かない。
タヌキは、ファミリーレストランを見つめている。(ジィーーー
男(ファミリーレストランが気になるのか?)
ウイーン(自動ドア
男「うぉっ!」(驚
店員「いらっしゃいませ! 一名様ご案内しますっ」
男(俺のことか)
案内された席、飯を食うテーブルはいい。だが、金持ちが座るような、体が沈み込む、やたら高い背もたれ付きの長椅子、ソファーだった。
それはまるで、成金社長の 応接室…
タヌキ(チョコーン
男(チョコーン
並んで座る。
男(ジッ
品書き(メニュー)が写真付きなのか。
どれもうまそうだな。(ジュル
?この ドリャァ? 気合いみたいな食い物は何だ?
タヌキ「ドリアが気になるの?」
男 決めたぞ(チリリーン テーブルに呼び鈴がある。
店員「お決まりでしょうか?」
男「ハンバーグ定食1つ。」
タヌキ「フフフ…この臆病者(プッ」
男(うるせぇ)(小声
店員「」? 「ハンバーグ定食お一つですね!しばらくお待ちくださいっ」スタスタ
ーーー キョロキョロしながら待つことしばし ーーー
店員「ハンバーグ定食お持ちしましたっ!」
ハンバーグ(ジューーー
ヨダレ(ジワァ
男「…」(黙
フォーク
ナイフ
さじ(スプーン)
男「…」
タヌキ(ジーーーー
男(チラチラ
タヌキ「フォークは左手、ナイフは右手よ。そう、フォークで押さえてナイフで気って、フォークを刺してる方を食べるの。 そうよ、上手。
平たいお皿の白米は適度でいいわ。」
男(パクパク ムシャムシャ 「旨いな」
男「ンーー タヌキ、お前がいれば安心だな。」
ーーー お前がいれば安心だ ーーー
悪魔は思う。口に出すことは無い。
( フフフ…あなたも、もう、安心みたいね。 )
男「食った食った。」
ここはファミリーレストラン、辺りは家族連ればかり。
走り回ろうとする子供を咎める親、神妙な面もちでフォークとナイフを持つ男の子、ハイカラなパフェを前に最初のスプーンを入れる前に、ただ眺めている女の子…家族(ファミリー)
男は、何も言わずにそれを眺めていた。
僅かに、僅かに、悪魔はその表情を変える。
男「あれ?あいつら、何度もコーラやジュース汲みに行ってるぞ。 いいのか?」
ソッ)タヌキの白い指がメニューを指す 「ドリンクバー」おかわり自由
男「しまった! 今度 は、頼もうな。」
ーーー 今度 ーーー
自動ドア(ウイーーーン)
男「さむっ」(ブルッ
秋の夜風が
吹いていた
つづく
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